衆生済土の欠けたる望月【第九話】
文字数 824文字
☆
猫魔とふぐりがどこかに去って行くのと入れ替わるように帰宅する客がライブハウスから出てくる。
彼ら彼女らはハコのネオンを後にして散っていき、やがてザ・ルーツ・ルーツのメンバーが僕を探しに、ハコの前の公園までやってきた。
ハコとは、ライブハウスのことを指す言葉だ。
湖山が、興奮した面持ちで、僕にこんなことを言った。
「三ツ矢プロップスに新しい風が吹きそうっすよ、山茶花さん。毎週水曜日にDJイベントでプレイしてるレジデントDJの〈DJ枢木 〉って女性DJがいるんすけど、そのDJ枢木って奴が、アイドルみたいなディーバとタッグを組んだらしいっす。そのアイドルと手を混んだら人気爆上がりで、三ツ矢のシーン全体を塗り替える勢いらしいんすよ」
「アイドルユニットってことか……」
顎に手をやって首をかしげる僕。
「んん? 枢木……?」
だが、大学生である僕には思い出せない……ような気がする。
湖山が尖った髪の毛をアンテナのように立てて言う。
「どうも、今日、これからラジオ出演するそうなんすよ、山茶花さん。そのユニットが出演するラジオ、聴きましょうよ」
「いつもはファミレスで打ち上げやるじゃん。いいの?」
「敵情視察がラジオで済むならそれに越したこたないっすよ」
「そんなもんかねぇ。で、そのアイドル歌手の名前はなんていうの?」
「なんだ、乗り気じゃないっすか、山茶花さん」
「そんなんじゃなくてね。ちょっと気になっただけさ。で、名前は?」
湖山は、大きく深呼吸してから、そのアイドルディーバの名前を僕に告げた。
「ふぐり……神楽坂 ふぐり、というらしいっす」
「ふぐり……いや、でも。あいつは小鳥遊 ふぐりだしなぁ。DJ枢木も、まさか枢木くるるちゃん、じゃないだろう。じゃあ、なぜその名前を使うんだろうか」
「さ。さっそく部屋に戻りましょう」
「そうだね」
僕は肩をすくめて、
「なにがなにやらだよ、ったく」
と内面を吐露してしまう。
今回も奇っ怪な事件であることに変わりはないな。
猫魔とふぐりがどこかに去って行くのと入れ替わるように帰宅する客がライブハウスから出てくる。
彼ら彼女らはハコのネオンを後にして散っていき、やがてザ・ルーツ・ルーツのメンバーが僕を探しに、ハコの前の公園までやってきた。
ハコとは、ライブハウスのことを指す言葉だ。
湖山が、興奮した面持ちで、僕にこんなことを言った。
「三ツ矢プロップスに新しい風が吹きそうっすよ、山茶花さん。毎週水曜日にDJイベントでプレイしてるレジデントDJの〈DJ
「アイドルユニットってことか……」
顎に手をやって首をかしげる僕。
「んん? 枢木……?」
だが、大学生である僕には思い出せない……ような気がする。
湖山が尖った髪の毛をアンテナのように立てて言う。
「どうも、今日、これからラジオ出演するそうなんすよ、山茶花さん。そのユニットが出演するラジオ、聴きましょうよ」
「いつもはファミレスで打ち上げやるじゃん。いいの?」
「敵情視察がラジオで済むならそれに越したこたないっすよ」
「そんなもんかねぇ。で、そのアイドル歌手の名前はなんていうの?」
「なんだ、乗り気じゃないっすか、山茶花さん」
「そんなんじゃなくてね。ちょっと気になっただけさ。で、名前は?」
湖山は、大きく深呼吸してから、そのアイドルディーバの名前を僕に告げた。
「ふぐり……
「ふぐり……いや、でも。あいつは
「さ。さっそく部屋に戻りましょう」
「そうだね」
僕は肩をすくめて、
「なにがなにやらだよ、ったく」
と内面を吐露してしまう。
今回も奇っ怪な事件であることに変わりはないな。