第6話 暴走
文字数 683文字
「U国 強硬発射も辞さず」
記事によると、U国内の資源開発会社や一部の金融機関が出資し、高度十万キロメートルを狙えるロケットを制作しているらしい。しかもその開発スピードは尋常ではなく、普段ならば当然行う安全確認や低コスト化への工夫が後回しになっている。なぜそこまで急ぐのかは謎だが、いち早く謎の物体について解明し、地球を脅かす存在に打ち勝ちたいという意思が働いているのだという。U国の一部強硬派ならやりかねない。他の国が世論に反して動いた場合には激しく非難するU国だが、こういうケースでは我を通すことも珍しくないのがU国だ。だからこそ世界で最も強い国家たり得るのだろうが、山本にはやはり馴染めない。結局やるんだろうなあ、とぼんやり考えたその瞬間、緊急アラームが鳴り響いた。
職場からの呼び出しである。前時代的ではあるが、山本たちの観測所では呼び出しにポケットベルを使用していた。ネット経由でももちろん呼び出しを行っているが、端末の設定や電波状況に左右され、確実性がむしろ弱い。
ひとまず職場に電話を入れると、森主任が出た。
「山本さん、波が変わりました。発信源が細かくなったのかな、という印象で」
「急に?」
「何か近付いているかも、とは思ったのですが」
「それって、まさか……」
「えっ、ちょっと……。分析、一緒にお願いします。国際協力の前に、こっちの見解を固めたいんで」
「すぐ行く」
そのわずか数時間後だった。地球の表面には無数の、人間には見えない物体が降り注いだ。各地で大きな音が鳴り響き、地表が砕け、海面は水しぶきを上げた。それは人類の悲鳴を呼び、やがて静寂が訪れた。
記事によると、U国内の資源開発会社や一部の金融機関が出資し、高度十万キロメートルを狙えるロケットを制作しているらしい。しかもその開発スピードは尋常ではなく、普段ならば当然行う安全確認や低コスト化への工夫が後回しになっている。なぜそこまで急ぐのかは謎だが、いち早く謎の物体について解明し、地球を脅かす存在に打ち勝ちたいという意思が働いているのだという。U国の一部強硬派ならやりかねない。他の国が世論に反して動いた場合には激しく非難するU国だが、こういうケースでは我を通すことも珍しくないのがU国だ。だからこそ世界で最も強い国家たり得るのだろうが、山本にはやはり馴染めない。結局やるんだろうなあ、とぼんやり考えたその瞬間、緊急アラームが鳴り響いた。
職場からの呼び出しである。前時代的ではあるが、山本たちの観測所では呼び出しにポケットベルを使用していた。ネット経由でももちろん呼び出しを行っているが、端末の設定や電波状況に左右され、確実性がむしろ弱い。
ひとまず職場に電話を入れると、森主任が出た。
「山本さん、波が変わりました。発信源が細かくなったのかな、という印象で」
「急に?」
「何か近付いているかも、とは思ったのですが」
「それって、まさか……」
「えっ、ちょっと……。分析、一緒にお願いします。国際協力の前に、こっちの見解を固めたいんで」
「すぐ行く」
そのわずか数時間後だった。地球の表面には無数の、人間には見えない物体が降り注いだ。各地で大きな音が鳴り響き、地表が砕け、海面は水しぶきを上げた。それは人類の悲鳴を呼び、やがて静寂が訪れた。