第5話(9)

エピソード文字数 1,348文字

 見間違いじゃあ、ない。育月がいる所に歩いてきてるのは、アイツだ。

「……あのレディーススーツの女性、見覚えがあるわね。どこだったかしら……?」
「『遠見』で、攻撃的な一族を見た時。じゃあないよね?」
「…………肯定も否定も出来ないわ。行きましょうっ」
「ああっ!」

 俺達はすぐさま駆け出し、俺は女の進路を塞いだ。
 とりあえず、こうしておけば大丈夫。育月に近づけないこの位置で、聴取をするとしよう。

「あら、貴方は。ワタシにピーマンを売ってくださった……」
「色紙育月の、従兄だよ。アイツに何の用だ」

 育月の防御はシズナに任せ、用心しつつ女を直視する。
 コイツは、育月がここにいるとわかっていた。只者ではない。

「答えろ! お前は何をしに来たんだ!!
「…………貴方は、そうですね。貴方になら問題はありませんし、むしろ好都合です」
「独りで意味不明なこと言ってるんじゃねぇよっ。お前は何をしに来たんだ!」

 宣告しての、来訪。何が目的なんだ。

「ワタシは、ですね。色紙育月さんに、報告をしに来たのですよ」
「ほう、こく……? なんのだよ!」

 俺は今迄以上に身構え、喉を激しく震わせる。
 普通じゃないヤツが、普通の地球人に伝えること。一体なんなんだ……?

「新進気鋭のピーマン生産者ランキングで、暫定1位になった。ワタシは、この報告をしに参ったのですよ」


                  へ?


 ピーマンの、生産者ランキング?

「申し遅れました、従兄さん。ワタシはこういう者です」
「ぇ、あ、はい。どうも」

 押し花がついた名刺を差し出されたので、受け取って見てみる。んーと…………


《ナンバーワン出版 ナンバーワン担当 担当NO1 壱市(いちいち)イチ》


 とにかく、『いち』が多い名刺だった。

「ぇ? 出版社の、方? 危険なヤツじゃ、ないの?」
「ええ、ワタシはただの会社員です。その証拠に半年前の事なのですが、黒真レミアさん達と会社でお会いしていますよ」
「にゅむっ、にゅむむんっ。そーいえば、あの節はお世話になりましただよーっ」
「私も思い出したわっ」(この人は別の次元で各部門のナンバー1を決める本を作っていて、その時は全次元1の魔法使いとして取材を受けたのよ!)

 おぃ、ざけんなよマジで。オメーのせいで余計な心配をしたじゃねーか。

(色紙優星さんにも、いずれ取材に伺いますよ。貴方は、全次元最強決定戦のチーム部門を制していますから)
(へぇ~、そうなんですかっ。それっていつ頃になりますかねぇ?)

 本に載ったら、『俺強い』が一層早く広まる。『俺強い』が一層早く広まると、賢長族みたいなのも増えてくるかもだけど――多くはビビる!
 いつかな~いつかな~? 取材はいつかなぁ~?

(来年の、3~4月になりますね。今年は4年に1度の全次元冬季オリンピックが開かれる年で、この年は終了後に『全次元特集特別号』という形でまとめて本になるんですよ)

 はい、それだと口コミで広まる方が早いですね。きっとこれがシズナさんが仰ってた『とある本』で、この特別号のせいでネットで公開できないんですね。
 どうもありがとうございました。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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