第114話 - 一撃
文字数 3,733文字
「(数名の死体を捕らえ損ねた……!)」
仁はJOKERの超能力 によって逃れた17名の死体に向けて再び"愛は海よりも深く "で捕らえにかかる。
––––"弾性恋愛物語 "
JOKERは再び"弾性恋愛物語 "を発動し、17名の身体に繋がる複数のバネを起動させて移動速度を上げることで仁のサイクスから逃れる。
JOKERは残りの17名の死体に対して数多のバネを引っ掛け、更に自身を含めてあらゆる場所に接続させている。
「バネは幾つでも発動できるし、1つの対象物に対して幾つでも繋げられる。更に……」
いくつかの死体が突如として方向転換する。
「僕のサイクスに対して使用するバネ、バネの伸縮タイミング、バネ定数をフルオートで変化するように命令。ランダムに死体は飛ばされる」
PUPPETEERはランダムに動く死体の中から常に最善の5体を選択して"死の舞踊 "を発動、複雑な動きを加える。それによってバネの直線的な動きが改善される。
17名の死体の内、3名に黒いドーム状サイクスが出現する。そこからJESTERが現れて仁、柳、鈴村の3人を急襲する。
「素晴らしいハーモニーだろう?」
JOKERの問いかけに対して仁はニヤリと笑う。
「(イカンな……。この歳で闘いに心が踊っとる)」
JOKERは仁に"愛は海よりも深く "を発動させる隙を与えずに距離を詰めて打撃を浴びせるが、仁もそれに難なく反応し、応戦する。
––––バチンッ
突如、JOKERが自身に繋いでおいたバネを発動。仁の背後を取ってナイフで突き刺しにかかる。仁は右手で空気を掴み、切り取った立体を背後に回す。
JOKERのナイフは金属音を響かせて弾かれる。
「(硬いな)」
JOKERはそのまま跳躍し、仁との距離を空ける。
「あの女の超能力、死体への移動は条件なく自由にできるようじゃな。一度に出現させられるサイクスの囲いは3つといったところか」
仁の言葉に対してJOKERは笑う。
「ククク。たまたま3つ発動させただけかもよ?」
JOKERは仁が「フンッ」と鼻を鳴らしているのを満足そうに見た後、再び仁の元へと詰め寄り打撃戦を繰り広げる。
「それならこちらもあなたの超能力 について少し分かったことがあるよ」
JOKERは仁に前蹴りを見舞い、その勢いで後ろに下がりながら手につけているバネ先を引っ張り、ナイフ4本を引き戻す。
「気体……、いやJESTERが話していたように液体も掴めるとするならば、あなたは流体を実体として捉え、それを立体として切り取ることが可能。切り取った後に現在のように立方体に形を変化させていることから、恐らく体積をキープしたままならば形を自由に変えることができる。そして……」
JOKERはナイフ4本を42名の死体が捕らえられている、"愛は海よりも深く "によって作り出された空気の立体に投げ付けた。
JOKERが投げたナイフはその立体に到達した瞬間、キンッと冷たい金属音を響かせた後に弾かれる。
「切り取るだけならまだしもこういう風に硬さもあるんだよねぇ……。かと思えば先ほどのあなたが僕に対して放った技はナイフを弾かなかった」
*****
"気鮫 "
仁は両手で空気を鮫型に切り取り、サイクスを込めてJOKERへと飛ばす。JOKERは笑みを浮かべながら左手のナイフを鮫の顔面に向かって投げつける。
「!?」
仁が飛ばした"気鮫 "はJOKERのナイフに触れると霧散する。
第110話 - 東京都第10地区 参照
*****
「あなたは操作した流体を任意で固体化することが可能なんだろう?まだまだ気になることはあるけどね」
––––"気剣 "
仁はそれに返答することなく空気を剣の形に切り取り固体化、JOKERへと向かって行く。
「冷たいなぁ……。僕はお喋りするのが大好きなんだけど」
JOKERは仁の攻撃を捌きながら少し悲しそうな声を演じながら話す。そして鈴村、柳とJESTER、PUPPETEERの戦況をチラッと見る。
「僕に近付いて大丈夫かい?」
JOKERから黒いドーム状サイクスが発生する。
「僕たち仲良しだからJESTERの条件なんて既に揃ってるよ♪」
JOKERから黒いドーム状サイクが出現する。瞬間、仁は方向を変えて黒いドーム状サイクスから逃れようとする。
––––サクッ
「!?」
仁と鈴村の背後からそれぞれ黒いサイクスの渦が発生し、その中からJESTERとJOKERの右腕が現れて同時に背中から刺突される。
JESTERに相対する柳、鈴村、そしてJOKERと相対する仁に同時に違和感に気付く。
「(奴の右腕は……!?)」
JESTERの"暗黒の解剖室 "は献体と自身、または献体同士をリンクさせる。
リンクさせた身体は互いの"暗黒の解剖室 "内で入れ替えることが可能となり (流し込まれたJESTERのサイクス量によって身体の一部の交換も可能)、範囲内であればどこからでも出現させることができる。
––––"人命救助 "!!
鈴村は自分に刺さったナイフと仁に刺さったナイフに対して同時に"人命救助 "を発動し、自身の足元に移動させる。
「ぐッッ……」
柳は鈴村の様子を見て"愛に痛みはつきもの "を発動しようと近付こうとするもそれを鈴村が止める。
「柳! お前は一撃に集中しろ! 時間がない……!!」
柳はその必死の形相に反論する余地はないと悟り、進めかけた歩を止め、PUPPETEERとJOKERのバネの超能力によって動く死体を蹴散らす。
「(そう……! 大きなダメージ2つ分のパワー。これを使えるのはあと45秒ほど。私は当初の通りあのLADYに一発をぶち込むことが最優先……! だけどもう時間がない……! どうやって……)」
柳の視界の端に捉えたのは鈴村の笑み。それを見て悟る。
「(いや私はこの一撃に集中する……! 方法は鈴村くんと仁先生が何とかしてくれるわ!!)」
柳は思考を止める。
––––キイイイィィィィ……
柳は動きを止め、右拳に膨大なサイクスを溜めて一撃に備える。
仁は鈴村の"人命救助 "によって2人の目の前に移動。20体の"気鮫 "を生み出し、17体の死体とJOKER、JESTER、PUPPETEERに向けて放つ。
鈴村はそれと同時にナイフを"人命救助 "によって片手に召喚し、JESTERへ向かって一直線に突進する。その時、17体の死体に"暗黒の解剖室 "が出現する。
––––JESTERが一度に作り出すことのできるドーム状サイクスに数の制限はない。
「アハハハハ! 捨て身の突進かしら!? 嫌いじゃないわよ、そういうのぉ! さぁ! 私はいつ!? どこから!? 出てくるかなぁ!?」
鈴村は斬撃への対処法として初めにJESTERの持つメスを弾き飛ばす。その後、打撃の応酬が開始される。JESTERが間に割って入った"気鮫 "に対応した後、鈴村に告げる。
「あなたも私の"献体"にしてあげる」
JESTERがサイクスを込めた右腕で鈴村に触れようとする。しかし、JESTERが"気鮫 "に対処した0コンマ数秒の隙に付け入り、僅かに早く鈴村がJESTERに触れる。
––––"人命救助 "
「!?」
JESTERは柳の正面に強制的に移動させられる。
「何も俺の"人命救助 "は物や人を召喚させるだけじゃない。建造物の特定箇所に送り込むことも可能なんだよ」
鈴村は説明を省いたが"人命救助 "における、この特定箇所に"派遣"する超能力において人を対象とする場合、"召喚"とは違って自身のTech-Padに予めその人物のデータを入手しておく必要はない。
つまり、発動条件は対象物に触れることのみ。
「(しまっ……! "暗黒の解剖室 "が間に合わない……!)」
––––"生者の行進 "!!!
––––"弾性恋愛物語 "!!!
JOKERとPUPPETEERは同時にJESTERに向けてそれぞれの超能力を発動する。更にPUPPETEERは"死の舞踊 "によって5名の死体を柳とJESTERの間へ移動させる。
––––ゴゴゴゴ……
柳のサイクスに込められたその闘志は那由他ビル屋上の地面に巨大なクレーターを作り出す。
––––ゴッッッッ
柳の拳が触れた瞬間、死体もろともJESTERを殴り、そのまま地面に叩き付ける。死体は一瞬で消し飛び、柳の拳はJESTERの腹部に直撃する。
暴力団『鹿鳴組』総本部・那由他ビルが巨大な轟音と共に倒壊する。
––––ジリジリジリジリ……
ベルが鳴り響く。
仁はJOKERの
––––"
JOKERは再び"
JOKERは残りの17名の死体に対して数多のバネを引っ掛け、更に自身を含めてあらゆる場所に接続させている。
「バネは幾つでも発動できるし、1つの対象物に対して幾つでも繋げられる。更に……」
いくつかの死体が突如として方向転換する。
「僕のサイクスに対して使用するバネ、バネの伸縮タイミング、バネ定数をフルオートで変化するように命令。ランダムに死体は飛ばされる」
PUPPETEERはランダムに動く死体の中から常に最善の5体を選択して"
17名の死体の内、3名に黒いドーム状サイクスが出現する。そこからJESTERが現れて仁、柳、鈴村の3人を急襲する。
「素晴らしいハーモニーだろう?」
JOKERの問いかけに対して仁はニヤリと笑う。
「(イカンな……。この歳で闘いに心が踊っとる)」
JOKERは仁に"
––––バチンッ
突如、JOKERが自身に繋いでおいたバネを発動。仁の背後を取ってナイフで突き刺しにかかる。仁は右手で空気を掴み、切り取った立体を背後に回す。
JOKERのナイフは金属音を響かせて弾かれる。
「(硬いな)」
JOKERはそのまま跳躍し、仁との距離を空ける。
「あの女の超能力、死体への移動は条件なく自由にできるようじゃな。一度に出現させられるサイクスの囲いは3つといったところか」
仁の言葉に対してJOKERは笑う。
「ククク。たまたま3つ発動させただけかもよ?」
JOKERは仁が「フンッ」と鼻を鳴らしているのを満足そうに見た後、再び仁の元へと詰め寄り打撃戦を繰り広げる。
「それならこちらもあなたの
JOKERは仁に前蹴りを見舞い、その勢いで後ろに下がりながら手につけているバネ先を引っ張り、ナイフ4本を引き戻す。
「気体……、いやJESTERが話していたように液体も掴めるとするならば、あなたは流体を実体として捉え、それを立体として切り取ることが可能。切り取った後に現在のように立方体に形を変化させていることから、恐らく体積をキープしたままならば形を自由に変えることができる。そして……」
JOKERはナイフ4本を42名の死体が捕らえられている、"
JOKERが投げたナイフはその立体に到達した瞬間、キンッと冷たい金属音を響かせた後に弾かれる。
「切り取るだけならまだしもこういう風に硬さもあるんだよねぇ……。かと思えば先ほどのあなたが僕に対して放った技はナイフを弾かなかった」
*****
"
仁は両手で空気を鮫型に切り取り、サイクスを込めてJOKERへと飛ばす。JOKERは笑みを浮かべながら左手のナイフを鮫の顔面に向かって投げつける。
「!?」
仁が飛ばした"
第110話 - 東京都第10地区 参照
*****
「あなたは操作した流体を任意で固体化することが可能なんだろう?まだまだ気になることはあるけどね」
––––"
仁はそれに返答することなく空気を剣の形に切り取り固体化、JOKERへと向かって行く。
「冷たいなぁ……。僕はお喋りするのが大好きなんだけど」
JOKERは仁の攻撃を捌きながら少し悲しそうな声を演じながら話す。そして鈴村、柳とJESTER、PUPPETEERの戦況をチラッと見る。
「僕に近付いて大丈夫かい?」
JOKERから黒いドーム状サイクスが発生する。
「僕たち仲良しだからJESTERの条件なんて既に揃ってるよ♪」
JOKERから黒いドーム状サイクが出現する。瞬間、仁は方向を変えて黒いドーム状サイクスから逃れようとする。
––––サクッ
「!?」
仁と鈴村の背後からそれぞれ黒いサイクスの渦が発生し、その中からJESTERとJOKERの右腕が現れて同時に背中から刺突される。
JESTERに相対する柳、鈴村、そしてJOKERと相対する仁に同時に違和感に気付く。
「(奴の右腕は……!?)」
JESTERの"
リンクさせた身体は互いの"
––––"
鈴村は自分に刺さったナイフと仁に刺さったナイフに対して同時に"
「ぐッッ……」
柳は鈴村の様子を見て"
「柳! お前は一撃に集中しろ! 時間がない……!!」
柳はその必死の形相に反論する余地はないと悟り、進めかけた歩を止め、PUPPETEERとJOKERのバネの超能力によって動く死体を蹴散らす。
「(そう……! 大きなダメージ2つ分のパワー。これを使えるのはあと45秒ほど。私は当初の通りあのLADYに一発をぶち込むことが最優先……! だけどもう時間がない……! どうやって……)」
柳の視界の端に捉えたのは鈴村の笑み。それを見て悟る。
「(いや私はこの一撃に集中する……! 方法は鈴村くんと仁先生が何とかしてくれるわ!!)」
柳は思考を止める。
––––キイイイィィィィ……
柳は動きを止め、右拳に膨大なサイクスを溜めて一撃に備える。
仁は鈴村の"
鈴村はそれと同時にナイフを"
––––JESTERが一度に作り出すことのできるドーム状サイクスに数の制限はない。
「アハハハハ! 捨て身の突進かしら!? 嫌いじゃないわよ、そういうのぉ! さぁ! 私はいつ!? どこから!? 出てくるかなぁ!?」
鈴村は斬撃への対処法として初めにJESTERの持つメスを弾き飛ばす。その後、打撃の応酬が開始される。JESTERが間に割って入った"
「あなたも私の"献体"にしてあげる」
JESTERがサイクスを込めた右腕で鈴村に触れようとする。しかし、JESTERが"
––––"
「!?」
JESTERは柳の正面に強制的に移動させられる。
「何も俺の"
鈴村は説明を省いたが"
つまり、発動条件は対象物に触れることのみ。
「(しまっ……! "
––––"
––––"
JOKERとPUPPETEERは同時にJESTERに向けてそれぞれの超能力を発動する。更にPUPPETEERは"
––––ゴゴゴゴ……
柳のサイクスに込められたその闘志は那由他ビル屋上の地面に巨大なクレーターを作り出す。
––––ゴッッッッ
柳の拳が触れた瞬間、死体もろともJESTERを殴り、そのまま地面に叩き付ける。死体は一瞬で消し飛び、柳の拳はJESTERの腹部に直撃する。
暴力団『鹿鳴組』総本部・那由他ビルが巨大な轟音と共に倒壊する。
––––ジリジリジリジリ……
ベルが鳴り響く。