プロローグ 嵐の中のクラーケン

文字数 471文字

 大洋が荒れ狂っている。

 暴風と雷鳴、巻き上がる高波。

 その中に、今にも転覆しそうな一隻の小舟があった。

来たな……。

 小舟に乗る少年――ラオの正面で海水が噴き上がる。

 頭を出したのは、赤色の表皮を持った巨大な蛸だった。

クラーケン……!

お前が姉さんを……!

 ラオは左手でロープを掴んで体勢を維持する。

 反対の手はクラーケンに向けた。

 手のひらが紫色の光を帯び、やがて炎へと変化する。

(俺はこいつを倒す!

 この〈紫焔(ブレープル)〉はそのために鍛えてきたんだ!)

食らええええええええ――――ッ!!

 ラオの右手から紫炎が放たれた。

 熱線はクラーケンの頭部を直撃したが、接触した瞬間から消滅していく。

なっ……!?

全然効かないだって……!?

 クラーケンの八本の腕――触腕がうごめく。

 そのうち一本が下から襲ってきた。

 打ち上げられ、ラオはボートごと宙へ舞い上がる。

 反撃する間もなかった。

 別の触腕がラオの左側から飛んできた。

 ――すさまじい衝撃。

うわあああああああああ――――ッ!!
 触腕の一撃を浴びたラオは、遙か彼方まで飛ばされ、海中に没した……。
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登場人物紹介

「ラオ」

孤島出身の少年。〈紫焔(ブレープル)〉と呼ばれる紫色の炎を操ることができる。

「ロギア・ガーネット」

帆船『ガンマディオラ』の甲板を仕切っている少女。勝ち気な性格。

「シュトラ」

『ガンマディオラ』のメンバーでフィーネの姉。故郷を海魔に攻め滅ぼされ、流転の果てにこの船の一員となった。

「フィーネ」

シュトラの妹。海魔に故郷を攻め滅ぼされ、姉とともに行く当てのない旅を続け、やがて『ガンマディオラ』に乗船することになる。姉への依存が深刻。

「ディック・ハンヴィール」

『ガンマディオラ』の船長。〈神糸(リオット)〉と呼ばれる能力で帆船一隻を丸々操っている。膨大な力を消費するため、航行中はいつも寝落ち寸前の状態。

「サクラ・イカヅチ」

東方の武人の血を引く少女。雷撃を宿した刀を使って海魔を倒す。

「ハーヴェイ・チェッカータ」

大声を衝撃波に変える〈鬼哭(シャウガ)〉という能力を持つ青年。能力のせいで大声を出すと話し相手を吹っ飛ばしてしまうため、寡黙を貫いている。

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