第1話 過去と未来の再会

文字数 9,486文字


嘘がない世界。

裏切りがない世界。

悲しみがない世界。

争いがない世界。

そんな平和な世界なんてあるわけがない。

子供の時からずっとそう思って生きてきた。

大切な何かを守るためにはどれくらいの犠牲を出さなくてはいけないのか。

どれだけの血を流さなくてはいけないのか。

もう失いたくない…。こんなとこで終わりたくない…。 

だから…私は過去に託す…。過去の自分に…。
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私は16歳になり、頭は対して良くないけど体力には自信がある普通の女子高生。学校にも少しずつ慣れてきた。

友達はほとんどいない。昔の幼馴染とも今では遊ばなくなった。 私は一人でいる時間の方が多いから。

親は基本仕事で家にいないから帰っても私とペットだけだ。

そして私はコンビニでご飯を買い、家で細々と食べる毎日。

最近は全く現れなくなったけど私は『過去』をたまに見ることができる。

頭の中で過去の記憶、景色、出来事などが見えることがある。

最初は昔の出来事しかよぎらなかったのが成長と共に私も過去に行ったようにその時の状況を見ることが出来た。

周りからは考えすぎだとか言われてきたけどそんなことない。本当に見えるんだ。

小学生の時によく遊んでいた友達に話したらすごく興味持って聞いてくれた。

『ティナちゃん過去が初めて見えたときどんな世界だった?みんな楽しそうだった?辛いものとか見えなかった? 』

だけどその見た記憶は何故か覚えていなかった。見た過去の記憶はそのまま誰かに喋れないし教えることができない。

だから信用もされないし、変なやつっていつも言われて終わった。

でもその子はすべてを信じてくれていた。私が話すことのすべてを受け入れてくれた。

すごく嬉しかった。

あの時は自分の意思で見ることができたけど最近はあまり見えなくなった。  

…別に何の問題もない。これで普通の女の子として生きていけるから。 変な奴だと思われずにすむ。

いつも通り私は学校に行き、いつも通りの生活を送る。

『この時までは穏やかな生活を過ごせると思っていた。普通の生き方が出来ると思っていた…。』

学校に着くと私は自分の席に着いた。窓際の席だった。風が気持ちよく、まだ学校に入ってくる生徒たちが見える。教室の周りを見渡すとクラスの生徒たちは皆、楽しそうな会話をしていた。

私はそんな楽しそうな空間に入り込めない。

たまに話しかけてくれる人に対しても愛想笑いばかり。自分の気持ちもちゃんと伝えられない。相手もそれを見抜き少し距離を置いてくる。そんなつもりはないって自分がよくわかっている。何故かこれ以上関わってはいけないという気分にさせられるんだ。もしかしたらこれが理由で中学生の時、学校に行きたくなかったのかもしれない。

でもこれでいいんだ。

何不自由のない生活と言われたら嘘になるけど、周りの笑顔 楽しそうなこの雰囲気を眺めていられるだけで今は幸せだと感じられている。 

私はいつもどおり窓の外を見ていた。大人の人が生徒たちと立ち話をしていた。

私はそれをぼーっと眺めていた。少し目が合った気がした。

だけど私はすぐに目線を外した。やましいことがあるわけでもない。人に見られること、注目を浴びることに抵抗があるから。只、気になるという気持ちはある。何の話をしているのか、何が起こっているのかは好奇心で気になってしまう。自分とは関係ないってわかっていても気になってしまう。

それから話をしていた生徒が教室に入ってきて私のことをチラッと見てきた。 

私が窓から見ていたからだと思った。

そしてその瞬間その生徒は隣の生徒に耳打ちをしていた。

「なぁ。あいつのことじゃね?」

「んなわけないだろ。あいつがそんなことできるかよ。あのおっさんが言ってたイメージと全然違うじゃん」

「だよなぁ。でも星咲って名前あいつ以外にこの学校にいるか?」

「星咲違いだろ。それにあのおっさんの言ってたことも嘘だろ。不審者かもしれねぇし後で先生に言っとくわ。」

私は微動だにせず窓の外を見ながら生徒たちの会話を聞いていた。

心の中では心拍数が上がっているのがわかった。でも何もしていない。心当たりもないから何も動揺する必要性もない。

黙っていれば自然に忘れ去られていく。しつこく自分の主張を押し付けわかってもらおうとすると相手の記憶に残ってしまい自分が辛くなるってことを知っている。

『もう同じ過去は繰り返したくないから。』

隣では女子グループが話していた。

「ねぇそれより昨日のSNS見た?」

「あーあの今この国がやばいってやつ?見た見た!」

「もうすぐ戦争がこの国で起こる!とか書いてあったけどあるわけないじゃん。」

「でもいいねの数多かったし、その投稿すぐに消されたみたいだよ。」

「そんなデマ話載せたらそりゃあ消されるっしょ。バズらせるために言ったに決まってるじゃん。」

「まぁ物には限度があるよねぇ。本当に戦争が起こるんだったらもっとニュースとかでやってるし。」

「まぁいつもの釣りでしたってことで!そんなことよりさ今日の帰りにカラオケ行こうよ。」

「いいよ。いこいこ!」

女子たちは楽しそうに会話をしていた。

気が付けば昼休みに入っていた。私は買っていたお弁当をボソボソと食べていた。楽しそうに机を移動させて食べている生徒たち。屋上から聞こえてくる会話も雑音でしかない。でもそのありふれた雰囲気だけで私は満足していた。

お弁当のご飯を口に含んだ瞬間だった。

男子二人が私の前に近づいて来た。

「ティナ?やっぱティナだよな?!久しぶり。俺の事覚えているか? 」

「え?」

私は下を向いていた。高校に入って話しかけられることはあっても下の名前で呼ばれたことなんてなかった。

私はゆっくりと目線を上に向けた。

そこには見たことがある顔があった。昔の印象とはかけ離れてはいたけどすぐにわかった。

小学生の時によく遊んだ幼馴染のレンとトオル。

「うん。レンとトオルだよね。」 

(この二人も同じ高校だったんだ。私のことを良く知っている幼馴染。)

「同じ高校だったんだね。」

「おう。お前、随分変わったよな。なんていうか昔より可愛くなった気がするわ。」

「レンとトオルも雰囲気変わったね。身長も高くなってるし。」

「俺たち小学校卒業してから中学では全くつるまなくなったもんな。」

「だよね。二人とも部活とかに専念してたし、もう昔みたいに遊ぶこともなくなったからね。」

「お前はあまり学校に来ていなかったしな。また一緒になれてよかったよ。」

「本当はティナとも遊びたかったけどティナこそ俺たちを避けてたんじゃないかってずっと心配してた。 だから声かけたかったけどずっとできなかった。」

「昔みたいにまた抱え込んでないか?」

「うん。一人になりたいって思う日が日増しに増えていってなかなか学校にいけなかったこともあったけど 今はもう大丈夫だよ。」

「そっか!また昔みたいに楽しくやろうぜ。ティナさえよければだけど。」

「うん。また宜しくね。」 

(レンとトオルとならまた昔みたいに本心で笑えるかもしれない。)

「あ、そういえば昔に話していた過去のことが見えるってやつって今も…。」

「おいトオルいいだろ。その話は。」

「あ、すまん…。」

「ううん 大丈夫だよ。もう昔みたいに最近は見たくても見れないし、少しずつ普通になれてきたんだと思う。」

(そう、この2人には私の秘密を話した。秘密と言うにはバカげた話だけど、当時すごく悩んでいた。 子供だったからみんな楽しそうに聞いてくれていた。もちろんバカにする人の方が多かったけど。)

「そ、そうか。ごめんな。俺、あのことで今でも苦しんでいるのかなって思って、中学になかなか来られなかったのもそれが関係しているんじゃないかってずっと心配してたんだ。」

(あのことで苦しんでいたのはその通り。でも本当に苦しんでいたのはそれを話したことだと思う。黙っていればなんてことない普通の女の子で終わる。でも話したことによって普通ではなくなるから。小学生なら笑い話になってもこの年になると変わった子という目で見られてしまう。)

「ありがとう。もう平気だし、大丈夫だから気にしないで!」

(もしまた見えてもこの2人になら正直に話せる。そう思えた私は成長したのかもしれない。)

「またみんなと遊んだりしたい。だから昔みたいに仲良くしてほしい。」

(嘘ではない本心が言える。ちゃんと面と向かって笑える。)


「おう! そうだな!また昔みたいにミナ、イオリ、ヒマリたちとも遊びてぇな。」

(イオリとヒマリかぁ。別の高校行っちゃったんだっけ。元気にしてるかな。)

(それにミナ…。)

「ねぇレン、トオル。ミナって今なにしているの? 」

「え?ミナかぁ…。ミナは…」

「ミナは元気なんだよね?」 

「…。」

「ミナになにかあったの?レン何か知っているなら話して。」

私は机に手をつき自分でもびっくりするぐらいの大きな声を出してしまった。周りの生徒たちはその瞬間静かになり、私たちに視線が向いた。

「いや、ミナは中学の時はあんなに明るかったのに急に俺たちを避けるようになって、なんていうか絡みづらくなったんだよ。」

「俺が話しかけても睨んできて関わらないでって言われた。それ以来、話しかけるのはやめた。」

「あのミナがそんなこと言ったの?それでミナはどうなったの?」

「ああ。避けるようになったその2ヶ月後に引っ越ししたんだよ。ミナは。」 

「建前は親の仕事の都合でってことだったけど、俺たちはあいつんちに行ったんだ。そうしたら親は引っ越しなどしていなかった。ミナは急に家を出たって。」 

「それって家出じゃないの?お父さんは居場所知っているんでしょ?」

「いや、どうやら高校を辞めて一人暮らしするからって話だったんだが俺はそんな訳がないって思ってる。現にミナのお母さんは何か俺たちに隠してるようだった。」 

「…。」

「でもそれっておかしいじゃん。私は学校には全くいけていなかったわけじゃないし、それなら私だってそう言った話少しでも知っているはず。昔あんなに仲良かったのに知らないはずがないよ。」

「ティナ…。俺たちにもそれ以上のことがわからないんだよ。」

「何て言うかそれ以上知ってはいけないって言うか。」 

「あの時のミナも、昔のティナみたいに重なって見えたって言うか。急に人が変わったように見えた。」

「どういうこと…? 」

「トオルやっぱ話していいか?」 

「もう隠しても仕方ねえよ。それよりティナには知る権利があるよ。」

「だよな。」

「ねぇ話して。」

「まぁ単刀直入に言うと、俺たちミナとの記憶が全くないんだよ。」 

「え?どういうこと…記憶がないって…。」

「何て言うか…。」

「どんなやつでどんな顔でどんな声だったのかも今では思い出せないんだ。」 

「わかっているのは仲が良かったこと。よく一緒になにかしてたってこと。一番覚えてるのは小学生の時の記憶かな。」

「そして、ティナとミナ。二人は凄く仲が良かったこと。」

「それに今話したことにも続きがあったはずなんだ。俺たちがミナの家に行って、はいそうですかで帰るわけがないんだよ。絶対に何かあったはずなんだがそれも思い出せない。俺が覚えていないならまだわかるが記憶力がいいトオルが忘れるわけないんだよ。」

「今、俺たちがわかっているのはこれだけだ。もしかしたら今話したことも忘れるかもしれない。意味がわかんねぇよな。」

(記憶が消えるってどう言うこと…?ミナのことを知ろうとすれば記憶が?私の過去のことを知る力があればあるいは…。)

「確かに私もあまり中学に行けていなかったけどミナをあまり見かけたことなかったし、あんなに仲が良かったのに急に遊ばなくなっていた。」

(それも私が前向きになろうとした時からだった気がする。私が落ち込んでる時にミナはいつも励ましてくれていた。ミナ…何があったの…?)

「まぁなんていうかミナとの記憶が次々に消えていっているのは間違いないんだ。」

「忘れるわけないじゃん。6年も一緒に遊んでいろんな思い出作ったじゃん。」

「じゃあさ、ティナあいつの名字覚えているか?誕生日も覚えているか? 」

「え…?名字…。誕生日…。」

「あれ… なんだっけ…。」

「だろ。レンはついこないだまで覚えていたんだ。だからメモした。それがこの紙。」

「なにこれ…。」 

紙には塗りつぶされた跡があった。

「そして2ヵ月前まで俺は名字を覚えていた。それをスマホに残しておいたんだけど ほら見てみろ。」

そこには何も書かれていなかった。

「レンと一緒にメモっといたから俺も覚えているが、確かに消えているんだ。」

「ってことはなんで『ミナ』って名前は覚えているの?」

「それはわかんね。でもミナとの過去のことを思い出そうとすると忘れちまうんだよ。」

「だからレンと俺はもう忘れようってことにしていたんだけど、ティナと久しぶりに会ってもしかしたら何か知ってるかなって思ったんだよ。」

「そっか。ごめん。私もミナのこと全然思い出せない。」

(でもただ忘れているだけではない気がする…。)

(消えた?消された…?)

(なんて非現実的すぎる話だ。でも私の過去が知れるものも現実的ではない。そんなことが本当にあり得るわけがない。)

「まぁそういうことだから、これからもまた遊んでくれよな。ミナのことはそのうちきっと思い出すって。」

「そ、そうだね。」

「あ、そういえばイオリとヒマリはどうしているの?」

「イオリとヒマリは隣の高校に行ってるみたいだ。」

「でも俺あいつらの連絡先知っているから教えとくよ。また連絡してやってくれ。喜ぶと思うからさ。」

「うん。わかった。ありがとう。」

チャイムが鳴り響いた。

「あ、チャイムなったからまたな。」

「さっきのことあんま気にすんなよティナ。」

「わかった。じゃあまたね。レン、トオル。」

そして授業が終わり、私は学校の帰りにさっき教えてもらったイオリとヒマリにメールを送った。

(たぶんもう2人はうろ覚えだろうなぁ。最後に2人に会ったのは小学校の卒業式だったっけ。)

ヒマリとはよく駄菓子屋とかに行ったり、川遊びをしたっけ。私の家の近くに住んでいたけど ちょっと離れたとこに引っ越しして以来全く会わなくなった。

イオリは家が金持ちで頭もよく私たちとはまったく違う環境で育っているのに泥だらけになるまで遊んでよく親に怒られていたっけ。 

中学はきっと受験したんだと思う。

親からは相変わらず連絡がない。最後に連絡が来たのはいつだっけ。いくら忙しいからって娘を一人にさせるなんてひどい。

でも、もう慣れた。一人でいる方が気楽だって思えてしまっているからだ。

私はいつものようにコンビニで夜食を買い家に帰ろうとした。

「やっぱりまだ二人から連絡来ないなぁ。レンたちにも一応メッセージを送っておこう。」 

メッセージを送ると私はふとミナのことを思い出し、少し家の前を通ろうと考えた。なんだったらチャイムを押して両親から私も話が聞きたい。

よく家に遊びに行くときに通ったこの道も懐かしい。家はなんとか覚えていた。

少し歩くとミナの家についた。 

家の電気がついていて中には両親がいるようだった。

そして私は一階の電気がついている窓を見ると誰かがこちらを見ている。 

「ミナのお母さんかな?」

私は通るだけのつもりが気づいたらインターホンを押していた。

ミナは今どうしているのか?どこにいるのか?もしかしたらもう家に居るんじゃないか?と考えながら誰かが出てくるのを待った。

(もしミナに会えたら今日レンとトオルに言えた様にまた『遊ぼう』って昔みたいに言おう。ミナならもちろん!って言ってくれる。)

ドアがゆっくりと開いた。出てきたのはミナのお父さんだった。

「あの昔ミナちゃんとよく遊んでいたティナです。ミナちゃんいますか?」

ミナのお父さんは私をじーっと怖い顔で睨むように一言つぶやいた。

『帰れ。』

「え…?」

「あの、私ミナちゃんと小学校の時によく遊んでいて家に何回もお邪魔したことがある星咲ティナです。怪しいものではありません。」

「ミナなんて娘はいない。お前は自分の立場がわかっているのか?まぁこんなことお前に話しても意味がないな。それより自分の心配をした方がいいぞ。母さん例のとこに電話しろ。」

「わかりました。」

(私は頭が真っ白になった。あんなに優しかったミナのお父さんがなんで…?)

(立場…?心配…?何の事…?それに例のとこに電話ってなに?)

「え…?え…?」

私は怖くなり、走ってその場から逃げた。

そして後ろから…

『おい待て! 逃げるな!』

って声が響き渡る。

怖さと震えを押し殺しながら走って逃げた。

ある程度走って逃げたその瞬間、目の前に一人の女性が私を待っていたかのように立っていた。

『ねぇ待って。あなたティナだよね?』

突然、その女性が私に話しかけてきた。

「はぁはぁ…。え?はい。そうですけど…すみません。私急いでるので。」

『ここから始まったっけ。そういえば。まるで昨日のように思える。この時は辛い、悲しい、怖いって感情がまだあったんだ。』

その人は一人でぶつぶつと言っていた。

すみません、私本当に急いでるので通してください。

『ねぇ…聞いてもいい?』 

『もし、世界が明日なくなったらあなたならどうする?』

「は?いきなりなんですか?」

『もしあなたの大切な友達、家族が明日いなくなったらあなたならどうする?』

『目の前で起こるすべてを受け入れることができる?』

「意味が分かんない。何が言いたいの? 」

『そっか。まだわからないよね。一つだけ教えてあげる。君は思ってるほど弱くないし頼れる仲間がいるってことを忘れないで。』

『もう同じ過ちを繰り返さないで。そして私を助けて。』

「え…?」 

女性は涙を浮かべながらも少し笑ったように見えた。

その瞬間、突然目の前が眩しくなり目が開けられなかった。 

気付いたら目の前には誰もいなくなっていた。

(見たことも会ったこともない人が私の名前を知っていた。)

「どうしちゃったんだろ私。幻覚…?」

(そうだ。きっと私は疲れているんだ。)

そう思いながら家に帰った。

冷めたお弁当、誰もいない静かな寂しい家。

ただ唯一の家族ペットのバニラが私をいつも慰めてくれる。

今はそれだけで幸せなのかもしれない。

私はいつもどおり、買ってきたお弁当を温め椅子に座り食べた。 

お腹は全く空いていない。 

今日は昔の親友に久しぶりに会って話せた。もう一度またやり直せるかもしれない。

【昔みたいに。】

そう考えると少しだけ気持ちが楽になった気がした。

そして今日あったこともちゃんと向き合って聞いてくれる友人だからこそ私は話そうと思う。

ミナの家に行ったときにお父さんが私に言ったあの言葉。なによりその帰りに現れたあの女性の言葉…。

一体なにが起こっているのか理解が追い付かない。

(レンとトオルならなにか知っているかもしれない。)

そう思い2人に連絡した。

すぐに連絡を返してくれたのはレンだった。

「ティナ今電話できるか?」 

私は出来るってすぐに返信した。するとすぐに電話がかかってきた。

「もしもし。」

「ティナ、今日学校に残っていなかったか?」

「え?授業が終わってすぐ学校をでたから残ってないけど。」

「やっぱりそうか…。」

「なにかあったの?」

「俺はトオルと学校に夕方までいたんだけど、ティナに似たやつが俺たちの前に現れたんだ。」

「私に似た…?それって私たちより年上の女の人?」

「ああ。最初はティナの姉ちゃんかと思ったけどいないよな?」

「うん。」

私は今日の帰りの出来事をレンにすべて話した。

「なるほどな。ってミナの家に行ったのか。意味不明だな。ミナの親父さんがそんなことを言うなんて…。それに俺らが会ったその女も変なことを言ってた。」

「なんて言っていたの?」

『ティナの助けになって。それからヒマリとイオリにもすぐにこのことを伝えて。時間がないの。そしてあの子を救って…。』 

「さっぱり状況がわからないままぼーっとしてしまっていた。俺たちが返答する間もなく眩しくなって気づいたらいなくなっていたんだ。」

「…。」

【もし世界が明日なくなったらあなたならどうする?】

【もしあなたの大切な友達、家族が明日いなくなったらあなたならどうする? 】

【目の前で起こるすべてを受け入れることができる?】

『おいティナ聞いているか? 』

『ごめん。聞いてる。』 

「その女性はレンたちに私の助けになってほしいって言っていたんだよね?」 

「しかもイオリ、ヒマリの事も知っているって。あの子って言うのが誰かわからないけど、助けを求めていたんだよね?」

「あ、ああ。なんのことかさっぱりわからないけどな。」 

「まぁ俺たちにわかることはその女性がティナに似てたって事と、何かウソではないなと感じたことかな。」

「トオルはなんて言っていたの?」

「それがさぁ、あいつ血相変えてその女性を追うようにそのあと学校を出て行ったんだよな。」

「そっか。トオルは何か心当たりがあって知ってるってことかもしれないね。」

「そういえばイオリとヒマリに連絡しても返ってこないんだけどなんでだろ? 」

「俺もずっと連絡しているんだけど返ってこないんだ。まぁ忙しいんだと思うけど。」

「そっか。とりあえず今日の事また何かわかったら教えて。私も何かあったらすぐ言うから。」

「おう 頼むわ。じゃあ、おやすみ。」

「うん。お休み。」

電話が切れた後、私はベッドに横たわった。 

疲れが一気に押し寄せてきた。

それと同時に頭の中が混乱している。

(私に似ている…?自分ではわからなかったけど昔から私を見ていたレンとトオルだから私だってわかった…?)

(でも私はここにいる。2人とは夕方には会っていない。 )

(それにミナのお父さんの言葉には私が何かした風に聞こえた。なにより、娘はいないって言葉。そんなわけがない。ミナはあのお父さんの娘。聞き間違いでも嘘でもない。じゃあなんであんなことを…?)

(私は何もしていない。何も知らない。ただミナに会いたかっただけ。)

『本当に会いたかっただけ?』

(なに?頭の中に声が…)

『本当はいなくて安心したんじゃない?』

(違う。もう一度話したかった。昔みたいに遊ぼうって。今度は私が励ましたかった。)

『本当は自分の事しかあなたは考えていない。ただの嘘つき。 助けてくれなかったくせに。』

【助けたかった…。】

『嘘つき。』

(え… 言ってない。助けを求められた覚えもない。それに誰なの…?)

私の頭の中で私と誰かが言い争ってるように聞こえた。

(きっと気のせいだ。こんな会話した記憶もない。今日いろいろあって疲れてるだけ。)

「そんなことあるわけがない。」

今日はテレビも見ず、ずっとベッドに寝転がっていた。

明日も学校があるけど行く気なんてなくなっていた。昔に戻った気分だった。そして私の体は震えていた。 

【私はバニラをぎゅっと抱きしめながら眠りについた。疲れといろいろあったのもあり思いの他すぐに眠りにつけた。】
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