第15話 ドヤ顔の管理職
文字数 1,850文字
(15)ドヤ顔の管理職
武たちは管理職のおじさん風の役小角と対面した。
お菊さんは「ご無沙汰しております」と役小角に挨拶している。
「知り合いなの?」武はお菊さんに小声で尋ねた。
「もちろん。行者様に最後にお会いしたのは500年前くらいだったかしら?」
お菊さんが言ったのに役小角が反応した。
「500年前か。もうそんなに経つか・・・」
役小角はしみじみと言った。
「それくらいですよ。私は400年間ほど姫路にいましたから」
「知っておるよ。播州皿屋敷伝説だな?」
「よくご存じですね。地球にはよくいらっしゃっていたのですか?」
「年に数回は行っている。お主がこの惑星にいるということは、皿屋敷伝説は終わったのか?」
「ええ。ちょうど昨日終わりました。千秋楽を終えて東京に来たのですが、ゲートがあったので久しぶりに戻ってきました」
「そうか。そちらはお主の子か?」
「違いますよー。この子は山田武くんと言って、私が皿屋敷伝説を辞めるのを手伝ってくれました。いまは武くんのボディーガードをしています」
「そうか。前鬼から聞いたのだが、その子も原子操作ができるのか?」
「そうなんですよー。さっき教えたところなのに、テロリストを倒すくらいに使えるようになったわ。師匠として嬉しいですよー」お菊さんは嬉しそうに言った。
お菊さんが武のことを紹介したので、念のために自分からも自己紹介をした。
「はじめまして。山田武です。地球に住んでいる10歳の小学生です」
「原子操作ができる地球人は珍しいな」と小角は言った。
「電子も操作できるよ。試したら感電したけどね」
「そうか。なかなか才能があるな」
小角はそう言うと、黙って何かを考え始めた。
役小角が反応しないのでお菊さんは尋ねた。
「どうしましたか?」
「ああ、すまん。部下と通信中だった。ちょうどいまピーチ・ボーイズの情報が入ったのだ。アジトが分かったようだ。これも君たちのお陰だ」
「それは良かった」
「ピーチ・ボーイズが逃走するかもしれないから、捕獲しに行かねばならないのだが・・・」
「だが?」お菊さんは小角に聞いた。
「人手が足りなくてな・・・。警察には科学者がいないから、無理に突入すると甚大な被害を受けるかもしれない。国境警備隊の科学者も出払っている」小角は自分の苦労を語った。
「人手不足ですかー。どこも大変ですね」お菊さんは呑気に言った。
「そこで、ピーチ・ボーイズの捕獲を手伝ってもらえないか?」
小角は急に本題に入った。
「えー、嫌ですよー」お菊さんは即座に断った。
ピーチ・ボーイズの捕獲を手伝っても何もメリットがない。
小角は少し考えてから、お菊さんに「条件は何だ?」と聞いた。
「条件は特にありません。私は武くんのボディーガードをしているから、危ないことに関わりたくないだけです」とお菊さんは答えた。
小角はお菊さんを物で釣れそうにないことを悟った。
だから、小角は狙いを武に絞った。
「それでは武くん。何か欲しいものはあるかな? 何でも言ってくれ」
武はしばらく考えてから答えた。
「うーん。この惑星のことを知りたいから、入国許可証みたいなのがあったら欲しいな」
「入国許可証か・・・。発行できなくはない。でも条件がある」小角は言った。
「何が条件?」と武は小角に尋ねた。
「ピーチ・ボーイズの捕獲を手伝ってもらえないか?」
武が「いいよ」と言いかけた瞬間、お菊さんが大声で「ダメー!」と叫んだ。
お菊さんは役小角を睨んでいる。
「行者様、子供を物で釣るなんて最低ですよ。クズな人間のやることです!」
「仕方ないだろう。それに武くんも乗り気のようだし・・・」小角はお菊さんに食い下がる。
「ダメです!」
小角の『子供を物で釣る作戦』は失敗したようだ。
仕方ないから、小角は別の作戦を進めることにした。
「じゃあ仕方ない。武くんが破壊したビルの損害賠償を請求させてもらうことになるな・・・」
小角は『金で解決する作戦』に舵を切った。
「あれは前鬼を助けるための被害です。人命よりもお金を優先するのですか?」お菊さんは小角にモラルを問うた。
「人命を軽視しているわけではないが、ビルを壊さなくてもピーチ・ボーイズは倒せたのではないか?」小角はそれでも食い下がる。
「あのビルはテロリストの銃撃で相当な被害が出ていました。それに武くんが壊した証拠はありませんよね?」
小角はニヤリとしてタブレットを差し出した。
タブレットには武がビルを破壊しているシーンが映しだされている。
ドヤ顔の管理職のおじさん。
そこには浮世絵に出てくる修行僧の雰囲気はなかった。
武たちは管理職のおじさん風の役小角と対面した。
お菊さんは「ご無沙汰しております」と役小角に挨拶している。
「知り合いなの?」武はお菊さんに小声で尋ねた。
「もちろん。行者様に最後にお会いしたのは500年前くらいだったかしら?」
お菊さんが言ったのに役小角が反応した。
「500年前か。もうそんなに経つか・・・」
役小角はしみじみと言った。
「それくらいですよ。私は400年間ほど姫路にいましたから」
「知っておるよ。播州皿屋敷伝説だな?」
「よくご存じですね。地球にはよくいらっしゃっていたのですか?」
「年に数回は行っている。お主がこの惑星にいるということは、皿屋敷伝説は終わったのか?」
「ええ。ちょうど昨日終わりました。千秋楽を終えて東京に来たのですが、ゲートがあったので久しぶりに戻ってきました」
「そうか。そちらはお主の子か?」
「違いますよー。この子は山田武くんと言って、私が皿屋敷伝説を辞めるのを手伝ってくれました。いまは武くんのボディーガードをしています」
「そうか。前鬼から聞いたのだが、その子も原子操作ができるのか?」
「そうなんですよー。さっき教えたところなのに、テロリストを倒すくらいに使えるようになったわ。師匠として嬉しいですよー」お菊さんは嬉しそうに言った。
お菊さんが武のことを紹介したので、念のために自分からも自己紹介をした。
「はじめまして。山田武です。地球に住んでいる10歳の小学生です」
「原子操作ができる地球人は珍しいな」と小角は言った。
「電子も操作できるよ。試したら感電したけどね」
「そうか。なかなか才能があるな」
小角はそう言うと、黙って何かを考え始めた。
役小角が反応しないのでお菊さんは尋ねた。
「どうしましたか?」
「ああ、すまん。部下と通信中だった。ちょうどいまピーチ・ボーイズの情報が入ったのだ。アジトが分かったようだ。これも君たちのお陰だ」
「それは良かった」
「ピーチ・ボーイズが逃走するかもしれないから、捕獲しに行かねばならないのだが・・・」
「だが?」お菊さんは小角に聞いた。
「人手が足りなくてな・・・。警察には科学者がいないから、無理に突入すると甚大な被害を受けるかもしれない。国境警備隊の科学者も出払っている」小角は自分の苦労を語った。
「人手不足ですかー。どこも大変ですね」お菊さんは呑気に言った。
「そこで、ピーチ・ボーイズの捕獲を手伝ってもらえないか?」
小角は急に本題に入った。
「えー、嫌ですよー」お菊さんは即座に断った。
ピーチ・ボーイズの捕獲を手伝っても何もメリットがない。
小角は少し考えてから、お菊さんに「条件は何だ?」と聞いた。
「条件は特にありません。私は武くんのボディーガードをしているから、危ないことに関わりたくないだけです」とお菊さんは答えた。
小角はお菊さんを物で釣れそうにないことを悟った。
だから、小角は狙いを武に絞った。
「それでは武くん。何か欲しいものはあるかな? 何でも言ってくれ」
武はしばらく考えてから答えた。
「うーん。この惑星のことを知りたいから、入国許可証みたいなのがあったら欲しいな」
「入国許可証か・・・。発行できなくはない。でも条件がある」小角は言った。
「何が条件?」と武は小角に尋ねた。
「ピーチ・ボーイズの捕獲を手伝ってもらえないか?」
武が「いいよ」と言いかけた瞬間、お菊さんが大声で「ダメー!」と叫んだ。
お菊さんは役小角を睨んでいる。
「行者様、子供を物で釣るなんて最低ですよ。クズな人間のやることです!」
「仕方ないだろう。それに武くんも乗り気のようだし・・・」小角はお菊さんに食い下がる。
「ダメです!」
小角の『子供を物で釣る作戦』は失敗したようだ。
仕方ないから、小角は別の作戦を進めることにした。
「じゃあ仕方ない。武くんが破壊したビルの損害賠償を請求させてもらうことになるな・・・」
小角は『金で解決する作戦』に舵を切った。
「あれは前鬼を助けるための被害です。人命よりもお金を優先するのですか?」お菊さんは小角にモラルを問うた。
「人命を軽視しているわけではないが、ビルを壊さなくてもピーチ・ボーイズは倒せたのではないか?」小角はそれでも食い下がる。
「あのビルはテロリストの銃撃で相当な被害が出ていました。それに武くんが壊した証拠はありませんよね?」
小角はニヤリとしてタブレットを差し出した。
タブレットには武がビルを破壊しているシーンが映しだされている。
ドヤ顔の管理職のおじさん。
そこには浮世絵に出てくる修行僧の雰囲気はなかった。