第一話
文字数 8,309文字
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街
巨大化した宇宙星人、空から降ってくる。街を破壊する。
男の声「待てぇ!!」
巨大化したヒーロー・ゴディア登場。
宇宙星人にドロップキック。
宇宙星人と戦うゴディア。
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ゴディア、劣勢。
宇宙星人、渾身の熱線を浴びせる。
ゴディア、避ける。
カウンターで、宇宙星人に必殺技・アルスアタッカーをお見舞いする。
M「地球滅亡を企み、やってくる宇宙人や怪獣、怪人たち。そんな敵から地球を守るのが
宇宙星人、爆発霧散する。
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「数年後」
探偵事務所。
ゴミが散乱する室内。
御影一光(32)、上半身裸で、100キロのダンベルを使ってトレーニング中。
壁には、ゴディアが夕日に向かって立っている写真。
ハムイ・ゴールドバーグ(24)がやってくる。
ハムイ「また筋トレなんかやってるんですか」
一光「勝手に入ってくんじゃねぇ」
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ハムイ「相変わらずのオールドスタイルですねぇ」
ゴミを避け、椅子にハンカチを置き、その上に座る。
一光「強くなきゃぁ、誰も守れねぇんだよ」
ハムイ「今の世の中、ヒーローに求められるのは知力! 腕力なんて、二の次ですよ」
一光「言ってろ。そのうち、痛い目見るぞ」
ハムイ「(鼻で笑う)まぁ、あなたがご自慢の腕力を振う機会がそもそもやってくることがないんですがね」
一光「何だと!?」
一光、ハムイに向かって、100キロのダンベルを剛速球で投げつける。
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ハムイ、指一本でダンベルを受け止める。
そのまま、指でダンベルをクルクル回して、
ハムイ「(溜息)そんな短気だから、見えるモノも見えなくなっているんですよ」
一光「後発の分際で、生意気言うんじゃねぇぞ」
一光、ハムイに掴みかかりに行く。
ハムイ、一光のスマホに着信。
『出動要請』と表示。
一光「今回こそ、叩きのめしてやる!」
ハムイ「相手が違いますよ」
二人、外に出ていく。
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一光、オンボロの車に乗り込む。
エンジンを掛けようとするが、かからない。
一光「くそ、ポンコツがっ!」
ハムイの声「乗せてあげましょうか?」
ハムイ、スポーツカーから声をかける。
一光「……結構だ」
一光、嫌そうな表情。
ハムイ「変な意地を張って……現場急行もヒーローの大事な任務でしょうに……」
ハムイ、溜息をついてスポーツカーで走り去っていく。
一光「ケッ! 現場急行? そんなのわかってるっつうの!!」
一光、全力ダッシュで走り出す。
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一光、国道を高速で走る。
N「地球に攻めてくる怪人どもは、正面切って地球を滅ぼしに来ることをやめた」
車窓から見える街の風景。
買い物客や、恋人の談笑、サラリーマンの営業風景が見える。
N「奴らは人間に化け、気づかれないように人類滅亡を遂行し始めた――人間を人間として殺しはじめやがったんだ」
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一光、道路を走る車を抜き去っていく。
N「敵の変化に合わせて、ヒーローもまた、やり方を変える必要を迫られた」
ケーキ屋の前までやってくる。
ちょうどスポーツカーからハムイが降りてくる。
ハムイ「意外と早かったですね」
一光「車ごときに後れをとる鍛え方はしてねぇっつうの」
一光、息が上がっている。
ケーキ屋はすでに警察により規制線が張られていた。
警官「あ、あなたたちは……」
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N「人間に紛れて悪さをする悪を叩くためには、まず犯人(悪)を見つけなければならない。ヒーローは、悪を見つけ出すために探偵家業を始めたのだ」
ハムイ、一光、バッジを見せる。
ハムイ「ディテクティブ・ヒーローです」
一光「ヒーローが悪を叩きに来てやったぞ!」
警官「ご苦労様であります!!」
規制線の中に入っていく二人。
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ケーキ屋・店内・厨房。
男性が後頭部から血を流して床に倒れている。
鑑識員による鑑識活動が行われている。
ハムイ、一光、来る。
現場で指揮を執っている松戸警部(38)に話しかける。
松戸「おぉ、来たか」
一光「呼んだのはそっちだろ」
松戸「別に呼びたくて呼んだわけじゃねぇよ。決まりだから、仕方なくだ」
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ハムイ「それで状況はどうなんですか?」
松戸「被害者はこのケーキ屋の店主。見ての通り、頭部を鈍器で数発。死因は外傷性ショックだ」
ハムイ「死亡推定時刻は?」
松戸「今朝の6時から8時の間だ。被害者は、ちょうど仕込みの最中だったらしい」
ハムイ「なるほど……それで凶器は?」
松戸「それが……」
ハムイ「見つかっていないんですか?」
一光「あんたらの探し方が悪いんじゃねぇか?」
松戸「警察をなめるな。しっかり探しているに決まってるだろ」
一光「じゃあ、犯人が持ち出したんじゃねぇの?」
松戸「それはない。犯行時刻の防犯カメラをチェックしたが、問題はなかった。必ず凶器はこのケーキ屋にある……はずだ……」
一光「情けねぇな。で、その容疑者やらとは目星がついているんだろうな」
松戸「あぁ、休憩室に集まってもらっている」
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廊下。
松戸、一光、ハムイが歩いている。
一光「容疑者というのは、やっぱりここの従業員か?」
松戸「そうだ。犯行時刻に、同じく開店準備をしていた従業員3人だ」
一光「その中に犯人、つまり人類滅亡を企む怪人がいるわけか……」
松戸「あぁ、そうだ」
ハムイ「それにしても怪人も姑息で手間暇のかかるやり方をするようになりましたね」
ハムイ、スマホをいじっている。
ハムイ「一人殺したところで、人類は滅ばないというのに……全く、効率ってものを考える知能がないんですかね」
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ハムイ、一光に向かって拳を突き出す。
一光「てめぇはヒーロー失格だ」
ハムイ、受け止めて、
ハムイ「あいにく僕が守っているのは”地球”ですので」
一光「”人”を守ってこそでだろ、あぁ!?」
ハムイ「意見の不一致ですね」
ハムイ、手を引いて、
一光「やっぱりお前にこの地球は任せられねぇな」
ハムイ「先輩が不甲斐ないから、出しゃばってるだけですよ」
松戸「お二人さん、もういいかい?」
一光、舌打ちする。
3人、休憩室前まで来ていた。
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休憩室。
森川三好、小金義友、相沢胡桃の3人が待機している。
久米刑事が聴取している。
久米「お疲れ様です!」
一光「いいから、さっさと始めてくれ」
久米「はい。まず右手に座っているのが、森川三好さん、27歳。ケーキ屋の従業員で主に販売を担当されています」
三好「私は、店長を殺したりしてませんからねっ!!」
一光「犯人にされたくなければ、開口一番 にその言葉のチョイスは不味いな」
三好「え?じゃあ、なんて言えば?」
一光「淡々と知ってることを教えてくれりゃあ、それでいい。その上で、あんたが殺してないかどうかは、俺が判断してやる」
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三好「はい……」
一光「それで?」
三好「私は、フロアでディスプレイを清掃したり、キャッシャーに今日のぶんのお金を入れたりしてました」
一光「被害者と会ったのは?」
三好「6時前に、出勤して来て挨拶しただけです」
ハムイ「それはどこで?」
三好「調理場です」
ハムイ「なるほど……何か物音や怪しい人影は見ませんでしたか?」
三好「いえ……とくには……」
ハムイ「そうですか……撲殺なら、それなりに何かしらの音が出るものだと思うんですけどね」
三好「そ、そうは言われても。調理場とフロアは扉で仕切られていますし……」
一光「もういい。取り合えず、次だ」
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久米「はい。真ん中に座っていらっしゃるのが、小金義友さん。一護さんと同じパティシエです」
一光「ほぉ。じゃあ、同じ調理場で働いてたってわけか?」
義友「いいえ。配達の人が日にちを間違えて資材を配達に来てしまったので、それの整理に倉庫にいました」
一光「それは何時ごろだ?」
義友「6時丁度です。これが業者から受け取った受領書です。時間も書いてあります」
松戸、受領書を受け取る。
松戸「確かに6時に受け取っているな」
一光「つまり、あんたは犯行時刻に被害者と一緒にいたというわけか」
と、義友を鋭く見つめる。
義友「ちょっと待ってください。その時は、配達の人も一緒でしたし……そのあとは、その彼と倉庫に行きました」
松戸「久米、その配達人に裏をとってこい」
久米「はっ!」
久米、出ていく。
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シンとした室内。
一光「おい、進行役がいなくなったぞ? どうすんだ?」
松戸「警察を何だと思ってる! これだから、お前たちは嫌いなんだ。えー、では、あなたの当時の様子を教えて頂けますか?」
ハムイ「そう言いつつも、やるんですね」
胡桃「相沢胡桃と言います。私はただのバイトで……」
ハムイ「ん? バイトなのにこんな朝早くから出勤されるんですか?……ケーキ屋の事は詳しくありませんが、開店は10時でしょ? 何か準備することがあるんですか?」
胡桃「そのー……昨日、忘れ物をして、それを取りに来たんです」
松戸「忘れ物とは?」
胡桃「財布です」
松戸「忘れ物を取りに来た後は、どうされていたんですか?」
胡桃「家に帰るのもあれなんで、この休憩室で、雑誌読んだり、スマホみたりしてました」
一光、ハムイ、胡桃を鋭く見つめる。
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松戸、手帳にメモをとる。
松戸「とりあえず、3人ともきっちりしたアリバイはないというわけか……」
一光「まぁ、そうだが……最後のバイトは何か隠してるな」
ハムイ「ええ」
松戸「ん? 何を隠しているというんだ?」
一光「(溜息)本当に何も見てねぇな。いや、この場合は、嗅いでないか……」
松戸「どういうことだ?」
ハムイ「香水ですよ」
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松戸「彼女が香水をつけているくらい俺もわかっていたさ。今時の若い女性なんだ。香水の何が問題だ?」
一光「あの子は、この後仕事なんだろ? ケーキ屋で今から働くのに香水をつけるなんてありえねぇ。香水がケーキの匂いと混じってしまうと、購買意欲が下がるからな」
松戸「じゃあ、何のために?」
一光「それだけ消したい匂いがあったんだろ?」
松戸「まさか血!? あの子が犯人なのか……」
ハムイ「そう決めつけるには、まだ証拠がたりませんね」
一光、部屋を出ていこうとする。
松戸「おい、何処に行くんだ!?」
一光「証拠探しに決まってるだろ。あんたが探せなかった凶器も探し出してやるよ」
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調理場。
一光、現場を歩いて見て回る。
一光M「まずは凶器だな……いくら警察が間抜けとはいえ、このケーキ屋にあるものは徹底的に調べているはず」
一光、戸棚を開けて、見る。
一光M「血を洗おうとも、ルミノール反応が出る。つまりは、この辺に仕舞ってある道具は凶器足りえない。一体、何で撲殺した……ん? 撲殺? もしかして……」
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一光、包丁を見る。
一光「っ!?」
一光、休憩室に駆け込む。
一光「おいっ! 聞きたいことがある」
松戸「なんだ?」
一光「あんたらは本当にあの調理場にある道具を調べたんだよな?」
松戸「あぁ、もちろんだ」
一光「まさか、撲殺できそうなものしか調べてないとかいう手抜き捜査はしてないだろうな?」
松戸「手抜きとは心外だ。だが……お前の言う通り、撲殺に使えそうな道具しか調べていない。刃物類は除外してある」
一光、目頭を押さえる。
一光「これだから、あんたらは無能扱いされるんだ」
松戸「なんだと?」
一光「今すぐ、あの調理場の道具をすべて調べ直せ」
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鑑識員が調理場を調べている。
松戸、一光、ハムイ、その様子を見守る。
松戸「こんな事しても無駄だ。何も出てきはせんぞ」
一光「そういう傲りに足元をすくわれんだよ」
監視員「警部!! ルミノール反応が出ました!」
松戸「なに!?」
一光「ほら、言ったろ?」
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鑑識員員、キッチンバサミを持ってくる。
ブラックライトを当てたキッチンバサミの刃部分が青白く光っている。
一光「やっぱりな」
松戸「まさか……」
ハムイ「ですが、これでは人を撲殺することはできませんよね……どういうことでしょうか」
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一光「柄の部分で殴れば撲殺も可能だが……まさか刃の部分から反応が出るとはな……おい、被害者に切り傷はなかったんだよな?」
松戸「あぁ、それは一つもなかった」
ハムイ「一光さん、犯人が被害者を殺害した方法、わかりましたか?」
一光「お前こそ、どうなんだよ?」
ハムイ「さぁ、どうでしょう。ご想像にお任せします」
ハムイ、一人部屋を出ていく。
一光「(舌打ち)」
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松戸「お前ら、仲がいいのか、悪いのか、どっちなんだ?」
一光「これで仲がいいと思うなら、あんたは本当の無能だよ」
松戸「フンッ! 能力なんぞいらん。俺はただこの殺人を犯したヤツが許せんだけだ。ソイツを見つけ出すためなら、喜んであんたらの駒にだってなってやるさ」
一光「安心しな。あんた達をきっちり使って、見つけ出してやるからよ、人類滅亡を企む怪人どもをな」
三好、来る。
三好「あのー」
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松戸「どうしてここに!? 待機しておいてもらわないと困りますよ」
三好「それがケーキをそのままココに放置しておくとダメになってしまうので、ディスプレイに移動させたいんですが……まぁ、今日はお店を開けないでしょうから、どっちにしろ全部破棄になってしまうんでしょうけど」
松戸「わかりました。そういうことならいいでしょう。ただし、店外に持ち出すのはナシですよ」
三好「はい」
三好、ケーキを運ぶ。
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一光、グゥゥと腹の虫が鳴る。
一光「なぁ、そのケーキ、俺にくれよ」
三好「え?」
一光「どっちにしろ売れないんだろ。もちろん金は払うぜ」
三好「はぁ……(と、松戸を見る)」
松戸「構いません。(一光に)よく殺害現場で食欲なんか湧くな」
一光、手あり次第にトレーに乗っているケーキを食べる。
一光「うめぇ、うめぇ! こんなうめぇケーキを作れる人間がいなくなっちまうとは、確かに人類の損失だぜ」
一光、シュークリームを口に運ぼうとして、手を止める。
一光「……」
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休憩室に一人でいるハムイ。
ハムイ、ある一点を見つめ、
ハムイ「なるほど……そういうことですか」
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一同が調理場に集められる。
ハムイ、くる。
ハムイ「一光さん、本当に犯人がわかったんですか?」
一光「もちろんです」
ハムイ「そうですか。それはそれは楽しみです」
一光「もうお前に好き勝手はさせねぇよ」
松戸「いいから、始めてくれ」
一光「そうだな。まず、この殺人事件の最大の謎は、”凶器は何か”という事だ」
一光、証拠袋に入ったキッチンバサミを手に持ち、
一光「現在わかっているのは、このキッチンバサミが犯行に使用されたこと。ただし、直接の凶器ではない……となると、このハサミは被害者の血が付いた何かを切るために使われたと考えるべきだろう」
松戸「それはなんだ?」
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一光「まぁ、考えてビニール袋だろうな」
ハムイ「……ブラックジャックですか」
一光「さすがだ」
松戸「ポーカーのことか?」
ハムイ「違いますよ。ブラックジャックとは、布状のものに砂や石を詰めて使う殴打用の武器ですよ。あなた本当に警官ですか?」
松戸「冗談に決まってるだろ。さっさと話しを続けてくれ」
ハムイ「犯行に使用されたブラックジャック用の袋は切り刻んで排水溝にでも流したんでしょうが、中身は何なんです?」
一光「中身はこれだ」
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一光、シュークリームを置く。
松戸「シュークリームがどうした?」
一光「これこそが凶器の正体だ」
松戸「ん?シュークリームをビニール袋に入れて殴り殺したっていうのか?」
一光「冴えてるじゃねぇか。その通りだ」
松戸「待て待て。そんな柔らかいもので人を殴り殺せるものか!」
一光「それができるんだぜ」
一光、次々にシュークリームを握りつぶして、クリームだけをビニール袋に入れていく。
松戸「何をするんだ?」
一光「まぁ、見てな。行くぞ」
一光、ブラックジャックを振り回し、近くのグラスを殴る。
グラスは粉々に砕け散る。
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松戸「なっ!?」
一光「ほらな」
松戸「どういうことだ? 中身はクリームだろ!?」
一光「そうだ。シュークリームのクリームは非ニューロン流体っていうものだ」
松戸「なんだその怪人みたいな名前のものは?」
一光「クリームは非ニューロン流体の中でもダイラタント流体に分類され、普段は柔らかいが、強い衝撃を加えると瞬時に固くなる性質があるんだよ」
松戸「そうだったのか……」
ハムイ「テレビ番組の実験なんかで見たことありませんか? 小麦粉を水で溶かしたプール上を高速で動くと沈みませんが、動きを止めると徐々に沈んでいくあれですよ」
実験画。
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松戸「凶器はわかった。それで犯人は? やはり怪しいと思われた相沢胡桃さんか!?」
ハムイ「彼女の香水については私が説明しましょう。これを……」
ハムイ、コンシーラーを置く。
胡桃、ハッとする。
ハムイ「このコンシーラーは、胡桃さん、あなたのですよね。休憩室で見つけました」
胡桃「……はい」
一光「あー、わかった。わかった。そっちはいい」
松戸「いいもんか! 説明してくれ」
ハムイ「(一光に)よろしいので?」
一光「察しろよ。まぁ、何もわかってねぇようだから、簡単に説明してやれ」
○34P
ハムイ「彼女と被害者は性交をしていたんですよ」
松戸「なっ!?」
赤面する胡桃。
ハムイ「このコンシーラーは、キスマークを隠すため、そして香水はにおいを誤魔化すためにつかっていたんですよ。レディーにこんなことを聞くのは気が引けますが、そうですよね?」
胡桃「……はい。私と一護さんは、皆に内緒で付き合っていました」
松戸「どうしてまた店で……」
胡桃「一護さん、仕事で忙しいから……外で会う暇がなくて……それで……」
と、泣き出す。
○35P
松戸「殺害したのは、そのー、痴話ゲンカが理由ですかね?」
胡桃「わ、私は一護さんを殺したりなんかしていません!! 私は本当に彼のことを愛して……」
と、さらに泣き出す。
松戸「ちょ、ちょっとお嬢さん……」
一光「あーあ、泣かせちまって」
松戸「いや、これは捜査の一環で……弱ったな」
一光「これで拭いときな」
一光、胡桃にクシャクシャのハンカチを投げる。
胡桃「くさい……」
一光「い、いいから黙って拭いとけ」
胡桃「……はい」
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一光「そろそろ終わりにしようか」
ハムイ「そうですね」
一光「それで、今回はどうすんだよ?」
ハムイ「先輩に譲りますよ。まぁ、間違っていたら、僕がきっちり尻ぬぐいをしてあげますから」
一光「はっ! どうせまだ犯人の目星がついてねぇだけだろ」
ハムイ「調子に乗りすぎない方がいいですよ」
一光「フンッ! こちらから明かす前に名乗り出た方がいいぜ。怪人さんよ。名乗り出ねぇなら、成敗だ」
「……」
一光「そうかい。なら、成敗だ。小金義友、あんたが犯人だ」
一光、義友に向かってビシッと指をさす。
○37P
義友「なっ、ち、違う!!」
一光「材料ってのは日持ちしねぇから、その日分しか用意しないんだろ。んで、ここにクリームが数分あるってことは……犯行に使用したクリームでシュークリームを作ったんだろ?」
松戸「お前は、それを食ったのか?」
一光「あぁ、中には血も混じっているものがあった」
一光、シュークリームを松戸に投げる。
義友「……」
一光「この中で、シュークリームを作れるのは被害者を除いてあんたしかいない」
義友「くっ!!」
義友、姿を変え、カニの怪人・ブローケンになる。
ブローケン、窓の外へ飛び出る。
○38P
松戸「追え!!」
一光「ここからはヒーロータイムだ!」
一光、ハムイを見て、
一光「俺の得物だ。手出し無用だぞ」
ハムイ「ええ、先輩が負けるまで手は出しません。存分にやられてきて下さい」
一光「負けるかよ。こっちが本業だ」
一光、ブローケンを追いかけて、外に飛び出る。
○39P
一光「変身!!」
一光、ヒューマンサイズのゴディアになる。
逃げるブローケンに追いつき、蹴りを入れる。
ゴディア「貴様に情状酌量の余地なし!」
ブローケン、反撃してくる。
ゴディア「裁判はいらないな? 有罪!!」
ゴディア、攻撃を避け、カウンターのパンチを一撃繰り出す。
ブローケン「くっ、くそぉぉ!!」
ブローケン、爆発霧散する。
○40P
ゴディア、変身を解き、一光の姿に戻る。
一光「謎を解こうが、怪人をぶっ倒そうが、後に残るのは無念……少しは死んだアンタに報いれたか?」
ゴディア、空を見上げる。
(了)