その8 修道院へ行け!のエロティシズム、その清潔感

文字数 1,924文字

で、じつはその"To be or not to be"の後に「尼寺へ行け!」がそのまま直結してるんですね。
尼寺やめない? ヨーロッパに尼寺、ないから。やたらに日本っぽくするの良くないと思うんだよ。アクア・ヴィタエaqua vitaeを「焼酎」って訳してあったりすると、ほんとがっかり。アクア・ヴィタエ、焼酎じゃないから。ブランデーやウィスキーだから。芋臭くないから。

だね。では改めまして、“To be or not to be”からの「修道院へ行け!」のシーン。原作はこう。だいぶ違う。

『ハムレット』第三幕第一場←click here!

で~す~が~、ここはw
何w
だってイナホーの絵が上がってきたら(注:サラでは朗読のときに絵をスクリーンに映して見せています)、
オフィーリアがw
何w
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オフィーリア、巨乳なんだもん!
(きっぱり)巨乳です。
でもそうなんだよね。ぜったいそうなんだよ。細くても巨乳なんだよ。だけど本人には自覚がないんだよ。だからああいう展開になるんだよ。イナホーの絵のおかげで、ああそういうことか!ってわかったんだ。
オフィーリアっていうと、なんかもうすごいピュアな少女っていうか、子どもっぽかったり、スレンダーだよね、演じる女優さんもたいてい。だけどそれじゃ成立しないんだ。スレンダーでも巨乳はマスト。
(きっぱり)マストです。
たんにイナホーの趣味じゃなくてねw
(まじめに)そう。
そういう、本人は無自覚だけど、もう見るからに柔らかくてさわりごこちよさそうで、男を狂わせていくっていう、それ『オセロー』のデズデモーナもそうだよね。子どもっぽいデズデモーナなんてだめだよね。
(きっぱり)だめです。なんでかっていうとね。おれオセローも演らせてもらったけど、オセローがロリコンじゃおれはイヤだ。オセローはスーパーヒーローなんだよ。
そうね。私も好き。ものすごくいい男よね。で、デズデモーナはペットやトロフィーじゃなくて、そのオセローをちゃんと受けとめられる度量のある女性なんだよね、若くても。デズデモーナは妻なだけじゃなくて、ソウルメイトなの、オセローの。その彼女を失ったと思うから、オセローの世界は崩壊するので、ペットやトロフィーなら次のを探せばいいわけだから。
ハムレットはオセローよりずっと若いけど、やっぱりオフィーリアがただのお人形ちゃんだと、ハムレットがバカに見えてしまう。と私は思う。
そうそれ。
オセローもハムレットも、ただの性欲だけの男じゃない。精神的なものを求めてる。なのに、デズデモーナやオフィーリアがなまじさわりごこちがよさそうだから、動揺するんじゃないのかな。それでね、さらに悲劇なのは、彼女たちはそのことに無自覚なのね。
そうだね。
私、初めて『ハムレット』読んだとき、このオフィーリアをどなるシーンと、後で出てくるお母さんをどなるシーンで引いちゃって、ハムレット嫌いになりかけたのよ。浅かった。ハムレット、動揺してるんだよね。そう考えるといじらしい。自分が人を殺すか殺さないかで悩んでるのに、なんか目の前にすごく柔らくておいしそうなものが出てきてw
そう。だから過剰に攻撃的になる。
「ええい、その乳をしまえ!」っていうww
ザチョーほんと男ww
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てか西洋人、基本巨乳だしな!
そうなの! 私ドイツにいたことあるんだけど、ドイツ人の小学生おとなの私より胸ある!!
がーん!!!!!
イナホーがショック受けないでよ。あたしの立場ないでしょ。
でさ、話戻すと、オフィーリアこういうヴェールつけてるわけだけど。(服飾事典のイラストを指す)
おおー。
当時こういう修道女っぽいヴェールが流行ったらしくて。額の折り返しの部分にきれいな刺繍があったりするんだけど、金とか。
いやこれは絶対やばいでしょ!!!!!
オフィーリアは肌を隠してるつもりなんだけど、逆効果というか、逆効果絶大でしょ。
鼻血ぶーじゃない?ww
「こ、これがいけねえんだよこれがあ!!」
(注:『探偵物語』の財津一郎のものまね)←いやそれもう知らない人多いでしょ!
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まあ、そういう言語では語らないわけで、ハムレットは。それをすごくきれいな言葉で語るわけで。エロティシズムはあるんだけど、清潔。
なんていうか、ダイアモンドってようするに炭素でしょ。シェイクスピアのことばは難しいから、翻訳の際にいったんダイアモンドを炭素に分解する作業は必要だと思う。だけど、その分解した炭素のままで舞台にかけないでほしい。そういうの本当かんべんしてほしい。もう一度ダイアモンドに戻してほしいわけ。
なんかきゅうにテンション高いこと言ってるよw
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登場人物紹介

宮﨑稲穂(みやざきいなほ/イナホー)

俳優。シアターユニット・サラ専属。旗揚げから全作品に出演し、現在に至る。名前だけ見て女子と間違われることがあるが、男性。居合道六段、剣号「宮﨑哲舟」(てっしゅう)。


実村文(みむらあや/ザチョー)

劇作家・演出家。ときどき女優。シアターユニット・サラ主宰。NOVEL DAYSでは未村明(ミムラアキラ)名義で執筆。

イナホー

ザチョー

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