最終話 さようなら 僕らの御簾照中学校
文字数 1,403文字
家並さんが、松葉杖をつきながら廃ビルの建物内に入る。
…すまない、ワトソン君。
私とした事が、完全に油断していた。
だが、これ以上負けるわけにはいかない!
…まったく、君は本当に、人の気も知らないで無茶ばっかりするんだから。
おいおい、ちょっと、何止めてくれちゃってんの?
もうとっくにタイマーの数字は0になってんだよ!
病棟と校舎が木っ端微塵になっちゃうって言ったの、忘れた!?
家並さんは、スマホの画面を見せる。
病棟と校舎の映像が映る。
…ふっ、こんな事もあろうかと、手を打っておいて正解だった。
意識が戻ってすぐ警察に連絡して、爆弾処理班を呼んだのだよ。
…3年間、ずっと考えてた。
犯人なら、次にどんな手を使って私達を殺そうとするかをな。
3年前、貴様に同胞を奪われた私だからこそ、貴様の行動を読む事が出来た。
…このゲームは私たちの勝ちだ、モリアーティ!!
…警察に身柄を引き渡す。それで貴様のゲームは全て終わりだ。
貴様など、殺す価値も無い。
…持病だよ。6年前、急に発病してね。
もう永くない。
だから、何もかもめちゃくちゃにして、俺自身も死ぬつもりだったんだ。
あーあ、最期くらい、かっこよく散りたかったのにな〜。
…貴様が私の事を好きだと言った時、本当は少し期待してたんだぞ。…残念だよ。
…俺も、君たちと一緒に過ごしてた時、ちょっとだけ、このまま普通の教師として生きていくのも悪くないかもって思ってたんだよ?
(…あれから、森谷は逮捕された。そして、家並さんは順調に回復した。…お医者さんによると、全治半月で済んだのが奇跡だそうだ。今は、こうして卒業式に出席している。)
(今思えば、この1年間、色んな事があった。…ハラハラすることもあったけど、その一つ一つが、僕にとっては青春だった。)
…紗音。今まで、本当にすまなかった。
許してくれとは言わない。…だが、もう一度、俺を家族にしてくれないか。
パパね、あれから、紗音のすぐ側にいたいって言って、紗音の進学先の近くの家を買ってくれたのよ。これからは、3人で一緒に暮らしましょう。
…なんだよ、今さら…こっちが、どれだけ寂しかったと思ってんだよ…
…もっと早く、戻ってきて欲しかったよ、お父さん…!
…泣き虫なところはホント変わんねえな。
今まで、本当にごめんな。
まあまあ。
…そうだわ!みんなで、記念写真撮りましょう!
あら、樋貝さん。これから、一緒にお写真どうですか?
…また出たよ。
こっちが恥ずかしくなるからやめて欲しいのに…
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