7 ✿ マリーパニック

文字数 980文字

Hey!!

ひ!?
マリーの背後から声をかけたのは、シンガポールの地元警察官だった。
(もしかして警察官でしょうか?)
(こんな幼い子が夜に1人で? 鞄も何も持っていないようだが……家出か?)
警察官はマリーの腕をむんずとつかみ、怒るように訊ねた。
名前は? 住所は?

Aua! Hör auf!

(痛い! やめて!)

驚いたマリーは母国ドイツ語で返す。
   アネモス

άνεμος!

思わず魔法で警官を突き飛ばしてしまった。


警官は地面に転がり、うつ伏せに倒れた。

う、うぅ……

警官はうつぶせに倒れ、痛そうにうめいている。

あ……あ……いや、そんなはずじゃ……

マリーの膝がガクガクと震えた。

い、今のは……一体?

なんて怪力だ……

警官が、ゆっくりと上身を起こす。


突き飛ばされたが、擦り傷程度のようだ。

Es tut mir leid.....

(ごめんなさい……)

ボートーキーにて、怪しい少女を発見。

聞き慣れない言葉を話して、ひどく抵抗している

警官はすぐに仲間に連絡を入れた。

(わ、私はなんてことを……。警官に暴力を……)

警官は荒々しいシングリッシュで、マリーに質問を浴びせる。


ただでさえ混乱しているマリーには、聞き取ることは容易ではない。

(身元を証明できるものなんてないし。私……捕まってしまう!!)

視界がぐるぐると回る。

パニックに陥ったマリーは、警官に背を向け、駆け出した。
待て!!

Entschuldigung, Entschuldigung!!

(ごめんなさい、ごめんなさい!)

人々の行き交うきらびやかなレストラン街を、泣きながら一目散に走り抜ける。


だが警官たちの足は速く、とうとう追いつかれそうになった。

(あれは……箒!)

レストランの外を掃除していた店員が、箒を壁にたてかけ、ゴミをまとめていた。

お願い。これ、貸してください!
Huh!?

マリーは箒を取ると、路地へ逃げ込んだ。


追いかけてきた店員や警官をまき、箒にまたがり空へ飛び出した。

どうして、こんなことに……?


ひっく、うっく……

涙でにじむ視界をマリーはごしごしとこする。

にいさん……。

ラルフにいさん……助けて……

嗚咽しながら行く宛てもなく延々と空を飛ぶ。


しばらくすると、あるものがマリーの目に飛び込んだ。

高さ三七メートルの白く大きな物体が、月光を受け輝いていた。
あれは……なんでしょう?
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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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