『その話いつまでしてんだよ』の営業【前編】

文字数 946文字

どうも〜。お疲れ様です〜。

またお前か……
やだなあ、そんな露骨に嫌な顔しないでくださいよ。ほらお土産の赤福。
はいはい、どうもね。で、今日はどんな本持ってきたの?
いきなり本題ですか? もっと世間話とかしましょうよ。オリンピック見てました? スケートの高木菜那選手めっちゃかわいくないですか?
いいから早よ出せ。でなければ帰れ。
もー、わかりました。本日ご紹介するのはこちらです!


NovelJam2018出場作品『その話いつまでしてんだよ』

……ふーん。
いかがですか?
いや、どういうもんなのか説明してよ。うちら本屋は配置とかポップの工夫ぐらいしかできないけど、君らは口で説明する余地があるんだから喋ってよ。
ですよね! すいません! こちらはNovelJamという合宿イベントで創作された作品なのです。
合宿〜?
はい!
何泊の?
2泊です!
たった2泊3日で書いたってこと?
そうです! すごくないですか?
すごいのかもしれんけどうちじゃお断りだわ。
ええっ! なぜ?
お前脳みそ入ってんのか? 即興に値段がつくなんてプロのジャズ奏者ぐらいだよ。同じ金出して買うならじっくり時間かけて書かれたもの選ぶに決まってんだろ。
なるほど!
しかもこの著者、完全に無名じゃん。池袋演劇祭で大賞取ったとか言ってるけど、一般人はそんなローカルイベント聞いたこともねぇんだよ。
うう、おっしゃる通りです。
「①無名の新人が」「②即興で」書いた小説をお前はどうやって売ろうと言うわけ?
面白いです! 読めばわかります!
バカヤロウ! クソが! 何年この業界やってんだ!
ひええ〜。まだ半年です。灰皿を投げないでください。
「読めばわかる」ってのが最悪なんだよ! 世の中に本なんて腐るほどあるんだぞ。その中からどうやって手に取ってもらうかって話をしてんだろうが。
すいませんでした……
で? さっきの①と②を跳ね返す魅力はあるのか?
実はですね。
おぅ。
③もあります。
死にたいのか?
待って! 灰皿を構えないで!

正直に言います。そのNovelJamというイベントでは16冊の作品が発表されて、うち8作品が審査員の賞を取ったのですが、この『その話いつまでしてんだよ』は「③何の賞も取っていない」のです。

お前はなんでわざわざそういうこと言っちゃうんだよ……
後編に続きます!
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登場人物紹介

営業さん。趣味は旅行。

本屋さん。趣味は蕎麦屋で一人酒。怒ると灰皿を投げる。

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