ガレージまで

文字数 1,000文字

いやあ苦労したなあ、こいつ見つけるの。でも、こうやってガレージまで自分の手で運ぶと実感がどんどん沸いてくるぜ

俺はアンナを助手席に乗せて、借りてきたトラックでトヨタ800通称ヨタハチをカーチューニングやレストアをしている知り合いの車屋まで運んでいた。

車はそこに置かせてもらい、修理は自分で行う約束になっていた。

普通のトラックに載っちゃうとか、小さい車よね。でも軽じゃないんだ。
こいつが売られていたころの軽自動車って、最大排気量360ccなんだぜ。それに比べりゃ800ccはでかいエンジンさ。
自動車の最大排気量が360? あたしのCB400より排気量小さいじゃん。
そうさ、今の660ccになる前には550ccの時代もあったんだぜ、軽自動車。
知らなかった。でも、そんな小さい車じゃ走るの大変だったでしょうね。
よくわかんねえけど、そうだろうな。ヒストリックカーのイベントで見たけど、よくあれに大人四人乗ってたなって感じさ。
ふーん、でもこのヨタハチ君だっけ、これ2シータね。オープンだし。
う、うん、まあな……

俺様、そこで少し口ごもる。

理由は後に明らかになるから、カット。

まあ、2シーターなんだからスポーツカーだったのよね、一応?
おお、そりゃそうだ。こいつの正式な名前は、トヨタ・スポーツ800だからな!
ねえねえ、もしかし、ちゃんと直ったらビューンて走って、あたしを乗せてくれたりするわけ?
そりゃまあ、助手席は杏奈専用でもいいけど…
やったー!
杏奈が、小さくガッツポーズして笑った。
でも、ビューンは…むにゃむにゃ…
え? なに、聞こえない?
…う、うん、こいつさ、オリジナルでも45馬力しかなかったんだ。それも今のはかり方と違う方式だから、今だと40馬力くらい…

ちょっと待ったあ! それ、あたしのCB400より少ないじゃん! 

だねぇ
なんでこんな物買ったのよ!
わ、わ、わ、また機嫌悪くなった。だ、だって、かっこいいじゃん…
もういいわ、直っても別に助手席は専用でなくても構わないから。
え? なんで?
自分で考えなさい、ふん!

杏奈がスピード狂であることは知っていたが、ここまで機嫌を損ねると思わなかった。

もし、ヨタハチの最高速度が145キロしか出ないと知ったら、安奈は更に機嫌が悪くなるに違いない。

まあ、言わないけど。

いや、言えないけど……

言えそうもない、かな?

とにかくトラックはガタガタと田舎道を進んで街へと向かっていった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

杏奈 俺さんのGF以上恋人未満な人

俺 古い車大好き人間

車屋のケンさん ヨタハチを預かってくれる優しい修理屋のオーナー兼名チューナー

エンスーの山さん ヨタハチ乗りの先輩。少し夢見がち?

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色