第2話

文字数 2,720文字

次の日、学校へ行くと僕のことを待ち構えている奴がいた

「ちょっといいか」

そいつは同じクラスの緒方くんだった
緒方くんはクラスで一番モテる奴だ
女子からは犬系男子と噂される彼だ
話したことは片手に収まる程度しかない
そんな彼が真剣な顔をして僕なんかに話しかけてきたのだ
なんとなくだが話しかけてきた理由は予想がついた

「屋上で話そう」

緒方君を連れて二人で屋上に行った
早朝の学校の屋上は若干肌寒かった
気まずさから沈黙が続く

「昨日の夜…」

緒方君は口を開いた
昨日の夜というキーワードの時点で僕の予想が当たったことが分かった

「昨日の夜、お前…飛んでたよな」

ビンゴだ 
だが、この事態はベットの中で想定済み そして、その対応策は決めてあった

「飛ぶ?w ごめん、何の話?」

これで完璧だ
空を飛ぶなんて話、こっちが否定しちゃえば、見間違いで済むはず
どうだ、犬系男子

「誤魔化すなよ 俺は見たんだ」

「見たって言われてもな…」

「昨日、歩いてたら空から金色の雨が降ってきた」

「金色の雨…?」

「俺、ビックリして 上を見たんだ
 そしたらお前がいた 空を走ってた
 俺はしっかり見たぞ」

僕は慌てていた 
空を飛んでいたことを見られていたからではない
空を飛んでいたことがバレても
すげー空飛べるんだ!カッコいい!
となって尊敬されるだろう
一躍ヒーローだ
問題は金色の雨だ
金色の雨……確実に僕のオシッコだ
なんかいい感じに金色の雨とか言ってるけどオシッコなのだ
バレたらマズい
僕は空を飛んでオシッコ撒き散らす奴になってしまう
それだけは避けねばならない

「見間違いじゃないかな?
 人が空を飛ぶなんて…有り得ないだろ」

「見間違いなんかじゃない!
 しっかりとこの目で見たんだ」

「ホントかな~」

「証拠だってある!」

「しょ、証拠?」

「ほら見ろよ!」

それは写真だった
完璧に僕の後ろ姿が写っている

「ほ、ホントだ~空飛んでるね~
 でも、これは僕じゃないなぁ」

「これも見ろよ」

別の写真を見せられる
そこには僕が電信柱に掴まっている姿があった
顔もしっかりと写っている
これは誤魔化しようがない
よし話をすり替えよう

「そろそろ授業始まるんじゃないかな?教室戻ろうか」

「やっぱりこれお前だよな」

「緒方君は何組?僕は2組」

「同じクラスだよ
 なぁ、やっぱりお前だよな」

「1限は何の授業だっけ?
 給食?給食楽しみだなー献立見に行こうよ」

「お前、誤魔化そうとしてるよな」

やっぱり無理だ 諦めよう

「えーと…… うん!」

「自供が早いな
 てことは、やっぱりお前なんだな」

「うーん…うん!」

「急に素直にじゃん」

「うーん…うん!」

「なんか腹立つな」

「ありがとう!」

パチン

ビンタされた…
認めたのに…

「超能力…なのか?」

「はぃ?」

「お前は超能力者なのか?」

「いや、そういうわけじゃ」

「誰にも言わねぇ 
 俺、約束はちゃんと守るからさ 
 超能力者なんだろ?」

「超能力か
 まぁ空を飛んだのは事実だし嘘じゃないよな」

「うーん…ま、まぁそうかな」

「やっぱりな!
で、誰と戦ってるんだ?」

「は?」

「もう隠す必要ねぇって
 悪の組織と戦ってるんだろ?
 俺も力貸すぜ!」

「いや僕があの時戦っていたのは悪の組織じゃなくて、ただの尿意」

「なに?」

「いや何でもないよ
 悪の組織ね、うん、悪い奴らだよ、ホントに、うん」

「やっぱそうなのか」

「昨日はそいつらと戦った帰りだったのか?」

「そうそうそう、うそ」

「ん?うそ?」

「いや、その通り
 昨日は大変だったなぁ」

「てことは…あの金色の雨は…」

「えっと、それは」

「もしかして、血…?」

「ち?」

「倒した敵の返り血なんじゃないか!?」

「そ、そう!その通りだよ」

「やっぱり!」

よかった…オシッコのことはバレてないみたいだ

「もぅ~さすが緒方くん
 なんでも分かっちゃうじゃーん」

「まぁな!」

「便利~」

「誉めてないな
 便利ってなんだ」

「なんでもない」

「まぁいいや
 けど、あれだな
 やっぱり怪物の血って赤くないんだな」

「う~ん
 大抵は金色か黄色か透明だね」

「怪物の種類によって色違うのか?」

「種類っていうか、体調によるかな」

「体調?」

「いや、何でもない」

「あ、昨日結構血を浴びちまったんだけど大丈夫かな」

「そんなにかかったの?」

「あぁ、お前を追いかけてるときに
 ピシャピシャな」

「ふっ」

「ん?どうした?」

「いや、ごめん 何でもない」

「ちょっと口に入ったりしたんだけど平気だよな」

「う、うん」

「というか、実は身体にかかったのを舐めたりしたんだけど」

「な、舐めたの?」

「やっぱりマズイか?」

「まぁ美味しくはないよね」

「味の話じゃねぇよ」

「なんか、身体に異変とか起きたりしないのかって聞いてんだよ」

「それは大丈夫じゃないかな」

「ホントか?」

「マニアの人はよく飲んでるって聞くし」

「そんな奴がいんのか!?」

「趣味人それぞれだよね」

「そ、そうか…
 大丈夫ならいいんだ」

「正直不安だったからよ」

「お腹壊してなければ大丈夫だよ」

「そんなもんなのか
 家に帰る途中も独特の匂いっつーか」

「ど、独特?」

「なんつーか アンモニ…」

「ア、アンモナイトって美味しいよね!」

「食ったことねぇ…食ったの!?
 アンモナイト食ったの!?」

「う、うん」

「アンモナイトって絶滅したんじゃなかったか?」

「うん だから化石で」

「化石イッたのか
 化石ってもう石だぞ
 カチカチだろ
 よく噛めたな」

「うん だから一回茹でた」

「硬さ変わらねぇよ
 ブロッコリーじゃねぇんだぞ」

「そうかな」

「やっぱ超能力者はすげぇんだな
 おっと、そろそろ時間か…
 話の続きはまた後でにすっか」

時計を見ると1限が始まる3分前だった
なんとか乗りきった
僕はホッとしていた
金色の雨…誤魔化しきったぞ

「俺、ションベンしてから教室行くわ」

あ、答え言った

「じゃぁ後でな 相棒」

そう言って緒方くんは屋上から去って言った
どうやら僕に犬系男子の相棒(マーキング済み)ができたみたいだ
まぁ、楽しそうだから別にいっか
そう呟きながら僕は教室に向かった
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