看守長の寝言

文字数 334文字

囚人諸君(しゅうじんしょくん) 起きたまえ

とっくに目覚(めざ)めの時間だぞ

いまはすでに朝なのだ

いや つねに朝なのだ

わたしが朝だと言ったなら

それはもはや朝なのだ

たとえ諸君の精神が

夜の中だとしてもだぞ

ほら 雑巾(ぞうきん)を手に取って

その鉄格子(てつごうし)をきれいにせよ

一本たりとも残さずだ

わが作りし監獄(かんごく)

美しくなければならないのだ

システムとはそういうものなのだ

おしなべてそういうものなのだ

諸君はそれぞれ柱である

監獄を支える柱である

柱が狂えばままならない

支えることはままならない

支えよ 支えよ

金色(こんじき)(かがや)見張(みは)(だい)

支えよ 支えよ

うまくできたらごほうびに

(きん)子牛(こうし)のひとかけくらい

諸君らにもわけてやる

これは約束ではない

守る義務などあるはずもない

なぜなら諸君は囚人で

わたしは看守(かんしゅ)であるからだ

このシステムにある以上

わたしが神であるからだ
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