いつつめ

文字数 901文字

「よっつめだ」
私の言葉に隣を歩いていた遙が首を傾げる。
「何が?」
「さっきので変な現象が、よっつめ。七不思議なんて聞いた事無かったけど」
もしかしたら自分が知らないだけなのかもと思った時、開いていた窓から校庭の音が聞こえてきた。
放課後の部活動。
窓からよく見えるトラックを走っているのは陸上部だろうか。
何人かがまとまって、ぐるぐると走っている。
そこを遙が指差した。
「あ、ほら、あそこ」
その方向を良く見てみると、走っている人間の中におかしなのが混ざっていた。
一人だけ、首が無い。
あれ、前見えてるのだろうか。
「毎日ずっと走ってて、いつの間にか一番早くなってるの。凄いよね」
彼女が感心した様子で窓枠に頬杖をつくと、走り終えた一番モテそうな男子が汗を拭きながら、チラチラとこちらを見ていた。
でも視線の先に居るのは、まだトラックをぐるぐる走っている首無しだという事実に少し気の毒になる。
「近くに行ってみようか」
ちょっと助け船をと思った私の言葉に、遙が一瞬目を見開いてから、笑った。
「じゃあ、外に出ないとね」
首無しが見られる事のどこがそんなに嬉しいのか分からないが、少し機嫌が良くなったのが分かった。
足早に昇降口の方へ歩き出すその後ろをゆっくりとついていくと、さっき遥を取り囲んでいた三人組の一人が異様に不機嫌な顔で現れた。
真ん中に居たボスだ。
後の二人は帰ったのだろうか。
ボスは私の存在を無視して、遥に言葉をぶつける。
「あんたなんか何も見えないくせに」
いや、いきなり過ぎて意味が分からないし、見えて無いのはそっちだし。
呆れる私の前で遥は明らかにめんどくさそうな顔をした。
「今忙しい。後にして」
しかし、相手は何故か怒りの色を見せながら、立ち塞がる。
「近くには行かせないから」
え、首無しの?。と思った瞬間。
頭をよぎるさっきの陸上部。
もしかしてあれが、ボスが遥に絡む理由。でも、確実に勝負にはならないだろうと言う言葉を辛うじて飲み込んだ。
「あんたにはこれから一番凄い物を憑けてやるから!」
ボスは叫ぶように言うと、遥の腕を乱暴に握り、引きずる様に歩きだした。
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