2020年4月25日

文字数 1,679文字

2020年4月25日
 西洋政治理論の伝統においてもっとも古くからある課題の一つが僭主、すなわち独裁者の防止である。トマス・アクィナスによると、僭主は社会の分断を利用して権力を獲得・維持する。僭主はその共通善の継承よりも私的利得を追求する。「正義」ではなく、「気まぐれ」に従って統治するため、無法が到来、人々は安堵感を失ってしまう。僭主は社交や協調を禁止、人々の相互信頼を奪う。人間関係はその信頼に代わり依存や服従へと堕落する。人々は恐怖政治の下に置かれ、卑屈になり、有徳に生きられなくなってしまう。

 ドナルド・トランプ米大統領はまさに僭主である。彼は社会の分断を煽って対立させ、それにより権力基盤を強化している。『NHK』の2020年4月25日10時37分更新「『消毒液を注射』トランプ大統領の発言が波紋 新型コロナ」によると、この僭主は今度次のような事件を起こしている。

アメリカのトランプ大統領は新型コロナウイルスに感染した患者への治療方法をめぐって「消毒液を注射してみてはどうか」などと発言し、これに対し医師や専門家からは「危険だ」として批判する声が相次ぎ、波紋を呼んでいます。
トランプ大統領は23日の記者会見で新型コロナウイルスに感染した患者への治療方法をめぐって「紫外線か非常に強い光を体内にあててみてはどうか。また、消毒液はあっという間にウイルスに効くようだ。注射したりできないものだろうか。興味深いと思う」と述べました。
この発言に対し、医師や専門家からは消毒液の注射は体の機能に深刻な悪影響を及ぼすおそれがあり危険だとして批判する声が相次いでいます。また、消毒液を製造するメーカーも消毒液を注射したり、摂取したりしないよう呼びかけるなど波紋を呼んでいます。
この発言についてトランプ大統領は翌日の24日、ホワイトハウスで記者団から問われると「あなたのような記者に対して、皮肉を込めて質問しただけだ」と釈明しました。
トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、国民に説明するためとしてほぼ毎日、記者会見に臨んでいて政権の対応について多岐にわたる質問にこたえ、会見が2時間を超えることも少なくありません。
ただ、24日の記者会見では「消毒液の注射」には言及しなかったほか質問も受け付けず、会見は20分ほどで打ち切られました。
保健当局「どんな状況でもあってはならない」
トランプ大統領が新型コロナウイルスの治療法として消毒液の注射に言及したことについて、アメリカでは各地で問い合わせが相次いでいます。
このうち東部メリーランド州では緊急通報用の電話番号に100件以上の問い合わせが寄せられたということで、州の保健当局はツイッター上に「消毒に関連した製品が注射などの方法で体内に投与されることは、どんな状況でもあってはならない」として注意を呼びかけています。
また、発言について野党・民主党のバイデン前副大統領は、ツイッター上に「アメリカ国民の健康をジョークのネタにすべきではない」と投稿し、トランプ大統領の発言を批判しています。

 トランプ大統領はしばしば科学を無視した言動をする。ただ、本気で信じていないかはわからない。科学は近代において最も普遍的とされる知識である。それは人々の間で共有しやすい。この科学を無視する態度はこうした共通理解を破壊する。それは社会を分裂させ、保身を図る独裁者の手口である。だから、独裁者の判断が往々にして合理性を欠く。

 夕食はカルボナーラ、ジャガイモのターメリックヨーグルトサラダ、野菜サラダ、キュウリとちくわの梅和え、キノコスープ、食後はコーヒー、干し柿。ウォーキングは10285歩。都内の新規陽性者数は103人。

参照文献
山岡龍一、『西洋政治理論の伝統』、放送大学教育振興会、2009年
「『消毒液を注射』トランプ大統領の発言が波紋 新型コロナ」、『NHK』、2020年4月25日10時37分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200425/k10012405341000.html

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