第7話鳳凰=不死鳥、フェニックス?

文字数 1,545文字

翌日の日曜日、俺は食堂で朝食を済ませてから昨日の新聞をもう一度見てみたくなり、寮のおばさんにその訳を話してみた。
すると物置小屋にしまってあったというその新聞を持ってきてくれた。
それを受け取り自分の部屋の畳の上に広げて、気になっていた記事を読み直してみる事にした。
昨日の寺島君との会話の中で、ある程度は理解できていたのだが、もう少し自分なりの解釈が出来ないものかと思い、新発見されたという文字をノートに一文字ずつ書き写してみた。
「最高所の天照大神の光を受けて権現の鉄剣が鳳凰を照らした」
そこで俺はその中に出てくる権現の鉄剣がという文字が、寺島君の言っていた通り、八ヶ岳の権現岳に実在する鉄剣の事を指しているのだと仮定して考えてみることにした。
すると残された文字の中でキーとなってくる文字が3つあった。
その3つの文字とは、最高所、天照大神、そして鳳凰である。
先ずその中の1つである天照大神について考えてみた。
「天照大神とは当然、皇室の祖神でもあり、太陽を神格化した大神であるという事は知っている。
そのあとに続く、の光を受けてという文字との文脈から考えてみると、やはり太陽のことを表現しているのだろうと思われる。
よし、これは解決だな。
次は最高所という文字の意味だ。
これは何のことを指しているのだろうか?
まあ普通に考えてみると、最も良い所か、最も高い所のことを指しているんだろうな。
そうだ、両方とも文にして当てはめてみれば分かるな」
そこで俺はそれを文章にして読んでみた。
「最も良い所の太陽の光を受けて、になる。
あれ、これではおかしいな。
それではもう一つの方も当てはめてみるか?
最も高い所の太陽の光を受けて、になる。
あ、これならば意味が通じるな。
しかし最も高い所の太陽とは、どういう事なんだろうか?
一日の中で太陽がいちばん高い位置にある正午のことを指しているのか、それとも一年中で最も高い位置にある太陽のことを指しているのか?
あ、そうだ、分かったぞ、夏至の日だ。
それも太陽がいちばん高い位置にある正午だ。
これでいよいよ面白くなってきたぞ。
しかし最後に残った鳳凰。
この文字はいったい何を表しているのだろうか?」
辰男はここまで自分なりに訳してきた言葉を、文章にして読んでみた。
「夏至の日の正午に太陽の光を受けて権現岳にある鉄剣が鳳凰を照らした」
「うーん、これで何となく意味が分かってきたぞ」
辰男はそこで鳳凰という言葉の意味をスマホで調べてみる事にした。
するとそこには、このように説明がされていた。
「中国の神話に出てくる伝説上の鳥であり、西洋ではフェニックスとも言われている。また不死鳥と同類に扱われることもある」
「うーん、鳳凰にはそんなに凄い意味が込められているんだ。そう言えば世界遺産にも登録されている宇治の平等院鳳凰堂も国宝だったしな。なんか俄然興味が湧いてきたぞ。
よし一度、権現岳に登ってみるか?
せっかくこうして日本百名山が近くに沢山ある職場に移って来たのだから、これを機会にまた登山を始めてみるとするかな?
そうすれば研究漬けになって溜まってしまうであろうストレスも緩和されるだろうしな。
ところで今年の夏至の日はいつなんだろうか?
カレンダーに書いてあるかな?
どれどれ、ああ今月の21日だ。
だけど平日だなあ。
この際、有給休暇でも取って行ってみるとするか。
しかし今回の話には男のロマンが感じられるなあ。
それと夏至の日までにはまだ2週間も有るから、その間に登山道具一式も新調してみるかな。
あ、あとそうだ。
寺島君が鉄剣が錆びついているって言ってたっけ。
ついでに紙ヤスリでも持っていって磨いてやろうかな、アハハ」
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