新顧問登場
文字数 1,220文字
「玲奈!莉子!西崎!部活行こ!」
俺たちを呼ぶ声の主は山内菜々だ。
自己紹介の後、連絡先を交換した俺たちはそれぞれが家に帰ってから結構夜遅くまでSNSで話した。
まあ色々な話をしたのだが、その話の中で一番驚いたのは、菜々も莉子も玲奈も地元の強豪中学校の出で、それぞれ二つ名がついていたことだ。
それぞれ本人達は把握していたらしいが、恥ずかしくて言えなかったとのこと。
たしかに、中二病心をくすぐられる名前だなと思う。
ちなみにうちの中学はそんな技量のレベルではなかったので、俺にもそういうのは一切関係がなかった。そういう面ではすこしうらやましいっ...!
他にも、自分たちが吹奏楽部で何がしたいのか、とか沢山話し合った。
おかげさまでもう仲良しだ。
「みんな楽器持った?行こ!」
各々期待に胸を膨らませ部室へとむかう。
~移動後、音楽室~
昨日より明らかにパート毎での仲が深まったのか、話し声が目立つ。
「お~!みんな来たね!!こっちこっち~~」
真由子先輩が手を振って合図してくれたおかげで難なく見つけられた。
どうやら今日は新顧問の挨拶のようで、練習前に部員全員参加のミーティングが開かれた。
「おはようございます!昨日はパートごとで親睦は深められましたか?
さて、今日は新しい顧問の先生がいらっしゃる日です、失礼のないような態度でいましょう。」
という部長の声掛けに
— はい!
と部員たちの威勢のいい声が響く
ドアの開く音がする、顧問が来た。
入ってきたのは男だった、平均的な日本人男性といったような見た目だった。
その人は教室をぐるっと見渡して正面を向くと
「これで全員か?」
と一言
「はい、とりあえず新入生と2,3年生、これで全員です。」
「そうか、ありがとう。では、自己紹介をしよう。」
そう言うと黒板に名前を書き始めた。
「私の名前は香川晃平だ、少し前までは作曲家をしていたが今は休業してこっちの仕事をしている。」
と、手を振るジェスチャーをする。教師のつもりか、それとも指揮者なのか。
部員(特に2,3年)がざわつく。
イケメン!とかなんとか、しかし鹿野先輩はなにやら驚いた様子だった。
「この人、とってもすごい人だよ。作曲家としてはコンクールで何度も優勝してるし、今でもたくさんの吹奏楽部が演奏するような曲を描いてる。教師?としてのほうは去年から始めてて、前年度の学校でも吹奏楽部で指揮を振ってて、その時は全国大会に出場してるの。」
鹿野先輩はそう言った。
—なるほど、凄腕なのね。
生野先輩が呟いた。
先生が教卓の前に立つ
「さて、ここの皆に聞きたいことがある。」
場が静まり、全員の注目が教卓へ向かう。
注目の主はニヤリと笑い、こう言った。
「君たちが掲げる目標はなんだ、その内容によっては私がそこに連れて行ってやる。」
ざわざわと疑惑の波が広がる、どうやらここから始まるらしい。
俺たちの青春が。