詩小説『貨物列車』3分で日常の衝撃を二股された人へ

エピソード文字数 1,127文字

貨物列車はkoto₋koto。
笑えないよな事情を乗せて。
橋を渡るよ、隣の町まで。
残ってる景色。あと味は悪い。

貨物列車はding₋dong。
訳あって、重いです。
お乗り換え。後釜で。二番煎じで。
「私、二股されてるの」だってさ。

 部屋まで入って来たクセに、聞き飽きたような恋愛相談は、まだ続きますか?
 悲劇のヒロインぶった台詞、まだ吐きますか? 慰めりゃ、妬いてりゃ、いいですか?
 肩にもたれたいのですか? 肩を押して欲しいのですか? どちらにせよ、僕は肩を落とします。

 貨物列車はkoto₋koto。
 線路は軋むよどこまでも。
 隣の芝生へ、放ったらかしの花、咲いてました。

 貨物列車はding₋dong。
 溢れるくらいの水で、過保護に育てたのに、無理矢理蕾をこじ開けて、花を咲かそうとしてました。

「きっぱり、すっきり、別れるよ」と、君の言葉に何度期待したことだろう。
 部屋の隅で丸くなる君の、言葉にまた期待しながら冷蔵庫を開けた。
 水を取り出し飲み干すと、マグネットで貼られたレシピのメモ。
 元彼の大好物が得意料理に化けたのだと考えては、期待を絶望に変えている。

 貨物列車はkoto₋koto。
 僕の事情も、運賃230円。
 ムキになってるだけだとしても。

 貨物列車はding₋dong。
 馬鹿は死んでも治らない。
 憎いと好きは同じ箱の中に。

「アパートに荷物取りに来てって、元彼に言われた」なんて。「これから、取りに行きます」なんて。
 どこまでこの女は馬鹿なのだろうと、呆れてしまっている。思わず笑っている。
 それが元彼の口実だと知らずに、今会ってしまえば終わるどころか、始まってしまう。
 部屋からの声、背中で聞いた。ベランダで吹かせば煙は消えたよ。丁度煙草を切らしたところさ。
 ここで待ってろと。俺が行くからって。舌打ちついでに結露したドアを開けた。

 貨物列車はkoto₋koto。
 追いかけるより、追われたい。
 発車のベル、慌てて乗り込む。

 貨物列車はding₋dong。
 振り回されるより、振り回したい。
 最終駅を待たずして降り立つ。

 玄関から見える部屋は生活感が漂っていて、この部屋に彼女の匂いもあると思うと、痛くなる。
「新しい恋人が出来た元カノに、家に来いなんて非常識だ。どういうつもりだ」って。
「何? じゃないだろ、荷物を貰いに来たんだ」って。
 なんて痛い立ち位置なんだと。羨ましすぎて、蹴り飛ばしてしまいそうだった。紙袋は地面に落ちた。そしたらお前はこう言った。
「何、騙されてんだ。二股してんのはあの女。俺とお前はされてる方」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック