第7話 知らなかった生活

文字数 1,395文字

映画は一時間程度で終わった。

日本ではわたしはほとんど映画を見たことがなく、ハリーポッターを一度見たことがあるぐらいだ。映画館にほとんど行ったことがなかったわたしにとって、天井が見えないほど高い映画館の暗室で、同じ部屋に何百人いるのかわからない空間で英語の映画を見るというのはとても新しい感覚だった。

外に出るとまだ日は高い位置にあったが、先生は映画館で解散としたようで、クラスメートのほとんどが駅に向かって歩き出した。

どうやらこの映画館の近くには使ったことこそないが、もう一つの街の中心地に近い駅があるようで、そこから電車に乗れば家の最寄駅へは朝来た電車と同じ電車で帰れるようだ。

わたしは映画館の敷地内を出たところで立ち止まってAlexandraにメールを送る。

“I went to excursion and I am at station in city.”

Alexandraからすぐに返信が来る。

“Ok. See you at the station.”

Alexandraからは学校帰りに最寄駅で落ち合うように朝の時点で言われていた。
電車駅の改札に向かう道中にあるバスターミナル横の車を短時間停められる所定位置で待っているよう、詳しく指定されている。改札を出て、元来た道を戻れば難なく出会えるだろう。

わたしは電車に乗るために券売機を確認した。朝降りた駅とは一駅離れただけで、乗る時間は数分しか変わらない。切符の値段も同じだ。

切符を朝と同じように買うと改札を通る。しかしここからが大きく異なって、今度は大きい駅なのでホームがいくつにも分かれている。わたしは朝来た電車の表示は青色の丸だった。青い丸を探していると、どうやらこの駅には青い丸で表示される電車が三つあるようだ。おおよそこの電車だろうと当てはつけらるが確かではない。

改札に一度戻って駅員に最寄駅名を伝えると、一番線ホームだという。想像した通りだった。
わたしは改札から一番離れた一番ホームまで歩いていき、エスカレーターに乗ってホームへと上がった。エスカレーターを上がってもまだホームはトンネルの中だった。

今回は最終駅ではないので電車は止まっていなかった。その代わり電子時刻表が点滅しており、3分程度で次の電車が来るよう表示があった。

わたしは乗る電車の方向を間違えないように、何度も一番ホームであることを確認して、ホームの真ん中あたりまで歩いた。

たしか朝電車に乗り込んだ時、階段はホームの真ん中あたりに配置されていたように記憶しているからだ。

電車に乗ると今回はほとんどガラガラで、立っている人は誰もいなかった。席は二階にあるので二階まで階段で登り、登りきった一番手前の席に座った。左斜め前にはサンドイッチを食べている男の子が座っており、だいぶ前方には黒人女性が音楽を聴いているのが見える。車両に乗っているのは三人だけのようだ。

電車が発車して、またトンネルの中を走り出した。しばらく窓の外を眺めて視界が開けないか確認したが、一度も太陽光を見ることはなかった。
二駅が過ぎたところで諦めて、カバンを前に抱えて頭を下ろした。次からは電車に乗る際に何かすることを考えた方が良い。寝るには短すぎる時間だし、外の景色も見られないので面白みがない。週末にでも近くに本屋がないか見に行ってみよう。そんなことを考えていると、終点駅である最寄駅に到着した。
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