第一章・第三話 明けぬ叢雲《むらくも》

文字数 6,875文字

「――……最悪」
 天璋院(てんしょういん)の居所から、臨時の遺体安置所にしてあった部屋に戻って、開口一番、和宮(かずのみや)はボソリと呟いた。
 棺桶はまだ置いておいてくれるよう頼んだにも関わらず、そこは(もぬけ)の殻だったのだ。
「誰かおらぬか! 何故(なにゆえ)遺体がごっそり消えている!」
 叫んでも、誰も駆け付けて来ない。
 和宮の後ろに付いて、一緒に戻って来た滝山も、代わりに女中に声を掛けるでもなく黙っている。最近の和宮の態度に、辟易しているのか呆れているのか、女官さえ誰も返事もしない。
「宮様。もうよろしいでしょう。火之番(ひのばん)はすべて、以前からいた者たちしかおらぬということは判明したのですから、遺体に用はありますまい?」
 滝山は、必要最低限のことだけ告げて、一礼したあと立ち去る。
「……ッ、まさか」
 この時初めて、和宮は家茂(いえもち)の傍を離れたことを後悔した。と同時に駆け出している。
 遺体の保管でさえ、こう(・・)なのだ。
 いくら何でも、昨日の今日で、しかもこの昼日中にまた、熾仁(たるひと)たちが侵入して来るとは思わないが、今は碌に動けない家茂にとどめを刺しに来ない保証などない。万が一、そうなったとして、周りにいる火之番たちが、家茂が殺されるのを黙ってみていることはさすがにないとは思うが、万が一――
 家茂の寝ているはずの部屋の入り口が見え、走る速度を上げる。
「――……家茂っ……!」
 入り口の両脇に待機している火之番を押し退()けるようにして駆け込むと、ちょうど目を覚ましていたらしい家茂の傍には、奥医師の松本が座っていた。
 家茂は、重ねた布団に背を預けるようにして上体を起こし、飲み終わったと思しき薬の器を、松本に差し出している。
(ちか)?」
御台(みだい)様」
 松本は一礼すると、家茂の枕元を和宮に譲るように、座ったまま下がった。
「ちょうどようございました。御台様も包帯を……」
 しかし、和宮の耳には松本の言葉は入っていない。ただ、霞んでいく家茂だけ見て近付き、先刻まで松本が座っていた場所へペタンとへたり込む。
 その衝撃で、いつの間にか目に溜まっていた涙が、ボロボロと頬を転げ落ちるのを感じた。涙の膜の向こうに霞んでいた家茂の姿が、はっきり見える。
「……どした?」
 柔らかく苦笑しながら、小首を傾げた家茂が、涙を優しく拭ってくれる。
 違う、泣いてない。そう、明らかに嘘だと分かることを言おうとして、ただ必死で首を横へ振る。
 言葉は出なかった。嗚咽に遮られて、言い訳しようとすればするほど、涙が止まらなくなる。
(何で)
 自分でも分からない。
 ただ、起きている家茂の顔を見たらホッとして、張り詰めていた何かの糸が切れた。それが、何の糸だったのかも分からない。
 違う、何でもない、何もないの――必死にそれだけを言おうとするが、結局、嗚咽以外に口から出るものもない。
 いつしか、(くる)み込まれた彼の腕の中で、和宮は随分長いこと泣きじゃくっていた。

***

「――で、どうなんだ。こいつの傷の具合」
 身を起こしたままの家茂の膝を枕代わりに、泣き疲れたらしい和宮はいつからか寝息を立てている。
 彼女の緋色の髪を、指先で優しく梳いてやりながら、彼女の顔に落としていた視線を上げると、松本医師が彼女の手の包帯を換えているのが目に入った。
 包帯の下から、一文字の傷が姿を現し、家茂は無意識に顔を(しか)める。
「ご覧の通りです。幾針かは縫いましたが、上様に比ぶれば浅手でございますよ。完治には、三、四日、見ていただければよろしいかと」
「そっか」
 ホッと安堵の息を漏らしたが、苛立ちは消えない。
(……綺麗な肌なのに、傷なんか付けやがって……)
 苛立ちの矛先が向いているのは、熾仁だ。
 家茂が駆け付けた時、熾仁はあろう事か、和宮を思い切り突き飛ばしていた。家茂が受け止めなければ、彼女は庭先に落ちていただろう。
 幸い、あの場所には岩や沓脱石は置いていなかったので、叩き付けられても大事には至らなかっただろうが、縁側からはそれなりの高さがある。
 それより前の経緯は見ていないので何とも言えないが、彼女の腕の傷を付けたのも、恐らくは熾仁だ。
(あの野郎、口先だけじゃねぇか)
 和宮が熾仁に失望した一件と言い、『和宮をまだ愛している』と言いながら、いざとなったら彼女より自分を第一にしか考えない男なのは、すでに疑いようがない。
 百歩譲って、彼女を何よりも最優先にできるようなら酌量の余地もあるが、最早一切の容赦も要らないだろう。
 しかし、何より腹立たしいのは、ほかでもない自分だ。
(……もう少し早く駆け付けられてたら、こんな傷、負わせやしなかったのに)
 彼女の傷口へ手を伸ばしそうになって、思い留まる。今は、治療の最中だ。
 そんな家茂の内心には頓着せず、松本は和宮の傷口を消毒すると、新しい当て布を当て、包帯を巻き直した。
「……松本」
「はい、何でしょうか」
「こいつの抜糸まで、悪いけど大奥(ここ)にいてもらえるか」
 松本は、包帯の端をキュッと締めると、顔を上げる。
「上様の抜糸までおりますよ。恐れ入りますが、上様のほうが遥かに重篤ですゆえ」
「一眠りしたら大分よくなったと思うんだけど……」
 周囲はもう薄暗い。時刻は夕方に近いだろう。
 昼間、少し目を覚ました折には、正直喋るのも億劫だった。
 しかし、今は頭も幾分かすっきりし、心なしか身体も軽い。傷の痛みも随分軽減したように思える。
「さもありましょう。眠りというのは、病にせよ怪我にせよ、回復を助けます」
 松本は、『当然だ』と言わんばかりに頷いた。
「さりながら、上様におかれましてはまだ油断は禁物でございます。今宵も早くお休みなさいますよう」
「……分かってる」
 肩先を竦めるようにして返事をすれば、連動するように左脇腹がぎくりと引き()る。
「では、また後程(のちほど)
 その様を、平板な目で見つめた松本は、一礼して立ち上がった。二、三歩後退(あとじさ)った彼がきびすを返すと、彼の退出と入れ替わるように、開け放したままの障子の外から、桃の井が顔を見せた。
 彼女は、松本と会釈ですれ違うと、家茂と和宮のほうへ歩みながら、和宮に気遣わしげな視線を向ける。
 家茂は、身振りで静かにするように示すと、「座ってくれ」と(ひそ)めた声で言った。
 桃の井は、また小さく会釈し、家茂の向かいへ腰を下ろす。
「……宮様は」
「眠ってるだけだ。昨日からこっち、……心配掛けたからな」
 和宮の寝顔に目を落とすと、家茂は涙の痕が残る頬に、そっと指先を這わせながら言葉を継いだ。
「……で、あんたはどこ行ってたんだ」
「宮様のご指示で、情報収集です。と言っても、まだ調べ切れていないこともありますが」
「そっか。何調べてた?」
 すると、桃の井は一瞬言い淀むように口を閉じる。直接の(あるじ)である和宮が眠っているのに、先に家茂に告げていいのかを迷っているのだろう。
 そう断じた家茂は、桃の井に静かな流し目をくれた。
「俺が知る必要のないことなら言わなくていいけど、多分早晩、俺にも知れることだよな?」
「……申し訳ございません」
 彼女は頭を下げると、口を開く。
「宮様からのご用命は、此度の騒動の全容を調べること、熾仁様の現在地を常に把握できるようにしておくことと、(かつ)麟太郎(りんたろう)義邦(よしくに)殿と川村崇哉(たかなり)殿の両名と緊密に連絡を付けられるようにすること、そして、一橋(ひとつばし)慶喜(よしのぶ)殿を徹底的に洗うことです」
「……へぇ」
 家茂は、目を(しばたた)いた。
「理由は聞いてるか?」
「はい。此度の騒動の全容は、言わずもがなかと。熾仁様に関しては、此度のように突然襲撃して来られては(たま)らないから。勝殿と川村殿との連絡は、上様が一番信頼しておられるからだと。慶喜殿に関しては、……これは、わたくしには宮様のお考えは図り兼ねますが、何を考えている男か知りたいと(おっしゃ)っておいででした」
「そうか……」
 再度、和宮の顔に目を落とす。
 家茂自身は、先刻まで眠っていたので、正直まだ対処については頭が回っていなかった。聞いてみれば、どれも今回の件の対応としては頷ける策だ。
「……何か、過不足がございますか」
「……いや。で、どこまで終わってんのか、訊いていいか」
「騒動全容の解明と、慶喜殿のこと以外は(おおむ)ね」
 家茂は小さく頷きながら、目を伏せた。
(……慶喜、か……)
 あの男とは、将軍職就任後、少ししてからの知己だ。
 慶喜は、なぜか家茂を付け回していたが、かなり長いこと話し掛けて来ることもなく、直接的に付き纏われるより精神が疲弊したのを覚えている。
 外国人居留地で一騒動あった時に、どうした(はず)みか一緒に解決したのが縁で、付き合いが始まった。
 (おも)には武術鍛錬上のそれで、ある意味で互いの手の内は知り尽くしていると言える。
「つきましては、上様」
 桃の井の声に思索を遮られ、家茂は現実に返った。
「上様が、慶喜殿のことでご存じのことは、何かございますか」
「……そうだな……何も知らねぇって言ったほうが正しいだろうな」
「と(おっしゃ)いますと」
「付き合いはそれなりに長いけど、上っ(ツラ)だけだってことさ。真剣で()り合ったのも初めてだったし」
 積んだ布団に背を預け、()()るようにして天井を見上げる。
 幾度か試合(しあ)った木刀での勝負は、ほぼ互角だった。ただ、真剣での立ち合いだとどうなるかは読めなかったし、()り合う機会があるとは思っていなかった。
 覆面で顔を隠していた相手が、『慶喜だ』と気付いた刹那が隙になったのか、気付いた時には左脇腹を(やいば)で綺麗に撫でられていた。
(……あの野郎……こっちが俺だってことは分かってたはずなのに、遠慮なく斬り付けて来やがった)
 無意識に眉根を寄せて、傷を負った左脇腹へ手を添える。飛び退()くのが一瞬遅れていたら、今頃家茂は、文字通り輪切りにされていたはずだ。
 これまで、持って回った言い回しと、常に変わらない笑顔と言う名の無表情の所為で、何を考えているかいまいち掴めない相手だった。けれど、今回の一件で、はっきりしたことがある。
「――あの方は……慶喜殿は、上様を殺すおつもりで?」
 脳内で考えたことが、耳から聞こえて来て、家茂は(はじ)かれたように声のほうへ視線を向けた。
 強張(こわば)ってしまった錯覚を覚える口元を無理矢理動かそうとするが、結局言うべき言葉が見つからず、口を閉じる。
「それは、上様と慶喜殿が、十四代の座を争ったことに関係が?」
 目を伏せるように逸らすのと同時に問いを重ねられ、家茂は桃の井から逸らしたままの目を見開いた。
 一瞬、詰めた息を吐き出しながら、彼女に向き直る。
「……相変わらず優秀だな」
「恐縮です」
「だから、褒めてねぇから」
 はあっ、ともう一度溜息を()いて、また背を積んだ布団へ預けた。
「……争ったっつっても、俺らの意思じゃない。あんたもとっくにご存じなんだろうけど」
「はい」
 律儀に返事をした彼女にチラリと目を向け、後頭部も布団へ沈める。
「勝ったの負けたのってのも、はっきり言って俺らは完全に蚊帳(かや)の外だった。俺個人としちゃ、『ああ、また周りの権力争いが好きな大人がバカやってる』くらいにしか思ってなかったけど」
「慶喜殿には違った。そういうことでしょうか」
「……さぁな。あいつとマトモに話したのはこの一年くらいの間のことだし、十四代争いについちゃ、話題にも(のぼ)らなかった。ただ、あいつ陣営が十四代争いに敗れてからこっち、謹慎が解けるまでに多分、あいつ個人としても色々思うところはあっただろーけどな」
 実際に、口や態度に出すことと、お(なか)の中で考えていることがまったく違う。慶喜は、そういう類型の人間なのかも知れない。
「分かりました。参考になるご意見をありがとうございます」
「お役に立てたなら何よりだよ」
「じゃ、そろそろ横になる?」
 不意に下から声がして、見開いた目が、家茂の膝の上からこちらを見上げる瞳とかち合う。
「……お前、いつから」
「ちょっと前。だから、姉様との話もほとんど聞かせてもらっちゃったかも」
 んしょ、と言いながら、和宮は身を起こす。
「あ(いった)ッ……」
 今までほぼ畳の上で横になっていた所為か、身体が強張(こわば)っていたらしい。反射で漏れた悲鳴に、家茂と桃の井は同時に手を差し伸べた。
「ありがと」
 どちらにともなく言った和宮は、足を自身のほうへそろそろと引き寄せ、居住まいを正す。
「……さっきは、ごめんね」
 なり、和宮は視線を逸らして俯いた。
「は?」
「いや……いきなり泣き出したりして、家茂きっと訳分かんなかったでしょ」
 家茂は、キョトンと目を(みは)り、次いで小さく吹き出した。
「……何よぅ」
「別に。ちっとは落ち着いたか?」
 苦笑混じりに言って、不満げに膨らんだ彼女の頬に手を伸ばす。
「……うん……」
 上目遣いにこちらを見る彼女の、尖った唇さえ愛らしい。山桜桃(ゆすらうめ)の果実のようなそれに(かじ)り付きたいが、今は脇腹の傷だけが家茂の自由な動きを阻害していた。
 仕方なく、代わりに彼女の手を握る。
「俺も、……ごめん。心配掛けたろ」
「……ホントね。腕に自信はあったみたいなのに」
 吹き出した意趣返しとばかりに、和宮はジロリと家茂を()め付けた。
「悪かったってば」
「悪いと思うなら教えてよ。どういう状況で、あんたこんな怪我したの」
「どういうって……」
 家茂は、記憶を手繰(たぐ)るように考え込んだ。
 昨夜、突然半鐘が鳴り響き、側付きの者たちは崇哉を除いた全員が、状況確認にすっ飛んでいった。そのあと、いくらもしない内に家茂の中奥にある居所へ現れたのが、黒覆面の男――慶喜だ。
 もっとも、相手が慶喜だと気付いたのは、少し剣を交えたのちのことだ。
「――で、その直後に桃の井が飛び込んで来たんで、その隙に慶喜は崇哉と斬り合う形になって、俺の視界からは消えたんだ。次に俺があいつを見たのは、あいつが有栖川宮(ありすがわのみや)を連れに来た時だな」
「……そう……」
 和宮は、強張った表情のまま、唇を噛み締めるように引き結んでいる。
 彼女の考えていることは、家茂にも分かった。こちら側で進んでいるのは、あくまでも状況の整理だけで、解決はしていない。何一つ――。
「ところで上様。今一つ、お伺いしたい儀が」
 言うべきことが見つからず、落ちた沈黙を破ったのは、桃の井だ。
「何だよ」
「以前に使った抜け道ですが、ほかに知る人間は?」
 桃の井が口を開いたことで、彼女のほうへ顔を向けていた和宮が、(はじ)かれたように家茂に向き直る。
 家茂は、和宮と絡めた視線を、桃の井に戻した。
「……あんたと俺と(ちか)のほかは崇哉だけって言いたいけど……多分、火之番の上層部や御年寄り連中も知ってると思う。本来あの道は、貴人のお忍び遊びに出る経路じゃなく、立派に非常時の出入り口なんだからな」
 途端、和宮が目を見開き、さっと顔色を変えた。桃の井もだ。
「……え、何。これ、そんなに重要だった?」
「……兄様たちが、侵入(はい)って来られたはずね」
 硬い表情で、和宮が半ば一人ごちる。
「どういう意味だよ」
「家茂がどこまで知ってるか分からないから言うけど、火之番は少なくとも三人、熾仁兄様と慶喜に(たら)し込まれてた。それで二人を手引きしたのよ」
 これだけ聞けば、家茂にも二人の顔色の変化の意味は分かった。
「……間者(・・)が抜け道を知っていたんですから、ここまで侵入するのは造作もなかった、ということですね」
 桃の井が言語化した回答に、家茂は舌打ちしながら、無造作に前髪を掻き上げる。
「ったく、しゃーねぇな。あの道、とっとと塞いじまわないと」
「……確認したくないけど、そうしたら、今後の非常時の出入りはどうなるの?」
 和宮から、素朴な疑問が(のぼ)る。
「非常口としての抜け道は、まだいくつかある」
「って、それまさか全部、火之番の上層部と御年寄りに知れてるの?」
「当たり前だろ。通常はこういう(・・・・)機密漏洩があるなんて想定してない。業務上の守秘義務に関して、大奥は割合厳しいはずだからな」
 大奥は、妙なところで信頼と結束が強かったりする。
 秘密厳守、と言い渡せば、罰則などちらつかせずとも秘密は守られると信じているのだ。誰が信じているかは分からないが――
「……ちょっと待って」
「何だよ」
「今、女中で抜け道知ってるのは、火之番の上層部と御年寄りって言ったよね」
「それが?」
「じゃ、あたしを連れ出しに来た女中は火之番の上層部なの?」
「え、あ」
 和宮の言わんとしたところにハッとし、家茂は何度目かで瞠目する。桃の井も同様だった。
 火之番と一口に言っても、その役職の内でも階級はある。全員が平等ではない。
 先刻、和宮たちに説明した通り、機密を知っているのはその中でも上位の者だけだが、本当の非常時なら、上役は手分けの上で現場の指図に徹するはずだ。彼女たちが率先して、御台所や、ほかの重要な地位にある女性の避難に当たることはない。
 鋭く舌打ちした和宮が立ち上がる。
「おい、どこ行くんだ」
「滝山の所よ。じゃなければ、火之番を全員一ヶ所に集めて、今回亡くなったのが誰なのか、どのくらいの地位にいたのかを調べる」
「宮様はここにおいでください、わたくしが」
 素早く和宮を遮った桃の井が、一礼して腰を浮かせた。

©️神蔵 眞吹2024.
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登場人物紹介

【和宮親子内親王《かずのみや ちかこ ないしんのう》(登場時、7歳)】


生年月日/弘化3年閏5月10日(1846年7月3日)

性別/女

血液型/AB

身長/143センチ 体重/34キロ(将来的に身長/155センチ 体重/45キロ)


この物語の主人公。


丙午生まれの女児は夫を食い殺すと言う言い伝えの為、2歳の時に年替えの儀を行い、弘化2年12月21日(1846年1月19日)生まれとなる。

実年齢5歳の時、有栖川宮熾仁親王と婚約するが、幕閣と朝廷の思惑により、別れることになる。

納得できず、一度は熾仁と駆け落ちしようとするが……。

【徳川 家茂《とくがわ いえもち》(登場時、15歳)】

□幼名:菊千代《きくちよ》→慶福《よしとみ》


生年月日/弘化3年閏5月24日(1846年7月17日)

性別/男

血液型/A

身長/150センチ 体重/40キロ(将来的には、身長/160センチ、体重/48キロ)


この物語のもう一人の主人公で、和宮の夫。


3歳で紀州藩主の座に就き、5歳で元服。

7歳の頃、乳母・浪江《なみえ》が檀家として縁のある善光寺の住職・広海上人の次女・柊和《ひな》(12)と知り合い、親しくなっていく。

12歳の時に、井伊 直弼《いい なおすけ》の大老就任により、十四代将軍に決まり、就任。この年、倫宮《みちのみや》則子《のりこ》女王(8)との縁談が持ち上がっていたが、解消。


13歳の時には柊和(18)も奥入りするが、翌年には和宮との縁談が持ち上がり、幕閣と大奥の上層部に邪魔と断じられた柊和(19)を失う。

その元凶と、一度は和宮に恨みを抱くが……。

【有栖川宮熾仁親王《ありすがわのみや たるひと しんのう》(登場時、18歳)】


生年月日/天保6年2月19日(1835年3月17日)

性別/男


5歳の和宮と、16歳の時に婚約。

和宮の亡き父の猶子となっている為、戸籍上は兄妹でもあるという不思議な関係。

和宮のことは、異性ではなく可愛い妹程度にしか思っていなかったが、公武合体策により和宮と別れる羽目になる。

本人としては、この時初めて彼女への愛を自覚したと思っているが……。

【土御門 邦子《つちみかど くにこ》(登場時、11歳)】


生年月日/天保13(1842)年10月12日

性別/女


和宮の侍女兼護衛。

陰陽師の家系である土御門家に生まれ、戦巫女として教育を受けた。

女だてらに武芸十八般どんと来い。

【天璋院《てんしょういん》/敬子《すみこ》(登場時、25歳)】

□名前の変転:一《かつ》→市《いち》→篤《あつ》→敬子


生年月日/天保6年12月19日(1836年2月5日)

性別/女


先代将軍・家定《いえさだ》の正室で、先代御台所《みだいどころ》。

戸籍上の、家茂の母。


17歳で、従兄である薩摩藩主・島津 斉彬《しまづ なりあきら》(44)の養女となる。この時、本姓と諱《いみな》は源 篤子《みなもとのあつこ》となる。

20歳の時、時の右大臣・近衛 忠煕《このえ ただひろ》の養女となり、名を藤原 敬子《ふじわらの すみこ》と改める。この年の11月、第13代将軍・家定の正室になるが、二年後、夫(享年34)に先立たれ、落飾して、天璋院を名乗っている。

生まれ育った環境による価値観の違いから、初対面時には和宮と対立するが……。

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