2006年9月17日

文字数 800文字

2006年9月17日
 ローマ法王ベネディクト16世がジハード概念を批判し、それに対する反発が世界各地に広がっている。無益な宗教対立を抑えなければならない立場なのに、極めて不用意だ。彼は、1933年に母国で権力を掌握した人物が何を言ってきたかをよく承知しているはずである。「礼儀の正しさはある程度の客観性と相互の妥協がなければ成り立たない。ある絶対的な真理に一生懸命かじりついている人間は悪魔以上に妥協を恐れる。そういう人間は自分と他人をしっかりと結びつけ自分の非妥協的な構えをぼやかしそうな人当たりのよい礼儀の発現を抑える。したがって、ある信念がその力を失うと、しばしば無作法がそれにとって代わるのである」(『波止場日記』)。

 さらに、石原慎太郎東京都知事がまた「三国人」と発言したと知る。佐藤春夫がデビュー当時の彼を「興業者」と酷評したが、この有様では興業者に対しても失礼だろう。「ナショナリストがもつプライドは、他のさまざまなプライドと同様、自尊心の代用品になりうる。ファシズムや共産主義体制下にある民衆が盲目的愛国心を示すのは、彼らが個々の人間として自尊心を得ることができないからである」(『情熱的な精神状態』)。

 マルクス・ポルキウス・カトー・ウティケンシスにしろ、マルクス・アウレリウス・アントニヌスにしろ、政治家のストア主義者は少なくない。ストア主義は感情の抑制を唱える。感情は過剰な衝動であり、人は感情から自由であることは難しい。政治家たるもの、感情に訴え、扇動するなどと言語道断だ。政治家はストイックであらねばならない。

 厳格主義と世俗主義の調停を図るストア主義者の目標は賢人である。賢人は知識人ではない。徳に従って生きており、人間の本性に対する対処を心得ている。ホッファーが目標としていたのはこの賢人である。

 台風13号が接近しているため、午後から雨が降り出し、夜には、激しくなる。
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