第20話「棒読みのスポーツマンシップ」(7)
文字数 1,637文字
「これはピンチです」
B組の待機所で、苦い顔をするライム。
彼女の当初の想定では、もう少し、優位に戦いを展開できるはずだった。
「A組の生徒がここまでなりふりかまわず戦うとは……予想外でした」
ライムの知るA組の生徒たちは、もっと無気力であり、自分たちが圧勝できないと知れば、「本気でやって辛勝」よりも「最初からやる気などなかった」という体裁にして、「無意味な敗北」を選ぶと思っていたのだ。
「互角の勝負になっている段階で、A組らしくないですね」
現在、得点はわずかに、B組が劣っている。
「ライムちゃん……どうしよう」
残り競技は、あと一つ。
「次の競技で勝てなきゃ、逆転の目はないよ」
「大丈夫です、最後の奥の手があります!」
心配そうに言うロッテに言うと、ライムは待機所の端っこにいる少女――ミシルティアを見る。
「あ、うう………」
ただでさえ、閉所恐怖症ならぬ広所恐怖症な少女である。
屋根も壁もない、校庭の一角にいるだけで、不安に潰されそうになっている。
「大丈夫かなぁ……ミシルティアちゃん」
その姿に、さらに不安になるロッテ。
「大丈夫です。信じましょう、クトゥー先生の底意地の悪さを……そして」
改めて、ライムはミシルティアを見る。
「うう……がんばる……」
震えながらも、ミシルティアはうなずいた。
それを見て、ライムは満足そうに頷いた。
「彼女を、ミシルティアを信じましょう」
実況席――真ん中にラーヴェルトをはさみ、クトゥーとステラ・リアは、次の競技の開始を待つ。
「ふふふ……最後の勝負、もらったわ」
「あン?」
不敵に笑うステラ・リアに、けだるげな声で返すクトゥー。
「正直あなたたちには驚いたわ。低級魔族の分際で、よくもまぁここまで食らいついたと褒めてあげる」
「ほう、そりゃ嬉しいねぇ……スマン嘘だ」
「……この!」
相手の神経を逆なでさせることに関しては、やはりクトゥーが一枚上手だった。
「その生意気な口もそこまでよ……最後の競技が何かは、わかっているわよね」
「おう、俺が作ったんだからな」
最後の競技、それは――障害物競走。
ただ走るだけの徒競走ですら、大爆発を起こしたクトゥーである。
種目名に「障害」と付いていたならば、どれだけのトラップが待ち構えているかは、わかろうというものであった。
「どうせ、底意地の悪いあなたが、その陰険な脳みそをフル回転させて作った罠が次々と襲いかかる……と言ったところでしょう?」
「ああ、そうだ」
「だから、こちらもとっておきを用意したわ……来なさい、タロース!!」
パチンと、ステラ・リアが指を鳴らすや、ドシン、ドシンと、地響きを起こし、何かが近づいてくる。
「これは……!?」
迫りくるそれを見て、ラーヴェルトが驚きの声を上げた。
「そう、真なる巨人の末裔よ!」
現れたのは、青銅の体を持つ、巨人であった。
「ほう、リアル・ゴーレムか……」
珍しものを見たというように、クトゥーはつぶやく。
ゴーレムと呼ばれるものは、二種存在する。
一つは、魔族なり人類種族なりの魔導師が、呪術的に生み出すもの。
それらは、魔導師の命令をひたすら実行する、虚ろなる魂なき存在。
そしてもう一つ、むしろこちらこそが本来のゴーレムであり、先述のゴーレムは、これを模倣しただけのまがい物と言われている。
それがリアル・ゴーレム。
古の昔、旧き神々が生み出した、鉱物の体を持つ、魂を持った生命体である。
「タロースの体は全身青銅。矢も毒も刃も炎も、一切通じない。いかなる障害も障害にならない!!」
「UOOOON!!!」
ステラ・リアの言葉に反応し、ガッツポーズをして意気を表すタロース。
「これで勝利はこちらのもの……」
「さぁて、それはどうかねぇ」
早くも勝ち誇るステラ・リアに、クトゥーはなにかを含んだ顔で返した。
そして、最終競技が始まる――
B組の待機所で、苦い顔をするライム。
彼女の当初の想定では、もう少し、優位に戦いを展開できるはずだった。
「A組の生徒がここまでなりふりかまわず戦うとは……予想外でした」
ライムの知るA組の生徒たちは、もっと無気力であり、自分たちが圧勝できないと知れば、「本気でやって辛勝」よりも「最初からやる気などなかった」という体裁にして、「無意味な敗北」を選ぶと思っていたのだ。
「互角の勝負になっている段階で、A組らしくないですね」
現在、得点はわずかに、B組が劣っている。
「ライムちゃん……どうしよう」
残り競技は、あと一つ。
「次の競技で勝てなきゃ、逆転の目はないよ」
「大丈夫です、最後の奥の手があります!」
心配そうに言うロッテに言うと、ライムは待機所の端っこにいる少女――ミシルティアを見る。
「あ、うう………」
ただでさえ、閉所恐怖症ならぬ広所恐怖症な少女である。
屋根も壁もない、校庭の一角にいるだけで、不安に潰されそうになっている。
「大丈夫かなぁ……ミシルティアちゃん」
その姿に、さらに不安になるロッテ。
「大丈夫です。信じましょう、クトゥー先生の底意地の悪さを……そして」
改めて、ライムはミシルティアを見る。
「うう……がんばる……」
震えながらも、ミシルティアはうなずいた。
それを見て、ライムは満足そうに頷いた。
「彼女を、ミシルティアを信じましょう」
実況席――真ん中にラーヴェルトをはさみ、クトゥーとステラ・リアは、次の競技の開始を待つ。
「ふふふ……最後の勝負、もらったわ」
「あン?」
不敵に笑うステラ・リアに、けだるげな声で返すクトゥー。
「正直あなたたちには驚いたわ。低級魔族の分際で、よくもまぁここまで食らいついたと褒めてあげる」
「ほう、そりゃ嬉しいねぇ……スマン嘘だ」
「……この!」
相手の神経を逆なでさせることに関しては、やはりクトゥーが一枚上手だった。
「その生意気な口もそこまでよ……最後の競技が何かは、わかっているわよね」
「おう、俺が作ったんだからな」
最後の競技、それは――障害物競走。
ただ走るだけの徒競走ですら、大爆発を起こしたクトゥーである。
種目名に「障害」と付いていたならば、どれだけのトラップが待ち構えているかは、わかろうというものであった。
「どうせ、底意地の悪いあなたが、その陰険な脳みそをフル回転させて作った罠が次々と襲いかかる……と言ったところでしょう?」
「ああ、そうだ」
「だから、こちらもとっておきを用意したわ……来なさい、タロース!!」
パチンと、ステラ・リアが指を鳴らすや、ドシン、ドシンと、地響きを起こし、何かが近づいてくる。
「これは……!?」
迫りくるそれを見て、ラーヴェルトが驚きの声を上げた。
「そう、真なる巨人の末裔よ!」
現れたのは、青銅の体を持つ、巨人であった。
「ほう、リアル・ゴーレムか……」
珍しものを見たというように、クトゥーはつぶやく。
ゴーレムと呼ばれるものは、二種存在する。
一つは、魔族なり人類種族なりの魔導師が、呪術的に生み出すもの。
それらは、魔導師の命令をひたすら実行する、虚ろなる魂なき存在。
そしてもう一つ、むしろこちらこそが本来のゴーレムであり、先述のゴーレムは、これを模倣しただけのまがい物と言われている。
それがリアル・ゴーレム。
古の昔、旧き神々が生み出した、鉱物の体を持つ、魂を持った生命体である。
「タロースの体は全身青銅。矢も毒も刃も炎も、一切通じない。いかなる障害も障害にならない!!」
「UOOOON!!!」
ステラ・リアの言葉に反応し、ガッツポーズをして意気を表すタロース。
「これで勝利はこちらのもの……」
「さぁて、それはどうかねぇ」
早くも勝ち誇るステラ・リアに、クトゥーはなにかを含んだ顔で返した。
そして、最終競技が始まる――