第33話 憧れさんとお隣さん
文字数 7,169文字
目が覚めると、そこは見知らぬ場所だった。
何処か懐かしい雰囲気の和室に縁側…と……
……あれ?何か凄く見覚えのある姿が転がって……
縁側にどかっと、打ち上げられた死体の如くぐったりして……
「……」
わたしはまだ夢でも見ているのかな?
確か体育大会の中止を願う神頼みをしていたら、突然素敵スマイルの東雲青嵐先生が現れて…それから情けない事に気を失って…
いや!あの出来事自体きっと夢だったんだ!!そうだよ、あの東雲青嵐先生が突然わたしの目の前に現れるだなんて…!!しかもあんな至近距離で!!
目を覚ましなさい、灯……
目を覚ましたらきっといつもの光景が見られるはずよ。無表情の蒼がひょっこり現れて、淡々と何かお説教なんかして…
ふふ…そうよ…じゃあ、目を閉じなさい……
そしてゆっくり目を開けるのよ灯?そう、落ち着いてゆっくりと……
「…あ~、よ、良く寝たなぁ…」
そして再び目を開ける…
しかし、縁側に転がっていたそれはわたしの目の前に来ていた…
いや、正確には転がって来ていた…
「…忍先輩?」
「…あ?ちーこ…お前起きたんならさっさとどけ。布団俺に返せ…寒い…」
「あ、ああ…すみません…どうぞ…」
そして起き上がり素直に布団を譲ってしまうわたし…
それは起き上がる事も、お礼を言う事も無く転がりながら布団へとすっぽり入って行った…
「ってそうじゃなくて!な、なんで忍先輩がお昼寝なんかしてるんですか!?」
「…うるせぇな…俺今凄く眠いの。邪魔したら殺す…」
「そ、それは何と言うか…ってそうじゃなくて!ここ何処なんですか!?なんで懐かしのお祖母ちゃんの家みたいな場所でお布団被って寝かされて、縁側で忍先輩が転がってたんですか!?」
思わず布団の隣で正座をしてしまったわたしだったが、我に返り布団を捲りあげると、お休み中の忍先輩を問い詰めた。
うわぁ…今日も目つき悪い…!!しかも眼鏡したままって…本当何なのこの人は!?
「…紫乃の家。縁側は俺の寝床。それだけ。」
「しのの家?ってまさか忍先輩…緋乃先輩と言う存在がいながら浮気ですか!?縁側寝床にしちゃうくらいの深い間柄の…」
「はぁ?何言ってんのお前…。俺は緋乃一筋だ。他の女…いや、人に興味ねぇよ。面倒臭ぇ…お前その暴走妄想癖何とかなんねーの?」
「じゃ、じゃあ何ですか!そのしのさんとやらは!!」
「あ~…うるせぇ…もういいからお前も寝ろよ。布団半分貸してやるから…」
「な、何でそんな事になるんですか!?ね、寝ませんよ!!わたしには蒼が!!」
寝ぼけているのか…忍先輩は寝ころんだまま隣をポンポン叩いて本当に面倒臭そうにしていた。
この人…いい加減な人だとは思っていたけど、緋乃先輩に関しては一途で真っすぐで誠実だと思っていたのに…!!
「…お前、ちっさいから抱き枕に良さそうなんだよ。サイズ的に腕にすっぽり収まるし…子供だから体温高そうだし…暖が取れる。」
「そ、そんな理由で…いえ、忍先輩らしいですよ。凄く…。絶対なりませんけど。」
「ちーこの癖に堅い事言ってんじゃねーよ…。ほら、いいからこっち来いって…寒いから。」
「い、嫌ですよ!?行きませんよ!?」
「大丈夫だって…別にちーこ相手に変な気起こす訳ねぇし…俺はただ単に暖が取りたい。だからお前抱き枕になれって…そんな理由だから。」
「どんな理由ですか!?い、嫌です!!引っ張り込もうとしないでくださぃ~!!だ、誰か!誰か助けてくださ~い!!」
「…誰も来やしねぇよ…観念しな。」
「い~や~で~すぅ~!!」
綺麗な町娘を襲う悪代官の如く…。忍先輩は悪い笑みを浮かべながらわたしの腕を掴み布団の中へと引っ張り込もうとする…。
この人…意外と力あるからな。こんな華奢な体の何処にそんな強い力があるのか…
「無駄な抵抗はやめろって…諦めて俺に抱かれて…」
「ご、誤解を生む様な発言やめて下さい!!忍先輩の変態!!」
「変人の間違えだろ?」
「自分で言うのやめて下さい!!」
ゴスッ!!
「って…!!」
「!?」
忍先輩の悪ノリがエスカレートした時だった。
突然、眼鏡のイケメン悪代官の頭上に振り下ろされる分厚い古書…しかも角が脳天に直撃していた。まともに。
「紫乃!てめっ…」
「…忍、悪ふざけが過ぎるぞ?お兄さん怒るぞ?」
「…もう怒ってんじゃん…痛ぇ……」
頭を押さえ黙り込む忍先輩……
そして見上げるわたし…その先には……
「…ごめんね、灯ちゃん。うちの子…いや、違うか…とにかくこの馬鹿が変な事して…怖かったよね?」
「…!?」
目の前にはあの東雲青嵐先生が笑顔で…いや、今は少し心配そうに屈んで見つめている!?しかも、わたしの頭を撫でて…
ああ、なんかまた頭がくらくらして来た…
「忍、お前も灯ちゃんの布団奪ってまで昼寝しようとするな。その上襲おうとするなんて…本当お前は…」
「…誰が襲うかよ…ただ交渉してただけだって。抱き枕になれって。」
「それが襲っている様に見えたんだよ…本当ごめんね?もしかして学校でも変な事されてない?」
「…は、はぁ…もう諦めているので…」
「こいつは俺の所有物。」
「忍、やめさない。……はぁ、諦めないでちゃんと俺に話してごらん?後から注意しておくから…。大丈夫、忍はこう見えて聞き分けの良い子だから俺が言えばちゃんと解かってくれるから……」
し、東雲先生!?な、何か素敵スマイルが何処か黒いんですけど…!?
あ、蒼が『この人黒い』って言った意味がわかってしまって気がしてなんかちょっとだけ複雑だ。
素敵過ぎるのは変わりないけど……
って忍先輩また布団に入って速攻眠ってるし!?本当何処でもいつでも眠る人だな…
「兄様!忍ちゃん!そんなに騒がしくしていたら灯ちゃんが起きてしまうでしょう?本当二人揃うとロクな事に……」
「灯!!無事なの!?」
と、次に慌ただしく現れたのは……
緋乃先輩と…従妹の蕾ちゃん!?
確かに蕾ちゃんはこの町に住んでいるけど…
一体従妹の蕾ちゃんと東雲先生達の関係って…??
ちょこんと正座しているわたしを見るなり、飛びついて来た蕾ちゃんにきつく…苦しいくらい抱きしめられながら、わたしの頭の中は混乱し過ぎてグラグラしていた。
*****
「お、幼馴染み!?蕾ちゃんと緋乃先輩と忍先輩が!?」
一通りドタバタして落ち着きを取り戻した一同は、居間に移動しお茶とお茶菓子を囲みながらそんな身の上話をしていた。
わたしの目の前には緋乃先輩と東雲先生。そして縁側には忍先輩が転がっている…そしてその隣には可愛らしい黒猫がちょこんと香箱座りをしているのが微笑ましい。
「そうよ。それよりも…体育大会が嫌で神頼みって…あんた相変わらずねぇ…あたしが特訓してあげようか?」
「気持ちだけで十分だよ…」
わたしの隣に座るのは、女子高校生にしては長身だが、黒いロングストレートが美しい中々の美人さんが一人。彼女が従妹の
二つ年上だから受験生。この星花町で花屋『FOREST FLOWER』二号店を経営する母の姉、美空叔母さんの一人娘だ。
またこの叔母さんと蕾ちゃん。美人だがとても逞しくパワフルだ。男勝りな親子と言ったところだろうか。叔父さんはのほほんとした穏やかな人だけど。
とにかく花森母娘とは正反対だ。こっちがあまりにもほんわかしてぽやぽやしているから心配されるくらいだ。
「ところで紫乃さん。うちの子に何したんですか?こんな所まで連れて来て…」
「え?俺いきなり疑われてるの?酷いなぁ…」
「当たり前です!灯が倒れたって連絡があったから急いで駆けつけてみたものの…返答次第では紫乃さんであろうと容赦しませんよ?」
「偶然出会ったら急に気を失っちゃって…保護しただけだよ。灯ちゃんの話は良く蕾ちゃんから聞いていたし、連絡はしておいた方が良いと思ったからしたんだけど…」
「当然です。灯、あんた調子悪いなら何で無理して学校行ったの?しかもこんな所まで来て…体調崩しやすいし、繊細なんだから無理しちゃ駄目でしょ?」
蕾ちゃんにまで気遣わし気な目で見られてしまうなんて…
確かにわたしは昔からデリケートな性格で、良く体調崩していたけど(主に胃とか)…
「灯ちゃん、あまり自分を追い込んではいけませんわよ?私も運動は苦手ですもの…気持ちは分かりますわ。」
「緋乃先輩…いざって時は走るの速いじゃないですか…。わたしは絶望的に駄目なんです…!!ううっ…何か改めて口にしたらまた胃が…」
「緋乃と比べちゃ駄目だって…!ほら、あたしの大福あげるから元気だしなって!本当に特訓する?付き合うよ?」
「ほら、灯ちゃん…泣かないで…。本当嫌なんだね…体育大会。俺も運動苦手だし、気持ちは分かるけど…」
ああ、本当だ…なんか涙がまた出て来た…
胃を押さえながらも蕾ちゃんから大福を受け取りちびちび食べる…。
苦笑している東雲先生と緋乃先輩に見守られながら。
わたしも蕾ちゃんくらいガッツと根性があったら……!!
「そう言えばあんた…昔から絶望的に鈍臭い子だったもんね…見てるこっちがハラハラして心配になるくらい。大丈夫?最近どっかで躓いて怪我とかしてない?」
「あら、つーちゃん。それは心配なくってよ?だって灯ちゃんには素敵な騎士様がいるもの!!」
心配する蕾ちゃんに、緋乃先輩は意味ありげに微笑みながらそう言った。
「騎士って…あんたイケメン好きだったわね…まさか変な男に引っかかったんじゃないでしょうね!?」
「うふふ、それはもう一途で誠実な…」
「俺は騎士よりも武士って感じがするけどなぁ…」
「…犬だろ、あれは。忠犬。」
「ちょっと…何その過保護臭プンプンな響き!?」
『だってそうだから。』
ああ…何か緋乃先輩や忍先輩だけならず東雲先生にまで言われちゃってるよ。蒼が過保護だって。
こうも揃って頷かれると…なんだろう?凄く恥ずかしい……!!
「でもどうして紫乃さん、灯の顔まで知っていたんですか?あ、サイン会の時に会ったとか?それで灯がドジして…」
再び落ち着き、お茶を飲むこと暫し…。蕾ちゃんが首を傾げそう問った。当然の事だ。
「ああ、それは…俺の担当さんが灯ちゃんのお隣さんのお母様でね。」
「お隣さん?」
「うん、雛森蒼君っていうそれはそれはしっかりした息子さんでね。ついでに凄いイケメンだよ?」
「それ凄くどうでも良い情報です。」
「本当しっかりした子でさ…俺がうっかり忘れた書き掛けの原稿とかちゃんと届けてくれたり、紫さんと一緒に修羅場になってる締め切り前とかもしっかり面倒見てくれたりさ…」
「年下に面倒掛けないで下さいよ…てか大事な原稿うっかり忘れるって……」
「この前も締め切り前に現実逃避しようと考えていた俺を引き止めに説得に来てくれて…」
「ついに逃げる事まで考えてたんですね…本当、真面目に仕事したらどうですか?」
「う~ん…俺は何事にもいつでも真面目に取り組んでいるんだけどなぁ…あはは!」
「爽やか笑顔で誤魔化すのもやめて下さい。何か腹立つんで。」
蕾ちゃんに終始突っ込まれる東雲先生はやっぱり素敵だった…
何か想像していたイメージと違うけど…気さくで話しやすいって言うか…
そんな東雲先生と蕾ちゃんの様子を見ながら、緋乃先輩は楽しそうに微笑んで何個目か分からない大福を頬張っているし…忍先輩は相変わらず縁側に根を張った様に動かないし…
というか…蕾ちゃんと東雲先生って何か仲良いな……
確か『昔から良く知る近所の優しい(胡散臭い)お兄さん的存在』って話だけど…。
蕾ちゃん、昔からこんな人と一緒に過ごして来たなんて羨まし過ぎる。
きっと東雲先生の事だから、昔から優しくて蕾ちゃんや忍先輩の遊び相手になってあげていたんだろうなぁ……
「…ん?」
そんな時だった。ポケットに入れていたスマホが震えたのは。
タップして確認すると…やはりそれは蒼からの着信であった。
「…ああ、そう言えばもうこんな時間に…」
まったり自由空間過ぎて時間が経っている事にも気付かなかった…。縁側から見える外の景色は既に薄暗い。
「ああ、蒼君心配しちゃったかな?」
「はい…多分…」
「ちょっと借りても良いかな?俺から蒼君に説明しておくから…こうなったのも俺の責任でもあるしね?」
「え!?で、でも……!!」
「いいから。お兄さんに任せなさい。」
スマホの画面を見るわたしを見て何かを察したのか、東雲先生は笑顔でわたしの手からスマホを抜き取った。
きっとわたしが蒼に怒られると心配でもしてくれたのだろうけど…これはこれでまた後からややこしくなりそう。
「ああ、蒼君?こんにちは、紫乃です。灯ちゃんの事だけど…」
変わらぬ笑顔で対応する東雲先生を見ながら、わたしは不安になって来た…
蒼…電話の向こうで何を話しているんだろう…?
何か今にもため息が聞こえて来そう…
*****
「…その……なんて言うか……」
「……」
「蒼……だ、大丈夫…?」
「……後頭部がズキズキする…」
数時間後、如月邸の居間にて……
後頭部を無表情に摩り座る蒼と、その前に正座して深く頭を下げる蕾ちゃんの姿があった。
「本当ごめん!!け、けど…見てると寒気って言うか拒否反応が…あ~…ごめん、マジで無理!!」
「……」
ついさっき…悲劇は突然訪れた。
東雲先生から事情を説明され、当然わたしを迎えにやって来た蒼だったが…居間に入った瞬間、忍先輩に足を掴まれた(寝ぼけて)蕾ちゃんが躓き蒼の胸の中に飛び込む形になり…
当然、蒼は避けずに支えようとした訳だが…。蕾ちゃんは大のイケメン嫌いで、その拒否反応は異常だ。手を握られれば蕁麻疹が出たり、思わず投げ飛ばすくらい。
案の定、蒼は突然蕾ちゃんに投げ飛ばされたのだ。綺麗な背負い投げによって…そして床に後頭部を直撃した。
「…俺の顔はそんなに変ですか?」
「い、いや!変って言うか…あたしが変なだけで!!君は本当良い顔してるから!!」
「…あなたも変じゃないと思いますけど(顔が)…」
「ち、近寄らないで!!お願いだからそれ以上近づいたら絶対殴るなり蹴るなりするから!!」
「…分かりました。」
「じっと見つめるのも無し!寒気がするから!!」
「……」
蒼は物珍しそうな物でも見る様に蕾ちゃんをじっと見つめていた…。
蒼…蕾ちゃんをそんな珍獣みたいに……
間に東雲先生を挟んでも尚拒否する蕾ちゃんの様子を見て、さすがの蒼も傷ついたのか引いているのか…少し戸惑っている様だ。
わたしに助けを求める様な視線を向けて…
「…蒼君大丈夫?蕾ちゃんも…いい加減その癖なんとかしないと…。いつか君が警察に連行されそうでお兄さんちょっと不安だよ…」
「東雲先生の妹さんですか?」
「え?俺の妹は緋乃だけだよ?蕾ちゃんも妹みたいだけど…灯ちゃんの従妹なんだろ?」
「…そうなのか?」
首を傾げ突然わたしに話を振って来たので、慌てて頷いた。
あれ?わたし話してなかったっけ?蕾ちゃんの話って…
ネタは色々あるんだけどなぁ…。何せこんなんだから。
「というか…蒼君、また『東雲先生』って呼んだね?俺の事はちゃんと本名で呼んでくれないと…」
「先生は先生ですから。」
「結構付き合い長いだろ?他人行儀は嫌だよ?」
「長いのは母とであって別に俺は…」
「そんな事言って…俺は蒼君がまだこんな小さかった頃から知っているんだよ?」
「灯を前にしてあまり『小さい』と言うのはやめて下さい…こいつ気にしているんで…」
蒼がぼんやりしているわたしの肩を引き寄せ、前に差し出された東雲先生は少しだけ寂しそうだ。
「…灯は繊細なんです。扱い方には注意して下さい。」
「本当過保護だなぁ…灯ちゃん、蒼君が嫌になったらいつでもお兄さんの所に相談においで?何かこっちも心配だ…」
「あまり灯に近づくのはやめて下さい…あと、変な心配も必要ありませんから。灯には俺がいるので心配ないです。」
「それが逆に…まぁ、良いか…。確かに灯ちゃんは目が離せない子の様だしね?本当、蒼君は灯ちゃんの事が大好きなんだね。」
「いけませんか?」
「……え?…い、いや……良いんじゃないかな?」
「…何か言いたそうですけど?」
「……蒼君は正直過ぎるからたまに聞いているこっちが恥ずかしくなるんだよ…。本当、君の言葉はいつでもストレートで清々しいな。お兄さんも見習いたいくらいだよ。」
「…あなたには無理だと思いますけど…」
「あはは、確かに!今更改善しようがないよね…ね?緋乃?」
「…そこで開き直らないで下さい。」
東雲先生の言葉に笑顔で頷くのは緋乃先輩。この二人兄妹だと言うから驚きだ。
いや…言われてみれば雰囲気とか髪色とか顔も似ている気がする…ご両親もさぞや美形だったんだろうな。
そして蒼は…何か東雲先生に対してツッコミが厳しいのは気のせいかな?
もしかしてわたしが『東雲先生素敵!』と日々言っているからだろうか??いや、まさかね。
「とにかく、俺達はこれで失礼します。灯がご迷惑をお掛けしました。」
「いえいえ、灯ちゃんならいつでも歓迎しますよ。またおいで。」
「行きません。灯、お前も嬉しそうな顔をするな…帰るぞ。」
またまったり話し込んでいたので、ぼんやり聞いていたら突然蒼がわたしの腕を掴んで立ち上がったのでびっくりした。
そう言えば…お腹空いたなぁ……
きゅるるる~……
「…腹が減ったのか……」
「…ごめんなさい……」
玄関先まで引っ張られると、空腹を自覚したせいかお腹の音が鳴ったのだった…。
勿論、わたしの……
当然蒼は呆れてため息を吐く……
その後、わたしは蒼と一緒に東雲先生のお夕飯をご馳走になる事となったのだった。
幸せの様な…恥ずかしい様な…なんだか凄く複雑な気持ちだったのは確かだ。