3 ✿ アロマオイルに、象?

エピソード文字数 1,212文字

殿下の攻撃から、萌栄を守った鋼。


鋼は樹の上から、このように警告を発するのだった。

萌栄ちゃん、発、気をつけて! 雨音が隠れよった!
おっ。そういえばおらんな? 雨音ぇ~、どーこだー?

空々しいぞ、隠れるだろ? 角に陰。そのまんまやねーか

うちの暗号、ばれちょっとか~。つまらんの~
では、(きょう)はお分かりで? 香遁こうとん!!
発と戦っていた媛は、樹の枝にあがると、あめ玉くらいの小さなハート型のカプセルを放つ。
地面や木にぶつかり割れたカプセルから、刺激性の強い清涼な香りがした。
うわっ、この香りキツイ・・・頭痛い、く、くらくらする
早く! 鼻をふさいで
この香り、なに…?

この森のスギヒノキから自家精製したオイルです。


毒はないけど、ちょっと強いんですの

媛は、同じ香り玉を投げた。

香遁(こうとん)五遁(ごとん)三十法(さんじゅうほう)にはないけれど。


 香りは陽術(ようじゅつ陰忍(いんにん)のために注意を引くのが私の役目

雨の音に隠れ、の背後に岩のように丸いものが近づいた。


その丸いものが、縦に伸びて、ゆーっくりと人の形に変わる。

人の気配…? うわぁ!?

雨音が、発に馬乗りしてきたのだ。


発は、地面にうつぶせにされた。

うずら隠れ、せいこーう!
雨音は巨体を生かし、自分を岩に見せかけて、ゆっくりと彼へ近づいていたのだ。
発!!

発を離せ!!

萌栄と鋼は、彼を助けようとしたが。
ちょおっと待った
わたしたちが、お相手ですよ

殿下が二人をはばみ、攻撃してきた。


萌栄は足止めをくらい、を助けにいけない。

くるし…い。みたいに重い…
発、おまえ、ほっそいなぁ。ちゃんと食ってる?

雨音は笑いつつ、バタバタする彼の両手をとり、背中で組ませる。


だがしかし、その手に持つものを見て、雨音の表情が引きつった。

象はネズミが苦手だったよね?

その手には「ねずみ花火」が握られていた。


発は手を後ろに回された状態で、指のリングで火を点ける。


彼が指で花火をはじいたのと、雨音が発の上からのいたのは同時だった。

うわっ!あちちっ!!

回転するネズミ花火に、雨音は足止めをくらう。


その間に発は、雨音から離れると、萌栄と鋼のそばにかけよった。

発!! 良かった、無事で。ケガはない?
発、大丈夫か。雨音は重かったやろ?
心配いらないよ
ふーん。案外しぶといなぁ

殿下はそう言うと、樹の上にぴょーんっと上がった。


シン…と辺りが急に静かになった。


ぴちゃん…ぽちゃん…と雨音がきわだつ。

風が止んだ。いや…風を止めた!? まさか殿下・・・)

風遁の四つめの技は、風を止めること。


彼は風遁の達者だ。

あおぎ見よ

雨上がりの陽光を背に、殿下は扇子を出すと、パッと開いた。


扇子には『(かい)(うん)(けん)(じつ)』と書いてある。いつの間にか雨が止んでいた。

飛車(ひしゃ)

扇子をパチンッと閉じると、苦無をかまえ、萌栄めがけて飛びこんできた。

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登場人物紹介

日高萌栄 (ひだか・もえ


中学2年生、13才の少女。

カピバラをこよなく愛する。

重黒木 鋼じゅうくろぎ・はがね


中学2年生、13才の少年。機械いじりが得意。

椎葉 発(しいば はつ)


中学2年生、13才。

萌栄の友達。花火師の孫。

黒木 殿下(くろき でんか)


萌栄のライバル

那須 雨音(なす あまね)


殿下の友達。

黒木 媛(くろき ひめ)


殿下の妹

日高 結芽(ひだか ゆめ)


萌栄のお母さん

日高 地平(ひだか ちへい)


萌栄のお父さん

日高 雲水(ひだか うんすい)


萌栄の祖父

重黒木 功(じゅうくろぎ こう)


鋼のお父さん

重黒木 理玖 (じゅうくろぎ りく)


鋼のお母さん

椎葉 康次(しいば やすじ)


発の祖父。花火師

黒木 智子(くろき ともこ)


殿下、媛のお母さん。

黒木 未夏 (くろき みか)


クラスメイト

中武 陽(なかたけ はる)


クラスメイト

那須 貴也(なす たかや)


クラスメイト

那須 由子(なす ゆうこ)


クラスメイト

お殿様。


西方の里を治める、お殿様。

南朝の忠臣、その子孫。

忠平(ただひら)


お殿様が助けた忍者。

加藤清正に仕えていたが、毒殺の濡れ衣をかけられ、逃げてきた。

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