私にもしてくれる?

文字数 1,207文字

ん……
目を覚ますと、そこは休憩室だった。まだバイト着のまま。

僕はびっくりして跳ね起きた。
あ……っ
瞬間、下腹に違和感。……まだおもちゃ入ってる。
(バイト中にイカされて、そのあとどうなったっけ?)
あら、起きた? どう? おもちゃでドライオーガズムを迎えた感想は。普通に射精するより何倍も気持ちいいって本当かしら?
お、おねーさんっ
お姉さんは上品な身なりには合わないボロい椅子に腰かけて、僕を見つめている。
なんでそこにいるんですか?
居たら悪い? レジ打ちの子をイカせたあとは、オマケのサービスしてくれるんでしょ? そういうルールあったわよね?
念を押されて、こくりと頷く。
は、はい……でも。
(じゃあお姉さんは、そのために僕が起きるのを待ってたの? 今までオマケのサービスなんて求めたことなかったのに)
お姉さんの手が伸びてきて、僕の体に触れようとする。

僕は反射的に、びくりと身を強張らせた。
ふふ。
ふいにお姉さんが笑う。

それはカウンター越しにいつも見る意地悪なものではなかった。
……冗談よ。ちょっとやりすぎたと思ったから、店長さんにお断りして様子を見させてもらったの。十分くらいで目が覚めて良かったわ。
あ、どーも……
わざわざそばについててくれたのかと思うと、ちょっと申し訳なくなってくる。もとはと言えば、確かにお姉さんのせいなんだけど。

改めてよく見ると本当に綺麗な人で、こうしているとドキドキした。
(あんまりちゃんと見たことなかった……いつも)
さいとう……
え?
ふいにお姉さんがつぶやく。その目は僕の名札に向けられていた。

平仮名で、名字だけ書かれている。
さいとう……なんて名前?
齋藤水樹(みずき)です。
名前まで可愛いのねー。
笑った表情にさらにドキドキ。
あ、ありがとうございます……
あたしの名前は、小野里翡翠(おのざとひすい)。覚えておいて。
は、はい。
翡翠……綺麗な名前。

初めて知った名前。ずっとただの意地悪なお客さんだったのに、名前を言い合っただけで、急に近くなったような気がするから不思議だ。

お姉さんは立ち上がり、業務用の冷蔵庫を開ける。中からビニール袋を取り出した。さっき買ったもの?
ナマモノもあったから、冷蔵庫をお借りしちゃった。
ナマモノ。

その単語をお姉さん……翡翠さんが口にすると、そういう意味じゃなくてもエロく聞こえてしまう。
じゃあね、またレジで。
あ……はい。
本当は、あんまりレジで会いたくないけど。

休憩室を出ようとして、ふいに翡翠さんは足を止めた。
ねえ、オマケのサービスあたしにもしてくれるの?
え、あ、えっ?
マヌケなくらい動揺してしまう。それって、翡翠さんとエッチなことできるってこと?

だけど何かを言う前に、その姿は休憩室の外へと消えていた。
翡翠さん……。
教わった名前を口にしてみる。

また彼女がレジに来るのを、少しだけ楽しみにしている自分がいた――。
えっち♥れじすたー(女の子用) Fin

原案:黒名ユウ
小説:あさみゆう

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登場人物紹介

紗美菜(さみな)さん

スーパーのレジ打ちのパートタイマー。

花園キリコ(はなぞのきりこ)

専門学校生のアルバイト。

齋藤(さいとう)くん

店長に言われ、女性従業員が多い中、レジ係にされた男の子。童顔だけど大学生。

吉村(よしむら)くん

近所の大学に通うスーパーの常連客。イケメン。

お姉さん

スーパーの常連。長い黒髪の美しい女性客。

佐和田(さわだ)さん

いつも半端な時間に買い物に来るお客さん。

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