第1話

文字数 1,933文字

拝啓 盛夏の候 一条類様はいかかお過ごしでしょうか?

一人で色々頑張ってしまう貴方ですから、体調が心配です。

突然のお手紙をお許し下さい。どうしても、貴方様に問いかけたい事があるのです。

類さんのことだから覚えていないと思うけど、何歳になっても人は変われるって私に言ったのを覚えてますか?

私は、親に愛されない子供でした。見えない鎖がずっと私を苦しめていました。苦しい子供時代を終えて世界が広がったのに、目立つ性かいじめられ、性犯罪に巻き込まれ

大人になったら職場でパワハラをうけるようになりました。

私は子供のころ少女漫画に出てくるヒロインに憧れてました。みんなから好かれて好きな人から守られて、どうしたらこうなれるのだろうか

私を一番最初に汚したのは小学校の先生でした。わたしが4年生の時、1年を担当している方で私はその頃愛情に飢えていました。

父親と同じぐらいの歳の方に父性愛を求めていたのです。それが、いけなかったのでしょうね、いたずらをされたのです。

私は守ってくれる存在、大人から汚されたのです。大人を憎みました。信じられなくなりました。

誰も守ってくれない。生きていくには、自分を強くして知識をいれ、したたかになるしかなかったのです。

それから、私は演技をすることを覚えました。仮面をかぶり心を閉ざしました。

大人になり念願のヒロインという仮面を被ったのに付き合った男性はわたしを母親と一緒でお人形扱いをして愛してくれなかったのです。

嫌だといっても無視をされ強制され私の言葉を聞いてもくれない。言葉に出しても聞いてくれないのであれば、言葉の意味がない。

私は何も言わなくなりました。

私は都合のいい人形です。なのに、傷つくのです。誰かを好きになりまた人形になり傷つけられて汚されてトラウマをうえつけられるのです。

でも、私は沢山の努力をして、真っ白でいつづけたかったのです。汚れるのは一瞬ですが、真っ白でいるにはずっと努力をするしかないのです。

それだけが、わたしの人形のプライドでした。もうこれ以上誰も恨みたくない。傷つけたくない。嫌いになりたくなかったのです。



31歳になりまたパワハラをうけ、適応障害,一般性恐怖症(特に男性に過敏に反応する)と診断されました。

私は、そのとき人生の分岐点だと思ったのです。親の見えない鎖から逃げたい。

精神科の病院に行って自分を見つめ直し、人生をやりなおしたいと。過去から解放されたいと。

いろんな情報を集め生活保護をうけることにしました。時間と医療費の免除、法テラスの猶予、その三点が魅力的でした。

生活保護に受かりましたが、3カ月後に8年住んでいるアパートが取り壊しになるので引っ越してほしいと言われました。

新しい人生を歩むのにタイミングがいいと思った矢先

5月、目の病気、両眼複視になりました。大学病院で検査を受けましたが治療法はないということでした。

6月、治療と同時に不動産めぐりをしました。そこであったのは、あきらかな生活保護への差別と病気への偏見でした。

何件も巡りとても素晴らしい方に出会い、セキュリティーがしっかりしているマンションに引っ越すことが出来ましたが

ただ本当に運が良かったんだと思います。

なのに、なんでなんですか?どうしてわたし何ですか?

7月、突然目が幕がおりたように一瞬目が見えなくなりました。原因不明とのこと

8月心臓(脈?)の発作が発症しました。動悸がして息が苦しく上手く呼吸が出来ないのです。それが何回も。もういっそ心臓を止めてほしい気持ちで

いっぱいでした。

絶望しました。生きたいと思えなくなりました。一生病気を抱えるかもしれない。私は壊れた人形になったのです。

どうしてですか?私を虐げた人は幸せでなんでわたしは、誰にも愛されず、誰にも守られず

負責を抱えて生きていかなければ、ならないのでしょうか?

私の心に一つの黒い水滴が落ちました。日を追うごとにその量は増え、私は黒い水たまりに落ちました。

黒い感情が私を支配しました。復讐を。私を傷つけたすべての人にあの時に伝えられなかった言葉を伝えたいと

類さん、汚れるのは一瞬なんです。そんな私にあなたは、なんていうのでしょうか?

貴方のなるべく平等に接しようという接客が好きでした。いつも同じモチベーションで接客することがどれほど難しいか

それを実行する貴方が好きでした。

でも、お客様の名前を覚えないのは、だめですよ?

貴方は無理をしがちなので本当に心配です。お体を大事に、幸せになってください。


敬具

和田菜穂


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