第73話  蓮と華凛は従兄妹 1

エピソード文字数 4,599文字

 ※


 目が覚めると、既に聖奈はいなかった。


 朝方、出て行ったのをなんとなーく覚えているが、そのまま寝ちまったからな。


 スマホを確認すると、既に十時じゃないか。

 聖奈を寝かしつけるつもりが、逆に俺が安眠してどうすんだ。


 

 そしてラインには聖奈のコメントが一つ。

また時間があったら夜に行くから

 こりゃ俺のスキルに満足して頂けたのだろうか?

 

 まぁ別にお前なら、いつ来てくれても構わんし、やってくれと言うのなら拒絶したりしない。



 入れ替わり人間だと納得して、それを承知で仲良くしてくれるのなら、リミットもクソも関係無いからな。

 いつでも家に来ればいいさ。

ただし。今日来た時間だと蓮になっちまう可能性がある。

事前に分かれば、ずっと楓蓮でいられるようにするから

 あいつは楓蓮の方が良さそうだからな。

 それに蓮で添い寝する場合、色々と問題が出てくるから。

どっちでもいいわよ

 速攻返って来た返事に「はやっ!」と突っ込んでしまった。


 どっちでもいいのはお前の都合だろ? 

 俺は俺で非常に困るんだよ。

そして、この謎スタンプは何なんだ?

 あいつの好きなクマが顔を真っ赤にして「LOVE」と書かれたプラカードを持ってるんだが。



 これに対し、俺は何て返答すればいいのか謎過ぎて、とりあえずは《また来いよ》と返事するに留めた。


 こーいうのは、下手に突っ込んではいけない気がする。   

 

 ※ 



 さて、日曜日は完全オフの日である。


 バイトも無ければ誰とも会う予定は無いし、出かけるつもりもない。今日は一日ゆっくりさせて貰おう。



 そんな日は創作活動に時間を費やすとしよう。。


 今もパソコンで自作小説の続編を書きながら、ユーチューブの作業用BGMを聞いていた。

最新話読みましたよぉ。急展開ですね。バトル開始しちゃうの?
 白竹さんのラインである。早速読んでいただいてありがとうございます。滅茶苦茶嬉しいっす。
ですね。未来人同士の初バトルです。ここから本格的な戦いが始まります。続きは今日の夜には投稿しますよ
楽しみに待っておられまする
期待に応えられるよう頑張りまする

 創作活動におけるモチベーションは、感想で左右されるといっても過言ではない。


 自分の作品を読んでくれているという事が、どれほど嬉しいものなのか。これは書き手にならないと分からない感情だろう。



 昨日、スマホに着弾していた一枚絵。


 それは神絵師であるみゅうみゅうさんが書いた、俺の小説の主人公をじっと見つめる。

マジすげぇ……素晴らしすぎる

 俺が想像した通りの主人公の姿を書いてくれた白竹さん。

 何度見ても、鳥肌が立ちっぱなしです。


 うぉ~~! 今日は一日篭って小説を書き上げねば。


 


 という訳で俺のワンダーランドへ旅立とうとしたその時、部屋をノックする音がしてから「おに~ちゃ~ん」と聞こえてくる。




 椅子から立ち上がりドアを開けると。凛がスマホを持って立っていた。


お兄ちゃん。女の子になっていい?
ん。いいけど。どうしたんだ?

たまには女の子でお出掛けしたい。お兄ちゃんも一緒に行こうよ。

お姉ちゃんになって!

う~ん……
 只今昼過ぎ。一時か。


 昨日の夜から男になっていたので、恐らく四時間制限はないだろう。入れ替われるとは思うのだが……

 でもな、この時間に女に入れ替わるのは本当に面倒くさいんだ。

もう少し待てよ。二時間半くらい
い~き~た~い!
 参ったな。創作活動に時間を使いたいが、凛にせがまれると弱いお兄ちゃんであった。
分かった。でも俺はそのままでいいか?
うん! お兄ちゃんのままでもいいよ

 そうさせて貰おう。こんなに早く入れ替わると、サイクルが狂ってしまう。

 この時間から楓蓮になると、絶対にもたない。


 この前みたいに、寝てリミットをずらす方法を取らないといけなくなるからな。




 俺にとって【午前十一時ごろから、午後二時くらいまでに楓蓮になると】翌日の学校へ行くサイクルに支障をきたすので、あまり入れ替わりたくないのである。



 と言う訳で、俺は蓮でお出掛けしよう。

準備してくるね。わ~い

 凛はスタタタっと自分の部屋に向かう。


 

 何を散歩如きで喜んでるんだ? って思われるかも知れないが、俺には凛の気持ちが良く分かる。



 普段なら、女の姿で日の目を見ることが少ないからだ。

 日中はずっと男だからな。たまには女で外が明るいうちに出掛けたいのだろう。


 

 それに華凛はまだ小さいから、俺が夕方からは出かけるなと言ってある。

 仮にも女の子の姿だし、何かあっては困るからな。

おい。早くしろよ
まってよぉ……どっち着て行こうかな
また服で悩んでいるのか。 まぁ楽しそうだから良しとしよう。
でも。僕は今から変わっても大丈夫なんだよね?
あぁ。お前はいける。夜寝るまで華凛でも平気だろ?
ってか。凛。そろそろ入れ替わりサイクルを自分で把握できるようになれよ
 聞いてねぇな。服を選ぶのに夢中じゃねぇか。

 

 これが聖奈だったら絶対怒られるぞ。そんときゃ俺は知らねーからな。



 ※



駅前に行きたいよ。色々あるでしょ?

ゲームセンターも行ってみたい!

そうだな。どうせなら見て回るか

 華凛とお出掛け。俺は蓮という珍しい構成である。



 でかい交差点を通り過ぎ、喫茶店、呪われたコンビニを過ぎて五分ほど。道路の先に見えるのは、この街の駅である。

わぁ。こんなとこにマグマグあったんだね
ここの事だったのか。俺も知らなかったな

 ファーストフードの店である。マグマグは学校の話題でも良く出てくるからな。まぁ俺は放課後遊べないので、行った事無かったが、こんな場所にあるとは。


 この前遠方組で行った場所と反対方向だな。


 こんな場所にあるのなら、高校生達の溜まり場になるのも頷ける。



 更に進むと、駅の横にある大きな建物の入り口前まで来ていた。全国何処にでもあるような、食料品やら雑貨から何でも揃うようなスーパーだった。

ここに入る

いいけど、あんま金持ってないぞ

 華凛の好きなようにさせようと思った。

 勝手にスーパー内を散策する妹の後を付けていくと、ファッション関係の場所で立ち止まっていた。

あぁ。これ可愛いね。リボンついてる

 お前さ。マジで女の子になっちまったのか? 


 しかも、女性モノの下着コーナーに入っていくと、やたら表情が真剣になってやがる。

こっち。こっち
はいはい

 しまった……こんな事なら楓蓮で来るべきだった。

 男である俺が、そんな場所に行ったら恥ずかしいじゃないか。

今度、聖奈お姉ちゃんがメイクの仕方教えてくれるんだ
お前も言われてんのか? マジかよ

 あいつ。マジで黒澤家の人間を女にしようとしてるんじゃないのか?


 

 今度は薬局に来ると化粧品コーナーで立ち止まる華凛。

 

でも、どれがいいのか分かんないね
俺も全然分からん。何が良くて、何が違うのかさっぱり分からん

 あぁ。俺もこんな物を買わなきゃいけない年頃なのか。

 そう思うと何だか気分が滅入ってくるぜ。

 


 俺は男なのに……その内やらねばならんのだろう?

 マジでかったりい。


 そういう意味では、何もしなくていいガキの頃の方がよっぽどマシだと思うのであった。  


 結局何も買わずにスーパーの別の入り口から出ると、ショッピングモールのような場所に出た。


 あれ? ここって遠方組のみんなで歩いた場所だぞ。

 じゃあこの先の二階にゲーセンがある場所じゃないか。

なぁ華凛。この先にゲーセンがあるから行ってみるか?
待って! あそこ! ペットショップ?

 なに? 


 華凛が指差す方向に見えるのは、確かにペットショップぽい店舗に、犬の鳴き声が聞こえてくるではないか。

お兄ちゃん。あそこがいい!
そうだな。俺も興味があるぞ。そっちに行こう
 俺達はマイブームであるペットショップに吸い込まれると、早速ゲージの中にいるわんちゃんの前に群がった。
華凛。この種類だ。おぉ~~ここのわんちゃんも可愛いじゃないか
ほんと? 十万円って書いてあるよ。そんなの貰えるの?

 マジで十万円かよ。

 坂田さんは本当に……高価なわんちゃんをタダでくれるというのだろうか。

本人が良いって言ってくれたからな。でも何だか悪いような気がするよな

 もう俺の話聞いてねーだろ。

 ミニチュアダックスフンドに夢中な華凛はガラス越しにへばりついていた。

  

 ちなみに、坂田さん家のわんちゃんは毛の色はクリームっぽかったな。

 もう一匹は……面白いんだぞ。目の周りだけ茶色でパンダみてーだった。確かチョコタンだっけ。

なぁ華凛。どうする? クリームちゃんかチョコタンと、どっちがいい?
どっちも欲しい!

 欲張りな奴め。と言いたい所だが、俺もぶっちゃけ二匹欲しいと思ってる。


 そりゃお世話が二倍になるのは分かってるが、なんつーか、俺達の都合でせっかくの家族がバラバラになってしまうのは、何となく気が引けるというか。

何か買って帰ろうか。わんちゃんが来る前に
うん!

 華凛も俺もご機嫌であった。まだわんちゃんも飼って無いのに、ペットフードやら玩具やらを見て回る。


 そろそろ名前を決めなきゃな。


 とりあえず、さんりんぼうと仏滅よりも縁起が良い名前にしてあげないと。 


なんだか待ち遠しくなるよな。
ねぇ。早く貰いに行こうよっ!

 二人で悩みまくった挙句、犬の玩具と小型犬のペットフードを買いペットショップを後にするのであった。


 ※




 ショッピングモールを突き当たりまで行くと、駅の反対側へ出たようだ。

 今度は道路を隔てて見えたのが、シネマとかかれた看板と大きな建物。

あぁ~ここか

 映画館もあるのは知ってたが、駅の反対側だったのか。そりゃ気付かないだろう。


 巨大なテレビに映るのは、最新アニメの宣伝だった。

 お、あれは最新ジプリじゃないか。もう映画で上映始ったんだな。


 などと思っていると、華凛が無視するわけもなく、映画館の傍まで来る。

無理だぞ。俺もジプリは見たいけど
えぇ~~?
すまん。さっきのペットショップで使わなければギリギリ見れたかもしれん
来週にしよう。親父が金送ってくれるから
……うん分かった。絶対だよ?
あぁ絶対約束な

 俺もジプリは好きだし、ぶっちゃけ俺も見たい。


 国民的なアニメだし、面白いのは間違いない。それに俺の創作活動の資料になるかもしれないし、金があったら俺が逆に誘ってるから。

じゃあどうする?
お兄ちゃん。ちょっと疲れた
は? じゃあ帰るか?
ううん。どこか座りたい
 そう言うと俺の腰に巻きついた華凛は「おんぶ」とか抜かしやがる。
ちょっとくらい我慢しろよ。とりあえず歩けよ
何で? おんぶしてよ
おいおい。何言ってるんだよ。今の俺は男だぞ
 こんな公衆の面前で、女の子をおんぶなど出来るか! 


 楓蓮だったら別に気にしないだろうが……

しんどい。足疲れたよぉ
 なんつー弱いヤツなのだ。散歩して一時間くらいだぞ。

 とうとう座り込む華凛。そろそろ周囲の目が痛い。




 観念した俺は背を向けて座り込もうとする――その時だった。 


 

あれ? もしかして黒澤君?

 全く予想しない場所から、俺の名前を呼ぶ声がした。

 その声に振り返ると、そこに立っていたのは……



 染谷君だった。

 その姿は高校の制服でもなく、喫茶店のようなジャージ姿でも無く、普通の高校生よろしくカジュアルな格好だった。
あれ? その子は……?

あのくっそ可愛い子は……間違いない。楓蓮さんの妹じゃねーか!


その妹ちゃんと黒澤くんが……なぜ?

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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