プロローグ 嵐の中のクラーケン
文字数 471文字
大洋が荒れ狂っている。
暴風と雷鳴、巻き上がる高波。
その中に、今にも転覆しそうな一隻の小舟があった。
小舟に乗る少年――ラオの正面で海水が噴き上がる。
頭を出したのは、赤色の表皮を持った巨大な蛸だった。
ラオは左手でロープを掴んで体勢を維持する。
反対の手はクラーケンに向けた。
手のひらが紫色の光を帯び、やがて炎へと変化する。
ラオの右手から紫炎が放たれた。
熱線はクラーケンの頭部を直撃したが、接触した瞬間から消滅していく。
クラーケンの八本の腕――触腕がうごめく。
そのうち一本が下から襲ってきた。
打ち上げられ、ラオはボートごと宙へ舞い上がる。
反撃する間もなかった。
別の触腕がラオの左側から飛んできた。
――すさまじい衝撃。