聖女に嵌められそうなので逃げます!!

文字数 1,288文字

 グランタル王国にはある『儀式』が行われる。
 5年に1度に現れるとされている『聖女』にしか足を踏みいる事が出来ない『聖域』にある『大聖樹』に祈りを捧げるとその後の5年間は国は平和になる、と言われている。
 そんな聖域の入り口に私『ディアナ・ハルコニー』は立っている。
「ここまで来たら後戻りは出来ないわね・・・・・・。」
 リュックサックを背負った私は覚悟を決めた。
「これで死んだらそこまでよ。でも、聖女でない私が足を踏み込んだらこの国はどうなるか・・・・・・。」
 ゴクリと息を飲み私は紐で塞がれている入口をくぐり聖域へと足を踏み込んだ。
 心臓がドクンとなった。
 一瞬にして空気が変わった。
「・・・・・・何も起こらない。」
 シーンとした静けさが辺りを包み込んでいる。
 一歩一歩足を動かしていく。
 サクッサクッと草を踏む音だけが聞こえる。
「本当に誰もいないのね・・・・・・。警備もいなかったし・・・・・・、聖域なのに手入れもされていないし、これじゃあ儀式て言っても名ばかりね。」
 ランプを手にして私は前へ前へと進んでいく。
 森の中を進んで行くと、大きな木が目の前に現れた。
 これが大聖樹だろう。
 私は膝まずいて手を合わせた。
「守り神様、聖女ではない私が足を踏み入れた事をお許しください。私、家も国も捨ててこの聖域にやって参りました。この身を煮るなり焼くなり好きにして構いませんので此所に住む事をお許しください。」
 私はそう言った。

 何故、私はこんな事になってしまったのか。
 私は元々はこの国の公爵家に生まれた。
 普通の貴族令嬢として生きて来た運命が変わったのは5年前の事、私が12歳の時だ。
 聖女候補に選ばれたのだ。
 そこからは所謂『女の戦い』やら『家同士の争い』があったのだが私はほぼ蚊帳の外。
 何故なら我がハルコニー家は出世なんて興味無しの田舎貴族なのだから。
 それでも聖女候補になったのだからそれなりに頑張ってみた。
 結果、最終候補にまで残った。
 最終候補になれば聖女にならなくても聖女の補助役とかそれなりの地位が約束される。
 しかし、最近になって私の耳にある噂が飛び込んできた。
 実は聖女選定は出来レースで既に聖女は決まっている事、その聖女が私に苛めを受けた、と宣っているのだ。
 私は、自分で言うのもなんだけど、人付き合いは苦手だし、苛めるなんてとんでもない。
 しかも他の聖女候補とは必要以外は話さないし、どっちかと言うと私はいつも一人だった。
 しかし、聖女の言葉は絶対だし、否定する事は、国に逆らう事と一緒。
 でも、やってもいない事で断罪されるなんてまっぴらゴメンだし、親に迷惑をかけたくない。
 なので、私は逃げる事にした。
 逃げ場所として誰も来ない場所、という事で聖域に行く事にした。
 そこから準備を行い、今日実行した。
 一応、置き手紙を机に置いていった。
『自分の身は自分で片付けます。』
 そう書いた。
 人に寄って捉える意味は違って来るだろう。
 こうして私の聖域での生活が始まった。  
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