2 いざ思い出への旅

文字数 448文字

 翌日の昼、二人は駅前で待ち合わせると、ファミレスで軽く昼食をとって、目的の店に出発した。

 広い国道を渡り、橋を二本渡り、坂を登って降りて、踏切を渡り、植物園の脇を通り、またそこからしばらく歩いて……その場所はあった。
はー、やっと着いたー! ここだよ、多島さん!
 右手を大きく開いて店先を指す由希乃。
えっと……。もしかして、今日は定休日?
へ? ……あああああああああああああ!
 由希乃は閉まったシャッターを指差して悲鳴をあげた。
残念だったね。また今度来ようよ
うう……ごめんなさい。久しぶりだから、ネットで調べれば良かった……
 騒ぐ二人に気付いたのか、お隣の花屋の店員さんが店の中から出て来た。
 三十ぐらい、エプロン姿の女性が由希乃たちに声をかけた。
あの、お隣の喫茶店に御用かしら?
はい……
 由希乃はぐったりしたまま返事をした。
 彼女のかわりに多島くんが店員さんに訊ねた。
こちらのお店、今日は定休日ですか?
いいえ……去年ご主人が亡くなって、閉店されたんですよ
うそお……もう入れないの? うう~~~~
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登場人物紹介

橘 由希乃(女子高生) 
商店街の本屋でバイトしている。内気だがすぐテンパり、暴走しやすい性格。
そのため、人見知りなのか強引なのか分からないと評される。

本屋の向かいでバイトしている多島くんと付き合っている。勉強よりも交換日記を書くのに忙しい。

多島 勝也
本屋の向かいにある弁当屋でバイトしている若者。現在、資格試験の勉強中。
自分に自信がなく、つい素っ気ない態度を取って誤解されがち。

本屋でバイトしているJK、由希乃と付き合っており、彼女との年の差をとてもとても気にしている。その差十歳だが、見た目より若いと言われる。

花屋の奥さん

とある町で出会う。ご主人と二人で花屋を経営している。

花屋のご主人

夫婦で花屋を経営する男性。わりと尻に敷かれるタイプ。

喫茶店のマスター

由希乃と多島くんの行く先で待ち受けている。

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