【episode3-暗がりの魅惑】
文字数 320文字
彼のことを愛している。
沙楽は、嘘偽りのない気持ちでそう言い切れる。
だがそれは、ある一定の条件を除いてであった。
結婚と離婚を繰り返し、今も別のパートナーと深い仲にある魁人。
決して近づいてはいけない。
頭ではわかっていても、魁人から連絡があると途端に沙楽の心は揺れてしまうのである。
そして、まるでブラックホールのように口を開ける魁人のもとに吸い寄せられていくのだ。
樹にバレないように名前を変えた魁人からのメッセージを、沙楽の指がそっと撫でる。
『ズルイ人。でも好き。』脳裏に、そんな言葉が
そして、また今日も魁人からの通知を心待ちにしている自分に気づくのである。