第31話 ラプラス(妖精)
文字数 3,728文字
見知らぬ壁や天井、恐らくまた別の転生者のところに来たのだろうか。
ミーナさんがあんなことになるなんて、転生者というものはなんなんだ。
でも今は、目の前にいる帝国四英雄の一人、モーガンさん達の話しを聞こう。
また、何か真実が分かるかもしれない。
そして俺が今いる場所は宮殿や船の中と違い、外を見ると、木々が広がっており、森で聞くような鳥たちが音を奏でていた、恐らくどこかの森の深いところにある都市の宿屋だろう。
彼はテーブルに置かれた水晶のようなもので映し出されていた誰かと話していた。
「バートランド、ミーナとは交信ができないがなんかあったのか。
魔王軍の噂ではミーナがリンネになって魔王軍幹部モードレッドと刺し違えたと聞いているんだが」
彼と話していたのは、四英雄で唯一、帝国に残っているカムイ・バートランドさんだった。
「ーー魔王軍で出回っている情報ですか。
にわかに信じられない話しですけど」
「で、王様が連絡しているとは聞いたがなんて言っている」
「ーーミーナさんはクラレントに現れたリンネを倒せたのですが、重傷を負いその都市で療養しているとのことです。
だけど、都市自体も犠牲者はいないですので今はゆっくりと、そこで休ませるとのことを言っていましたね」
嘘だ、俺が彼を通して見たものは彼女はリンネになって、それを倒すためにモードレッドさんが命を捨てて倒し、都市クラレントもかなりの人が死んだ。
なぜ、バートランドさんはそんなことを言ったのだろうか。
ドガッ
それを信じたのか、ムスッとしていたモーガンさんの口元は少し緩み、テーブルの前にあったイスにリラックスするように座り足を組んだ。
「なんだ、やっぱり魔女英雄と呼ばれているだけのことはあるじゃねぇかよ」
「ーーあまり彼女を責めないで欲しい。
彼女もイガルク大陸の件と言いそれなりに頑張ってくれてたから」
「あぁ、それぐらい分かってるぜ。
そしたら、しばらくそっとしておくか。
俺は引き続き、ここでイガルク大陸の魔獣の動きをみている。
だがそれよりもな」
すると、モーガンさんはイスに座りながら深く考え込むように腕を組んだ。
「ーーあぁ、そうだね。
鉄鉱都市ヤグルシ、塩湖都市アイムール、草原都市ティルウィングを崩壊させ、ラウを殺害したリンネの速やかな討伐も頼む。
この地域にもリンネの魔力反応が出たから」
「暴食のリンネ、暴食聖域という奴を倒さない限り、外側からも内側からもマギアを使っても破れない結界を使う魔獣の王、罪の獣。
多分、イガルク大陸の魔獣よりも面倒なことになりそうだな」
「ーーあまり情報も少なくてすまない。
だがリンネがいることは確実だから、よろしく頼む」
「あぁ任せてくれ、でもその代わり帝国の兵士は連れて行かないからな、ヤツが強すぎて被害が甚大になりかねないから」
「ーーそれもそうだね。
ありがとう、モーガンさん。
リンネも討伐し、この件が解決したら、また魔王軍とともに交えてこの帝国をより良いものにしよう」
「まぁ、そんな簡単に行くかな、俺たち裏切ったようなものだからな。
それにしても、お前もあまり無理するんじゃねえぞ。
元気がなさそうなのはいつものことだが、お前、最近なんか体調が悪かったり、記憶が無くなったりするんだろう」
「ーーいや、まったく王に役職を交代したのに情けないと言うところだ」
「それとメシも食っているのか。
俺が書いていた料理のメモ帳があったはずだが、ちゃんと料理長に渡したんだろうな」
「ーーあっ、いや。
後で渡しておきますので」
「はぁ、渡していなかったのか、体を大事にしないと肝心なときに動かなくなるぞ」
「ーー本当にすまない、アナタにはいつも心配かけてしまって」
待っていると、会話の声は聞こえなくなった。
話しは終わったのだろうか、先ほどまで映し出された水晶はただの透明な球になった。
「まぁ、人からは刀剣英雄と呼ばれているカムイ・バートランド、ちょっと抜けているがあれは本当の英雄だ」
モーガンさんは誰かに向けてそう話すとイスから立ち上がり、こちらを向き睨みつけてきた。
見えているんだ。
「それで、お前は一体、何者だ」
「俺はマコトという名前の転生者です」
ブンッ
すると突然、腰にかけていた銃を向けてきた。
「それで何の用だ」
まだ大丈夫だ、この人は話しは聞いてくれるはずだ。
ここで怯んで何も話さなかったら、ラウさんのように俺の言葉は本当でも嘘のようになってしまう。
ミーナさんのことを伝えないと。
「俺はアナタに伝えたいことがあってきました」
体を震えさせながらもなんとか話すことができた。
「はっ?
どういう意味だ」
「転生者なら、アナタに真実を話さないといけないと思ったから。
ミーナさんのことも」
「ミーナのことだと?
そうかなら言ってみろ」
すると、彼は向けていた銃口を腰にしまい、腕を組んだ。
「転生者とリンネは同じなんです」
「やはりお前は俺をだまそうとしているのか」
「いや、彼の言っていることは真実だよ」
すると、どこからか白い翼を持った妖精のラプマルが後ろから話しかけて来た。
「ラプマル、生きていたんですか」
俺は彼が生きていることに喜びを隠しきれず、持ち上げながらスキップした。
「オイラの体は使い捨てだからね、いくらでも代用が効くから」
「ラプマル、それでどういう意味だ、転生者とリンネは同じだということは?」
そして、俺はラプマルを下ろすと彼はニッコリとした満面の笑みで答えた。
「言った通りさ、転生者は元いた世界で死ぬことでこの世界に降り立つことのできた存在。
そして、その転生者は時間が経つことによってリンネに成長する。
君たちの世界の言葉で表すと、転生者はリンネに進化する」
「なぜそんなことをしやがった」
いまいち、意味が分からなかったが、モーガンさんは顔を歪ませながら、怒りで体を震わせながら立ち上がり、彼に詰め寄った。
「いやいや、オイラがしたことではないよ。
オイラはただこの世界の生物の観察などをしているだけだから。
転生者のことなら全て王様が知っているから」
「へぇ、王様に責任を押し付けるとは、面白えじゃねぇか。
その言い方だとこのこと自体を知っているようだし、むしろこの状況に満足しているな、お前!!!」
そう言われた彼は、一瞬の間もなく即座にうなずき話し始めた。
「そうだとも、オイラはこの星の生物たちを観察してどのような進化をするのかを見届ける者なんだから。
転生者というマギアによって作られた不老の生物がそれだけで終わらずに新たなる成長をして進化を続け不老不死の生物リンネになるということを確信できたのだから。
君たちは誇ると良い、生物として一段階、上の存在になれるのだから」
「ラプマル、なぜ、今そのことを話したの」
「なぜ、今そのことを話したのかって君たちが知りたいと思い、尋ねたからこそその望みをかなえたまでさ。
オイラはずっと君たちの味方だよ。
それとマコトも約束したじゃん、オイラは君が疑問に思ったものは全て教えるって」
そしたら俺は分からないが、もう一人のマコトは、リンネになるかもしれないって言うことだよな……
バァーンッ
パラパラ
ラプマルの背後の壁に数発の弾丸が打ち込まれた。
モーガンさんがまるで鬼のような顔をして、怒りの声で話した。
「あんまり調子に乗るなよ、状況を分かっているのか。
さっさと立ち去れよ、このクズ野郎が」
「じゃあ、オイラはこれで。
また何か困ったことがあればよろしく」
ラプマルは一回、頭を下げて窓のほうから出ていき、何処かに飛び去って行った。
ラプマルがいないことを知ると、彼はイスに座り、自分の服にしまっていたアメ玉を数個無言で噛みくだいていた。
ガリッガリッ
「ごめんなさい、まさかこんなことになるなんて」
そう言うと、モーガンさんは俺にもアメ玉も数個渡して先ほどのイスに座るように勧めた。
俺が座ると、少し落ち着いたのか話し始めた。
「まぁ、どの世界も案外そんなものなのかもしれねぇな。
まったく勘弁してくれよ、だが俺たちが今やらないといけないことはリンネにならないことだよな」
「でも、どうすれば」
「恐らく俺たちだけでは避けられない、ヤツも知らないようだし、直接王に尋ねるしかないか」
「そしたら、さっきの連絡で」
「いいや、知られないほうがいい」
「どうしてですか?」
「もしかしたら、そのことは王も知っている可能性が高い。
いいや確実に知っている。
お前の言う通りなら、暴食のリンネも転生者のはずだ。
王は、それを話したことは無いし、ミーナの死を隠したことに何かしらの意味があるはず。
だから、知られると先手を打たれるかもしれない」
確かにそうかもしれない、でも一体どうすれば。
あっ。
そう思った瞬間、片方の手を見ると、光の塵状になって消えかけていた。
もう俺の存在がいつものようにここから消えるのか。
「ごめんなさいモーガンさん、俺は……」
「そうか、魔力反応が弱くなっているようだし、帰るところに帰るのか。
だがありがとうマコト、お前の答えが無ければこの事実すら知らなかったのだから。
また、お前とも会いたいよ」
そうか分かってくて信じてくれた俺の言葉を、とんでもない事実を知ってしまったけど、まだ希望は残っていると俺は信じていたい。
そして、俺はその場から存在を消した。
ミーナさんがあんなことになるなんて、転生者というものはなんなんだ。
でも今は、目の前にいる帝国四英雄の一人、モーガンさん達の話しを聞こう。
また、何か真実が分かるかもしれない。
そして俺が今いる場所は宮殿や船の中と違い、外を見ると、木々が広がっており、森で聞くような鳥たちが音を奏でていた、恐らくどこかの森の深いところにある都市の宿屋だろう。
彼はテーブルに置かれた水晶のようなもので映し出されていた誰かと話していた。
「バートランド、ミーナとは交信ができないがなんかあったのか。
魔王軍の噂ではミーナがリンネになって魔王軍幹部モードレッドと刺し違えたと聞いているんだが」
彼と話していたのは、四英雄で唯一、帝国に残っているカムイ・バートランドさんだった。
「ーー魔王軍で出回っている情報ですか。
にわかに信じられない話しですけど」
「で、王様が連絡しているとは聞いたがなんて言っている」
「ーーミーナさんはクラレントに現れたリンネを倒せたのですが、重傷を負いその都市で療養しているとのことです。
だけど、都市自体も犠牲者はいないですので今はゆっくりと、そこで休ませるとのことを言っていましたね」
嘘だ、俺が彼を通して見たものは彼女はリンネになって、それを倒すためにモードレッドさんが命を捨てて倒し、都市クラレントもかなりの人が死んだ。
なぜ、バートランドさんはそんなことを言ったのだろうか。
ドガッ
それを信じたのか、ムスッとしていたモーガンさんの口元は少し緩み、テーブルの前にあったイスにリラックスするように座り足を組んだ。
「なんだ、やっぱり魔女英雄と呼ばれているだけのことはあるじゃねぇかよ」
「ーーあまり彼女を責めないで欲しい。
彼女もイガルク大陸の件と言いそれなりに頑張ってくれてたから」
「あぁ、それぐらい分かってるぜ。
そしたら、しばらくそっとしておくか。
俺は引き続き、ここでイガルク大陸の魔獣の動きをみている。
だがそれよりもな」
すると、モーガンさんはイスに座りながら深く考え込むように腕を組んだ。
「ーーあぁ、そうだね。
鉄鉱都市ヤグルシ、塩湖都市アイムール、草原都市ティルウィングを崩壊させ、ラウを殺害したリンネの速やかな討伐も頼む。
この地域にもリンネの魔力反応が出たから」
「暴食のリンネ、暴食聖域という奴を倒さない限り、外側からも内側からもマギアを使っても破れない結界を使う魔獣の王、罪の獣。
多分、イガルク大陸の魔獣よりも面倒なことになりそうだな」
「ーーあまり情報も少なくてすまない。
だがリンネがいることは確実だから、よろしく頼む」
「あぁ任せてくれ、でもその代わり帝国の兵士は連れて行かないからな、ヤツが強すぎて被害が甚大になりかねないから」
「ーーそれもそうだね。
ありがとう、モーガンさん。
リンネも討伐し、この件が解決したら、また魔王軍とともに交えてこの帝国をより良いものにしよう」
「まぁ、そんな簡単に行くかな、俺たち裏切ったようなものだからな。
それにしても、お前もあまり無理するんじゃねえぞ。
元気がなさそうなのはいつものことだが、お前、最近なんか体調が悪かったり、記憶が無くなったりするんだろう」
「ーーいや、まったく王に役職を交代したのに情けないと言うところだ」
「それとメシも食っているのか。
俺が書いていた料理のメモ帳があったはずだが、ちゃんと料理長に渡したんだろうな」
「ーーあっ、いや。
後で渡しておきますので」
「はぁ、渡していなかったのか、体を大事にしないと肝心なときに動かなくなるぞ」
「ーー本当にすまない、アナタにはいつも心配かけてしまって」
待っていると、会話の声は聞こえなくなった。
話しは終わったのだろうか、先ほどまで映し出された水晶はただの透明な球になった。
「まぁ、人からは刀剣英雄と呼ばれているカムイ・バートランド、ちょっと抜けているがあれは本当の英雄だ」
モーガンさんは誰かに向けてそう話すとイスから立ち上がり、こちらを向き睨みつけてきた。
見えているんだ。
「それで、お前は一体、何者だ」
「俺はマコトという名前の転生者です」
ブンッ
すると突然、腰にかけていた銃を向けてきた。
「それで何の用だ」
まだ大丈夫だ、この人は話しは聞いてくれるはずだ。
ここで怯んで何も話さなかったら、ラウさんのように俺の言葉は本当でも嘘のようになってしまう。
ミーナさんのことを伝えないと。
「俺はアナタに伝えたいことがあってきました」
体を震えさせながらもなんとか話すことができた。
「はっ?
どういう意味だ」
「転生者なら、アナタに真実を話さないといけないと思ったから。
ミーナさんのことも」
「ミーナのことだと?
そうかなら言ってみろ」
すると、彼は向けていた銃口を腰にしまい、腕を組んだ。
「転生者とリンネは同じなんです」
「やはりお前は俺をだまそうとしているのか」
「いや、彼の言っていることは真実だよ」
すると、どこからか白い翼を持った妖精のラプマルが後ろから話しかけて来た。
「ラプマル、生きていたんですか」
俺は彼が生きていることに喜びを隠しきれず、持ち上げながらスキップした。
「オイラの体は使い捨てだからね、いくらでも代用が効くから」
「ラプマル、それでどういう意味だ、転生者とリンネは同じだということは?」
そして、俺はラプマルを下ろすと彼はニッコリとした満面の笑みで答えた。
「言った通りさ、転生者は元いた世界で死ぬことでこの世界に降り立つことのできた存在。
そして、その転生者は時間が経つことによってリンネに成長する。
君たちの世界の言葉で表すと、転生者はリンネに進化する」
「なぜそんなことをしやがった」
いまいち、意味が分からなかったが、モーガンさんは顔を歪ませながら、怒りで体を震わせながら立ち上がり、彼に詰め寄った。
「いやいや、オイラがしたことではないよ。
オイラはただこの世界の生物の観察などをしているだけだから。
転生者のことなら全て王様が知っているから」
「へぇ、王様に責任を押し付けるとは、面白えじゃねぇか。
その言い方だとこのこと自体を知っているようだし、むしろこの状況に満足しているな、お前!!!」
そう言われた彼は、一瞬の間もなく即座にうなずき話し始めた。
「そうだとも、オイラはこの星の生物たちを観察してどのような進化をするのかを見届ける者なんだから。
転生者というマギアによって作られた不老の生物がそれだけで終わらずに新たなる成長をして進化を続け不老不死の生物リンネになるということを確信できたのだから。
君たちは誇ると良い、生物として一段階、上の存在になれるのだから」
「ラプマル、なぜ、今そのことを話したの」
「なぜ、今そのことを話したのかって君たちが知りたいと思い、尋ねたからこそその望みをかなえたまでさ。
オイラはずっと君たちの味方だよ。
それとマコトも約束したじゃん、オイラは君が疑問に思ったものは全て教えるって」
そしたら俺は分からないが、もう一人のマコトは、リンネになるかもしれないって言うことだよな……
バァーンッ
パラパラ
ラプマルの背後の壁に数発の弾丸が打ち込まれた。
モーガンさんがまるで鬼のような顔をして、怒りの声で話した。
「あんまり調子に乗るなよ、状況を分かっているのか。
さっさと立ち去れよ、このクズ野郎が」
「じゃあ、オイラはこれで。
また何か困ったことがあればよろしく」
ラプマルは一回、頭を下げて窓のほうから出ていき、何処かに飛び去って行った。
ラプマルがいないことを知ると、彼はイスに座り、自分の服にしまっていたアメ玉を数個無言で噛みくだいていた。
ガリッガリッ
「ごめんなさい、まさかこんなことになるなんて」
そう言うと、モーガンさんは俺にもアメ玉も数個渡して先ほどのイスに座るように勧めた。
俺が座ると、少し落ち着いたのか話し始めた。
「まぁ、どの世界も案外そんなものなのかもしれねぇな。
まったく勘弁してくれよ、だが俺たちが今やらないといけないことはリンネにならないことだよな」
「でも、どうすれば」
「恐らく俺たちだけでは避けられない、ヤツも知らないようだし、直接王に尋ねるしかないか」
「そしたら、さっきの連絡で」
「いいや、知られないほうがいい」
「どうしてですか?」
「もしかしたら、そのことは王も知っている可能性が高い。
いいや確実に知っている。
お前の言う通りなら、暴食のリンネも転生者のはずだ。
王は、それを話したことは無いし、ミーナの死を隠したことに何かしらの意味があるはず。
だから、知られると先手を打たれるかもしれない」
確かにそうかもしれない、でも一体どうすれば。
あっ。
そう思った瞬間、片方の手を見ると、光の塵状になって消えかけていた。
もう俺の存在がいつものようにここから消えるのか。
「ごめんなさいモーガンさん、俺は……」
「そうか、魔力反応が弱くなっているようだし、帰るところに帰るのか。
だがありがとうマコト、お前の答えが無ければこの事実すら知らなかったのだから。
また、お前とも会いたいよ」
そうか分かってくて信じてくれた俺の言葉を、とんでもない事実を知ってしまったけど、まだ希望は残っていると俺は信じていたい。
そして、俺はその場から存在を消した。