第1話

文字数 1,000文字

 山形県庄内で衝撃的な出逢いがあった。自分の人生で劇的な出逢いの最高峰に位置する。

 (山形県)庄内は田舎だ。自然が豊かだ。人は少ない。その人間関係は濃く、しかも情報が伝わるのが速い。その内容も先祖代々の昔のことから、つい先ほどのことまでと扱う時間の幅が広い。そしてその情報は本人からではなく、他人から聞かされる。
 「あの人はのぉ、余目(あまるめ)中学校ではクラスでの、3番以内の成績だったの~。」と朝風呂の露天風呂で聞く。話すのは「あの人」の中学校の同級生の今は老人で、しかもおよそ60年前の話を昨日のように話す。
 ちょうど庄内では、河原(かわら)の石にも全部持ち主の名前が書いてあるような感じがしていた。

 そんなお盆明けのある昼下がり、
 「あの~、病院誌の『んだんだ通信』を読んでいる者ですが…。」
と、背の高い新聞記者のような中年男性が私を訪ねてきてくれた。彼はマスクをしていたが髪は黒く日に焼けて精悍な印象だったが、人懐っこさを感じた。
 ()()然々(しかじか)で、
 「え~っ!! ホントですか!? お目に掛れるとは思ってもいませんでした。」
 彼も NOVELDAYS の作者であり読者であった。お互いにペンネームしか知らなかった。
 彼は庄内の豊かな自然が気に入って、わざわざ庄内地方の櫛引(くしびき)(←地名)に移り住んできた一人だった。お互いに庄内を外から観て感じるところに共感するものがあった。彼の作品に掲載される庄内の美しい自然の写真は心を打つ。文章も気品に溢れている。
 (この人は話せる人だ)と、私は瞬間に感じ取った。
 お互いに連絡方法を確認した。
 それぞれ昔のことは全く知らない。ただ、庄内のご縁と、NOVELDYS に作品を投稿したちょっとしたことで、新しい人と出逢い、これから話が展開するかも知れないのだ。ワクワクする。
 河原(かわら)の石の中に誰も知らない宝石の原石を発見したような気持になった。
 今度彼と、ゆっくりと酒を飲みながら話をしようと思う。
 以前に彼は、私の作品を読んで、「余目(あまるめ)駅で降りる機会があって、私の行きつけの町内の居酒屋を探したが、どこにあるのか分からなかった。…。」と作品の感想を送ってくれたことがあった。
 ん~、さてどこで飲もうか?(写真↓)

 静かに語りながら、焼酎のグラスを傾けるのもいいなぁ、と思ったが、そう言えばこの店はつい最近、閉店になった。
 ホント、庄内は寂しい限りだ。

 んだの。
(2023年8月)
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