(一)

文字数 272文字

 ある初夏の日曜日、俺が小学一年生の長男・秀人(しゅうと)とその妹で四才になる愛実(まなみ)を連れて公園に遊びに行こうとして玄関ドアを開けると、そこにセーラー服を着た少女が立っていた。
 俺のことを見て軽く会釈をすると、少女の長い髪がはらりと前に垂れた。そして姿勢を直して「こちらは安野(あんの)秀太(しゅうた)さんのお宅ですか」と言った。
 俺は「ええ」と返事をした。
「私、飯室(いいむろ)(かおり)と言います。母からここだと聞いてきました」
 ちょうどそのとき、妻の愛生(あき)が奥から現れた。彼女も一緒に公園に行くのだ。
 そのタイミングで少女は、驚いたことに、「こちらでお世話になってもいいですか」と言った。

(続く)
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