最期の晩餐

エピソード文字数 356文字

 女は馬鹿じゃない。
 人生が走馬灯のように駆け巡る――仕事でうまくいかなかった日は、妻に殴る蹴るの暴行を加えつづけてきた。俗に言うDV夫だ――おれはまったく最低野郎だ。

 だが、彼女はすばらしい料理人だ。
 おれの期待を裏切ったことは一度もなかった。
 その日その日を生きていくのが、やっとにもかかわらず……

「あなた、おかえりなさい。お風呂にします? それともご飯にしますか?」
「もう腹がペコペコで死にそうだ! 飯だ、飯だ!」
「まかせてちょうだい」

 妻はにっこり微笑んで頼もしげに答えた。
 台所に立つ女性の背中の美しさを改めて知った。
 香ばしい匂いが部屋中に広がった。
 
「はい、おまたせ」
「いただきまーす」


 そして、おれの大好物のカレーライスが最期の晩餐となった……。


 

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