レアリダー 2-1

文字数 765文字

 中間テストたるもの、そう大したものでないと思っている。テスト勉強など、帰宅部の自分のには常日頃から行う時間が用意されている。特別怠ける性格では無いため、程なく行っている。
 テスト期間になって気怠くなるのは、転校してきてからのことで、汰瀬と帰宅するようになった頃だ。
 期間に入れば、通常の部活動は活動休止状態となる。授業が終わり次第、帰宅部と同じように帰る。
 その時は自分と無縁の人と帰ってしまうのだ、彼は。
 そこに異存があるわけではない。ただ一人で帰るのが心細いのだ。誰か一緒に帰ってくれる奴が居るとは思えない。
 田城先生のところに通った帰りはなんとも思わない。一人でもそう思ったことが無いからだ。
 自室で一つ寝返りを打つ。時刻は夜中の一時を回っている。
 一人で帰るのが嫌なのではなく、俺は直帰することが嫌いなのかもしれない。だから汰瀬が屯する会議室に足を運び、先生のいる相談室に通う。
 それならば、そこにいる人物が汰瀬や先生でなくても良い事になってしまう。だがそうであって良いとは思えない。
 となると、俺は彼等に執着依存しているのだろうか。だが、どういう面で?
 再び寝返りを打つ。部屋全体は暗い空気が静止しており、何も活動していなかった。
 否、結局は自分の為なのだ。そこに人を介在させることで嫌なことから目を逸らそうとする。介在させるものが人以外であってはならない。それはふとした時に己を自覚させるからだ。
 再び寝返りを打つと白い壁が眼前にあり、視界の隅に時計が映る。もう二時に近かった。一つ溜息を漏らす。
 この時間は不快であるが、嫌いではなかった。
 不快なのは、自分の現状が頭を過ぎるから。
 嫌いでないのは、微睡んでいく過程がこの上なく好きだからだ。
 それからの意識は、沼の底に沈んで行った。
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