第1話

文字数 1,304文字

ある山にキツネの姉妹が住んでいました。
姉のキツネはとても心配症で いつも何かしらの不安を抱えていました。

隠して置いた餌はまだ食べられるかしら?
お腹を壊さないかしら?
この道はいつもの道とは違う道なんじゃない?
最近、毛並みに艶がなくなったみたい 病気?
鷲が私達を狙っているかもしれないと
警戒しすぎて なかなか目的地に着かない事も
ありました。
そんな姉キツネを、妹キツネはいつもケラケラ
笑いながら見ていました。
「本当にお姉ちゃんは心配性ね、何をそんなに
心配しているの?1度だって危険な目にあった事なんてないのに」と言っても
「いつどんな悪い事が起こるか どんな危険な目にあうか その怖さをあんたは、まだ知らないのよ」と妹を一喝!
心配性が治る気配はありませんでした。
大笑いしたり ケンカしたり 慰め合ったり
助けあいながら仲良しキツネの姉妹は山で静かに
暮らしていました。

今年も妹キツネの大好きな冬がやってきました。
妹キツネは起きると すぐ巣穴を飛び出し
雪の原へ一直線です。
反対に姉キツネは寒さが大嫌い。
近くで遊ぶと約束をした妹キツネの 
楽しそうな声を聞きながら 巣穴でのんびりと
丸くなっている日々でした。
妹キツネは、降り積もった雪の上や雪の中を
潜ったり転げ回ったり1人遊びに夢中です。
毛に雪玉がゴロゴロ付いていたってお構いなし、雪玉お化けだぞーなどと姉キツネを驚かせては、きゃっきゃっきゃっきゃっと大笑い
姉キツネに怒られる事を楽しんでいました。

ある日 妹キツネが巣穴に戻ってくると
コホコホと咳をしていました。
「どうしたの?」
「ちょっと遊び過ぎたみたい、頭が痛くて
 喉も痛いの」と元気がありません。
最近、少し落ち着いていた姉キツネの
心配性が一気に大爆発!!!
大変!大変よ!大変じゃない!
病気よね。絶対病気よね。
どうしたらいいの。どうしたらいいのよー
こんな事はじめてだわーー
隣で、コホコホと咳をしながら丸くなって
いる妹キツネを見ながら、
姉キツネはこの世の終わりのように頭を抱え
天を見上げていました。
「お姉ちゃん落ち着いて しばらく外には出ないから おとなしくしていたらよくなると思うから」
妹キツネは姉キツネを心配させない様に
落ち着いて話しをしました。

でも、次の日もその次の日も妹キツネの容態は
よくなりません。
それどころか、熱がどんどん上がって苦しそうです。
姉キツネはどうしたらいいのか解らず
オロオロと天を仰ぎ祈っていました。
神様 妹を連れて行かないでください。

妹を助けるには 妹を助けるにはと
泣きながら考えていました。
そしてある日
助ける手立てをようやく思いついたのです。
それは心配性の姉キツネが考えたとは
とうてい思えない事でした。
山を降りて人間の町へ行き 薬を貰ってくるしかないと結論を出したのです。
仲間に聞いた話しでは人間は恐ろしい生き物で キツネを殺したりするそうです。
でも上手い事 化けて人間から欲しい物を頂いて来たと自慢げに話している仲間もいました。
妹キツネを助けなきゃ!祈ってる場合じゃない。
どうしても自分が人間に化けて薬屋で薬を貰ってくるしかない!
決心した姉キツネの体は雪の中にいるようにブルブルと震えていました。



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