文字数 8,150文字

 B「えーっと、えとえと。えーっと、えとえと異邦人(えとらんぜ)
 C「うーん。」
 A「えーっと、えとえと。江藤蘭世(えとうらんぜ)
 C「ときめきトゥナイト!」
 B「それは思ってたけど、ベタすぎてそのネタ私は言わなかったな。」
 A「思いついてないのに言い訳しないでください。」
 B「な、何をー!」
 A「でもさでもさ、蘭世のカラダって激エロですよね。」
 B「そこは否応なく同意します。EDやばすぎ」
 A「あと蘭世って名前、めちゃくちゃ格好良くないですか?」
 B「お宅、分かっていらっしゃるですね…」
 オタッキーABCは今一体どこにいるかと言うと、これがなぜか今まで一度も来たことのない下北沢という街。その街を3人のオタクはまさに異邦人(えとらんぜ)といった風情で、首をふるふるとあらゆる角度に動かしながら歩いている。言うのが遅れましたが、3人は東京都出身。
 とりあえずまずは通し番号で紹介しますと、オタッキーAの名前は宗近孝治(むねちかたかはる)21歳(童貞)。オタッキーBの名前は池田豊(いけだゆたか)21歳(童貞)。オタッキーCの名前は森本洋平(もりもとようへい)21歳(童貞)。こちらのラインナップが首をふるふるしながら下北の街を歩いているわけですが、ふるふるしているのには理由がありまして。
 「うーん。」
 「ないですねぇ」
 ないですねぇ、と、森本がスマホの地図画面と格闘している横で、宗近が両手を頭の後ろに組みながら言う。
 「ないですねぇって、宗近氏、全然真剣に探してくれてないじゃないですか!」
 「めちゃくちゃ調べてますよぉ。心の奥底で」
 「調べてないのと同義わろす」
 池田が一人で爆笑して少し歩く速度が遅れる。
 「もう!せめて、名前だけでも見といてくださいよ。下北ブルームってとこですから」
 そう言いながら、森本は地図の画面と辺りの建物を指さししながら位置を確認している。
 「だって私、ライブなんて行ったことないですもの。アニメのイベントは行きますけど」
 「おなじく。ていうか、シモキタなんて、こんなとこ足を踏み入れたこともないです」
 宗近の言葉に池田が合わせる。そして二人は辺りを見回しながら、小刻みに震えだした。
 「それに、見てごらんなさいな、池田氏…。あそこに見えるオサレなカフェエ…。ホコリの一粒も許されないような地獄の空間でくつろぐ、同じ人類とは思えない人々」
 「まさしく。どこで売ってるのか分からない黒い布切れのような服装に、いびつな形をしたグラスで謎の極彩色の液体を飲む人々…」
 「池田氏、私は思うんですが、もう一度人類は、一から人種というものを体系化しなおすべきだと思うんです。つまり、シモキタ人、秋葉人、などという風に」
 「宗近氏。あなたの意見はいちいち慧眼で目が覚めまする。」
 池田は何か重大な啓示を受けたかのように、腕組みをしながら宗近の言葉を噛みしめる。
 「ほらほらほらほら!!また脱線してますよ!もう開演一時間前なんですから、のんびりしてられないの!」
 あまりの二人のおふざけ具合に森本がさすがに少し怒っている。愛用のGショックで時間をしきりに気にしている。
 「そりゃあ、森本氏は自分の好きなアイドル見に行けるから良いけどさぁ。私たちは楽しいかどうか、まだ分からないんですぞ。モチベが上がりませぬ」
 「そこは昨日、十分お話したじゃないですか。今日は5組もアイドルが出てくるから、もしかしたら好みのアイドルが見つけられるかもしれないって。可愛い推し見つけられるかもって、そしたら宗近氏も池田氏も、おおおお!って興奮してたじゃないですか」
 池田の抗議に対して、森本が二人を指さし大きく反論する。テンションが上がったことには間違いがない二人は、ぐうの根も出ないのか、一様に眉毛をハの字にして受け入れるしかない。
 「でも、でも。こんなオサレなところに連れていかれるなんて、聞いてません」
 宗近が周りを見ながら空恐ろし気に言う。
 「正直、居心地悪いよね…」
 池田が賛同する。確かに辺りの景色と言ったら今風の若者が行きかい、カフェ、雑貨屋、レコード屋等が並ぶお洒落な場所だった。普段は秋葉を根城としチェックのシャツが基本の彼らにとっては、敷居が高いと感じられても仕方がなかった。森田もその意見には同意する。
 「それは、確かにすみません。私も実は下北沢でライブなんて初めてで…。確かに私も居心地の悪さを感じます。普段は秋葉でしかライブを見たことがありません。ですので、今回がライブでの初の遠征となるのです。」
 「遠征ちかっ!」


 強面の男と道端でぶつかりトラブルとなった事件から、1週間ほど経っていた。
 事件から2日くらいは皆少し元気がなかったが、3日目にもなると気分も上向き、嫌なこともなんとか忘れられた。
 実はこういう事件はまれではあるが、3人共何度か経験があった。基本はカツアゲが多かった。そんな事をやってくる連中というのは、見れば分かるが腕も太い。それはそうだ。オタッキー3人が(ぼう)アニメイ(なにがし)で道草を食っている間も、奴らは人を殴り飛ばしたり何十回も腹筋したりしているのだ。そんな奴らに自分たちが立てついても勝てる訳がない。勝てるわけがないから、生き延びるために半笑いでガンプラ用にとっておいた1万円を渡したりするのだ。それで一瞬の恐ろしい嵐が過ぎ去れば、万事オッケーだった。ただし、その度に少しづつ奥底の何かが傷ついている、ということは、まだお互いには話せなかった。
 今回、下北沢まで遠征することを森本に実行させたモチベイションは一体何かというと、それはまさしく件の事件のアイドルだった。
 強面男に踏まれ破壊された自主CD。男関係の不祥事を起こし解散してしまった件のアイドルが、メンバーをそのままにレーベルを変え復活したというのだった。
 森本はその情報をアイドル仲間から聞きつけ、興奮冷めやらぬといった感じで池田と宗近に話を持ち掛け、今回遠征する運びとなった。
 宗近と池田はその話を聞くにつけ、森田に質問した。
 「もう汚されて処女じゃないけど、良いの?」
 その質問に対して森本は
 「男がいるかいないかは問題ではなく、その佇まいに「処女性」を内在しているかどうかなんです」
 という意味不明なことをドヤ顔で語ったが、二人には一切伝わっていないようだった。宗近と池田は二人で相談し、ともあれ森本が楽しそうで何よりという結論に至った。
 また、近年のアイドル事情というものに少し触れてみると、歴史上、歌謡曲が生まれ、テレビにアイドルが出現して久しいが、現在既にアイドルはテレビだけのものではなくなっている。それはインターネットの普及という影響が大きく、それによりジャンルが細分化されていった。一様に所謂、地下アイドルと総称されるアイドルたちは、コンセプトのみならずその楽曲ジャンルも多種多様を極め、今活動しているグループ数は数限りない。
 今回森本のお目当てのアイドルもそういった中の一つであり、レーベルが変わったことによってコンセプトもガラリと変わったのであった。そういうこともあり、ライブ会場もこれまでと趣が違った場所になったのである。
 「で、その森本氏に情報提供してくれた奴も、今回ライブを見に来てるのですか?」
 思い出したように池田が言った。
 「来てるみたいです。ですが、現地で合流することになってるんですが、その人とは今回、初対面なんです。なので顔が分かりません。」
 「しょたいめん?どうゆうこと?」
 宗近がふいに横から森本の肩を力強くつかみ引き寄せながら言った。
 「あ、あぁ…」
 「感じる声、野太っ」
 「力強すぎて、クラっときました。ええっと、そうなんです。その人とは例の解散したアイドルの話題でSNSで知り合ったんですよね。」
 「出たよSNS」
 池田が苦々しいといった表情で言う。
 「森本氏は、そういうところリア充っぽいですよねぇ…。本当はここら辺のカフェエも難なく入れる人種と違いますのん?」
 宗近も遺憾の意を示す。
 「やめてくださいよ!気持ちの悪い。ありえません。SNSくらい二人もできますよ。思ったこと書き込むだけですってば。」
 「いやー、ないわぁ…」
 「なので、そのアイドルが活動中のときは、私もライブに通ってましたけど、お互い知らない者同士でした。SNSで私が件のアイドルの解散について呟いたとき、反応返してくれたのが最初ですね。今回がレーベル変わって最初のこけら落としですから、会いましょうってことになって。」
 森本はとても楽しそうに経緯を振り返った。
 「そういう予想外の出会いって、私にはないわぁ」
 「私にもないです」
 自分たちにはない予想外の交流に、池田と宗近は理解不能といった感じ。頭の上にスパークでハジけて星が舞う。


 「く、くらッ…」
 「あぶあぶあぶ!」
 ライブ会場は暗く、宗近は躓いてこけそうになっていた。池田と森本がそれを助ける。
 なんとか3人は下北ブルームを見つけることができた。開演ギリギリ10分前のことだった。
 下北ブルームは小さな雑居ビルの1F玄関から入り、廊下のすぐ脇にある細い階段を下りた地下1階にあった。階段を下りる手前には、今回出演する5組のアイドルの情報が小さな看板に掲示されてあった。階段の脇や会場の中の壁は、途方もない落書きとフライヤーでぎっしり埋まっていた。
 「なんか、すごい空間ですね…。」
 池田が初めてのライブハウスを体感していた。少なからず気分が高揚している。そしてそれは宗近も同様だった。
 「なんか、真っ暗だし、人が沢山いるけど嫌じゃないですね。落ち着きます。」
 「ですよね。私もこの雰囲気、嫌いじゃないんです。暗いからお互いの目線も気になりませんしね。ライブ始まったら、皆、思い思いに聞いてますよ。」
 「森本氏の仲間は?」
 「今連絡とってるんですが、返事ないですね。まぁ、もう開演しちゃいますし。終わってから会いますよ。」
 「そうなのね。」
 「あ、もうぼちぼち始まりますよ。ちなみに出演する順番って分からないんですよね。突然出てきたら、私、速攻前行っちゃうかもなので、よろしくです」
 「りょうかーい」
 既に開演時間は過ぎていた。
 会場にはそれぞれのアイドルのファンが集まっており8割ほど埋まっていた。
 いつ始まるのだろう、と池田は心が落ち着かない気がしていた。だが、それは決して嫌な気分ではなかった。そしてそれは集まった皆が感じていたことであり、辺りに立っている者達も、友人と雑談しながらも期待を込めてその目は、まだ誰もいないステージに向けられていた。
 とそのとき、ふいにステージの脇から人が出てくるのが分かった。
 3人は会場に着くのが遅かったこともあり、比較的会場の後ろに陣取っていた。そのため、池田は少し背伸びをしながらステージを観察する必要があった。
 ステージに出てきたのは、20代と思われる男たち4人だった。
 「男じゃん!!」
 池田と宗近は、それを見るや否や、森本に詰め寄った。まるで、何かに騙されたかのような権幕だった。森本も予想外の二人の様子に気圧された。
 「ちょ、ちょっと待ってください。大丈夫、大丈夫ですから!」
 「どういうことですか!ちゃんと説明してください!!」
 池田と宗近の顔面が森本の顔面にずんずんと近寄った。近寄っていって、最終的には森本の両頬にキスをした。
 「チュッ」
 「うわっ!ちぇっ!やめてくださいよ!!大丈夫ですって、ホラ。ステージを見て。」
 ステージ上では何やら男たちが、作業を始めていた。ある者はドラムセットに座り、ある者はベースやギターを用意し始めた。
 それを見てみても、イマイチ池田と宗近はよく分からない。
 やっぱり分からない、といった風に宗近はステージで用意している男たちを指さし、森本に答えを即した。
 「えっと、そうですね。あの人たちは、演奏してくれる人たちなんです。」
 「演奏?」
 池田が不思議と言った顔をする。
 「はい。あの人たちは演奏担当。あくまでアイドルとは関係ない人たちです。まぁ楽曲制作には携わってると思いますけど。つまり、今回のアイドルたちは彼らの生演奏で歌うんです。」
 「あ、そうなんですね。」
 「生演奏も悪くないですよ。後ろで演奏している人たちも格好いいですし。」
 「ふーん。そういうもんなのかねぇ」
 生演奏をすることによって一体何が良いことになるのか、池田はまったく分からないでいた。早く女の子が出てこないかな、と思った。
 そのうち、ドラムの試し打ちとギターのチューニングが聞こえ始めた。響き渡るバスドラムとスネア。もうすぐ始まる予感がした。
 会場の温度が上昇する中、静かなSEと共にステージ脇から4人の女の子が俯いてステージに登場した。そのうちSEが鳴りやみ、一瞬の静寂があった。
 次の瞬間、大音量のドラムと共に、歪んだようなノイズに(まみ)れた轟音。その音の嵐の中を走る一縷(いちる)のイントロ。それと共に4人のアイドルが一斉に正面を向いて歌い始めた。
 池田は、今自分の目の前で起こっている出来事を処理することができないでいた。
 今までで生まれて初めて聞くような分厚い音の波。ドラムスティックがこれでもかとスネアに打ち込まれ、その度に池田の心臓は直に叩かれたような衝撃を受けた。そして不思議なのはこれほどに耳を(つんざ)く爆音であるにも関わらず、その全体の雰囲気はアイドルの歌声と相まって爽やかな印象だった。その一見相反するものの混然一体となったステージの最中にいて、池田は激流に打ち付けられながら、ただ立っていることしかできなかった。
 気が付けば、アイドルの演奏はすべて終了していた。全部で5曲だった。
 ふと我に返った池田が、すぐ隣にいた宗近を見ると、宗近もやっぱり自身と同じように何か腑抜けたような感じだったが、目だけは大きく見開いているのだった。これは一体どういう表情なのだろう、と池田は思った。
 前列の方から森本が興奮しながら戻ってきた。どうやら、このアイドルが森本の応援するアイドルだったようだ。
 「お疲れ様!!死ぬほど良かったです!」
 森本の眼鏡は熱気で曇っていた。よっぽど興奮したようで、ハンドタオルで頭の汗を拭いているのを見て、池田も自身が汗をかいているのを自覚した。眼鏡をはずしておでこをハンカチで拭いた。
 大満足の森本を後目に、その後も残り4組のアイドルが続いた。なんとなく何かを期待していた池田だったが、さっきのような不思議な感情になることはもうなかった。


 「どうでした?」
 ライブ後、雑居ビルを出たところで森本がきらきらした笑顔で言う。下北沢まで遠征のし甲斐があったと言わんばかりの表情だった。そんな顔をされたら、池田は自身の感想が言い出しにくかった。
 なぜかというと、ライブの前に話していた自身の推しを探すと言った目的を、池田はまったく達成できていなかったからだ。
 池田は5組の歌をすべて聞いていたにも関わらず、アイドルの女の子の顔や姿を一切思い出すことができなかった。ただ一つ覚えているのは、自身を丸ごと飲み込んていった激しい轟音と、引き裂かれるようなノイズの波のことだけだった。
 「えーっと、そうですね…。女の子のこと、あんまり覚えてないかも」
 「そうなんですか?!なぜに?なんか気になることでもありました?」
 森本が、一体どうしたのか、といった顔をしながら心配そうに言う。
 「いや、その、なんというか…。」
 「どうしたんです?」
 「いや、えーっと、なんてゆうか。まぁ、凄い良かったです。うん。あの、それでですね、」
 「はい」
 「気になるって、ことでもないんですけど、あの1組目のアイドルの音楽って、あれってどういった音楽になんでしょう?」
 元々アニメ主題歌しか聞いたことがない池田にとっては、音楽のジャンルというものが、ちっとも分からなかった。そう言われ森本も少し考えこむ。
 「うーん、音楽ジャンルってことですよね。ロック、だと思うんですが、それ以上のことは私もはっきりとは知らないんです。でも、とても爽やかで綺麗でしたよね。」
 「そ、そうなんです!爽やかで綺麗…、そう。まさしくそんな感じ。あんなに爆音で溢れかえる空間なのに、それが全然ウルサイって感じじゃないんですよね。あれって一体どういうことなんだろう…」
 自身が思っていたがうまく言語化できなかった感覚を、森本が表現してくれたことで、池田は興奮した。この感覚はなんなのだろう。大きな大音量の渦に巻き込まれて、自分の存在がすべて溶けてしまうような…
 「シューゲイザーっすよ。」
 後ろから声が聞こえてきた。
 3人がその声の方を振り向くと、灰色のパーカーにジーパンを履いた、爽やかな青年が立っていた。池田たちより3歳ほど年上に見えた。


 「へ?」
 池田が間の抜けた声を上げた。
 「シューゲイザー。」
 「な、何ですか?」
 「今言ってたジャンルのこと。さっきの1組目のアイドルの音楽ジャンルはシューゲイザーっていうんです。」
 青年はパーカーのポケットからクシャクシャになったタバコの箱を取り出し、そこから一本口に入れ、火をつけた。
 「しゅ、シューゲイザー?」
 「うん。」
 「何、そのサイボーグみたいな名前」
 シューゲイザーという言葉に引っかかって、宗近も思わず口を挟んた。
 「確かに、変な名前っすよね。あの爆音とノイズの波が何度も押し寄せるような音。脳みそがその中にどろどろに溶けて行きそうになりませんでしたか?その音楽ジャンルがシューゲイザーっていうんですよ。アイドルのこと、お兄さん、全然覚えてないんですよね?」
 「え?… …えぇ、まぁ」
 「ごめん、さっきの話、ずっと後ろで聞こえてて。盗み聞きするつもりじゃなかったんだ。まぁそれはそれとして。じゃあ、演奏してる奴らのことは覚えてます?」
 そう聞かれて、池田は心臓が大きく鳴った気がした。演奏してる男たちのことを何故か鮮明に覚えていたからだ。なんでだろう。彼らのことを知らないうちに目で追っていたからか。ドラムが叩きつけるスティックの軌道、ギターが6弦の上を滑る度に揺れるステージ。地の底から振動するようなベースのリズム。
 「…は、はい。覚えてます。」
 「あの人たちね、超内気なんすよ。てか、シューゲイザーやってる奴らなんか、みーんな内気。陰キャも陰キャ。人の目もまともに見れなくてさ。だけど、みんな爆発したいんです。」
 「… ……」
 「shoe(靴)をgaze(凝視)する。内気な奴らが、でも自分の中の何かを爆発させたくてステージに立つ。んで演奏はするんだけど、陰キャだからパフォーマンスなんて芸当、とてもじゃないができない。結果、自分の足元を見ながら演奏する、その様を見てシューゲイザーって言われるようになった。なんてね。大体そんな感じ。」
 「へー。」
 轟音の渦を体感した池田にとって、その言葉はとても腑に落ちたものだった。
 「あのー、失礼ですが、どちら様でしょうか?」
 森本が青年に向かって、丁寧に声を掛ける。
 「あ!ごめんなさい。初めまして。僕、佐々木って言います。ササカンです。」
 突然知らない人から自己紹介されても、リアクションなんてとれない、と池田と宗近は思った。
 だが森本だけは違った。その青年の言葉を聞いて、元々丸くしていた目を更に丸く大きくさせ、傍から見ていても分かるほど驚いていた。
 「サ、ササカンさん?!」
 驚いている森本を見て、やっと池田も宗近も気が付いた。
 このリア充ぽい男が、ななんと例のSNS野郎だ!
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