相手にとっての無感動な人が、人を傷付けない人なんです

文字数 1,553文字


誰も傷付けない人というのは、
【人に影響を与えない人】と言い換える事が出来るのだと思います。


そうして「上手く立ち回れる人」が居るのだとしたら、
それは自分が行動した先を予見出来る【未来が見える人】くらいのものなんです。


更に言うなら「上手く立ち回ろう」とする人は、
自分に瑕(きず)を付けたくない人です。

自分に【瑕】を付けたくない。
それはつまり、人に【傷】を付けたくないと言う事です。



「傷」と聞くと悪い印象が先行しがちですが、
「傷」とは言わば、相手の心に影響を及ぼす行為の総称なのだと思うのです。

相手の心を揺らす選択。
相手の心に響く言葉。
相手の心を動かす言動。
それらが総じて【傷】なんです。


傷とは、相手の心に「遺る」事です。
相手を傷付けないとは、同時に相手の心に【印象】という傷を付けないと言う事でもあります。

相手にとっての【無感動】な人が【人を傷付けない人】なんです。



人の心に寄り添う時、
自分をそうさせる想いとは果たして何なのでしょうか。
相手を傷付けたくて人は優しくするのでしょうか。

仮にそれを「詐欺」や「愉快犯」と呼ぶとして、

その【優しさ】に思い悩む感情を、
一体何と呼ぶのでしょう。

呵責する心があるとして、
それはどこから来るのでしょう。



傷付けるかも知れない。
自分が動いた先の未来がどうなるかなんて分からない。

だけど今ある想いに【悔い】は遺したくないんです。
「遺したくない悔い」とは何でしょう。

「今ある想い」とは何なのでしょう。


その根底にある【差し置いて行けないもの】こそ、
貴方の【想いの本流】なんです。


もしも優しさで苦しめる事があるとして、
慮りが痛ましさを生むとして、

貴方は【優しさ】を捨て置いて行くのでしょうか。
【慮り】を差し置く事が出来るでしょうか。


仇になるかも知れないし、
押売りなのかも分からない。
相手がどう思うかなんて動く前から分かる訳無い。
予見なんて出来る筈無い。



どう展開するかも応酬するかも用意も予測も出来ない中で、
唯一「分かる」事が出来るものは、

その時の自分が「どうしたいか」という事です。


どちらの身の振り方に自分の心が頷けるかという事なんです。

どんなに煮え湯を飲んだとしても、
責め苛む事になろうとも、



今この瞬間の自分まで「嫌い」になる選択を選びたくは無いんです。
自分が【そうで在りたい自分】から背きたくも無いんです。

それを【意思】と呼ぶんです。


他の誰でも無い、貴方が貴方に納得出来る「【自分】を愛せる自分」なんです。


貴方は、この先の自分の利害でも無く相手にもたらす損益でも無く、
相手の【今】を見ているんです。
大切にしてもいるんです。
だから【今】行動するんです。
寄り添うんです。


傷とは触れなければ付ける事も叶いません。
触れられる場所まで届かなければ、そもそも【傷】なんて付かないんです。



貴方の周りに居る人は、漏れなく誰もが貴方からの【傷】を心に持っている人です。
貴方の行為に言葉に選択に、【傷】を付けられた人なんです。

そして貴方もまた、その人達から付けられた【傷】を心に持っている筈です。


その傷が愛おしくて仕方ないんです。
だから傍に居るんです。

貴方が誰かを傷付ける事が出来るのだとしたら、
それは心に波風を呼べる場所にまで、
貴方が相手に届く事が出来る人だという事です。

「人の心を動かす力」があるんです。


貴方の言葉で揺れる人が居るならば、
それは貴方が、相手の心に触れる事が出来る人だと言う事です。

一緒に痛くなれる人なんです。


そして何より、貴方は自分に【瑕】を付けられる人なんです。

例え傷が返って来てもしっぺ返しに遭ったとしても、それを何度繰り返しても、
「それ」を決して手放さない頑固さを持てる人なんです。


そんな自分を守りたいと願える貴方が今持つ【瑕】を、


「守りたい」と思えない訳が無いじゃないですか。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み