その14 ページ・ターナー
文字数 1,432文字
最近、とても好きなマンガ家さんを見つけた。
その人の描くものは、どれも好きだと気がついた。
おバカえってぃなラブコメから残酷なハードボイルド、BLまであるのに、不思議とどれも好きになれる。
(調べたら大ベテランだったので、いまさら感満載だが。はずかしい。
遅れてきた初恋ということにしておいてください。)
とにかく、絵が好き。
そして、彼女の創り出す世界が好きだ。
画力が凄い。凄すぎる。どのキャラクターも綺麗。ブサメンさえも佳い顔。そしてかっこいい。かっこ良すぎる。悪役さえもぐっとくる。
いままで正直BLは苦手だったんだけど、この作家さんのを読んだら、おれも美人の新人刑事になって憧れのイケオジ先輩に押し倒されてみたく(以下略)
これはなかなかめずらしくて、幸福なことだ。
私は一つの作品(マンガでも小説でも)を好きになると、その作家さんの全作をコンプリートしようとするくせがある。でも、出会った作品に夢中になったとしても、他のにもそうなれるとはかぎらない。
M先生(仮名)の作品はどれも、ずっと読んでいたいし、くりかえし読みたくなる。
安心して読んでいられる。
安心して――
それだ。裏切られないのだ。
でも、裏切られるって、どういうことだろう。
少々気の毒だが悪いほうの例を挙げると、別の作家さんの作品で、嫌な思いを最近した。
ヒロインと素敵なイケメンのお隣さんのほのぼのライフだと思って楽しく読んでいたら、いきなり急展開。なんと彼は、彼女のストーカーだった!
これは、アウトだろう。
ヒロインといっしょにほのぼの癒されていた自分がバカみたいだ。あの時間を返して! と叫びたい。大好きな作品だったのに、いまはもう怒りと嫌悪と、屈辱、そう屈辱しかない。
M先生の作品でも、主人公の信じていた人がじつは黒幕だった、的な展開はあるのだが、それはもともと新宿歌舞伎町が舞台。血で血を洗うディープなストーリーだ。
どんでん返しにつぐどんでん返しがあるだろうと、読者ははじめから期待している。
読者の「予想」を裏切ることと、読者の「期待」――「信頼」を裏切ることは、違う。
それなら自分も、書くとき、どうしたらいいだろう、と考えた。
読んでくれている人の「信頼」を裏切らないには、どうしたらいい。
書き手としてはもちろん、読みたいと思ってほしいと思う。ページをめくってほしいと思う。先へ――
ここで気づいた。私は、M先生の作品を読むとき、ページを先へだけめくっていない。
感激したページを捜し出して、もう一度泣いたり笑ったりする。
もう一度わくわくしたり、しみじみしたり、ほっこりしたり、うっとりしたり、ムラムラしたりする。笑
何度でも、そうできる。どんでん返しの後ではもう読み返せないなんてことはない。
作品世界がぶれていないからだ。
それだ。
そこを見習おう。
私は下手だが、下手なりに、誠実であろうとすることはできる。
ページを先へめくってほしい。でも、それだけじゃだめだ。
後へもめくれること、安心して楽しんでもらうことのほうが、もっと大切だ。
こういう書きかたをしていると、どうしても歩みが遅くなる。疾走できない。地に杖を突いて一歩一歩たしかめながら進むような感じだ。
それでも、自分で何度もふりかえっては、「よし」とうなずいて、また歩きだしている。
※「ページ・ターナー」とは、「ページをめくらずにいられないほど面白い作品」のことです。
その人の描くものは、どれも好きだと気がついた。
おバカえってぃなラブコメから残酷なハードボイルド、BLまであるのに、不思議とどれも好きになれる。
(調べたら大ベテランだったので、いまさら感満載だが。はずかしい。
遅れてきた初恋ということにしておいてください。)
とにかく、絵が好き。
そして、彼女の創り出す世界が好きだ。
画力が凄い。凄すぎる。どのキャラクターも綺麗。ブサメンさえも佳い顔。そしてかっこいい。かっこ良すぎる。悪役さえもぐっとくる。
いままで正直BLは苦手だったんだけど、この作家さんのを読んだら、おれも美人の新人刑事になって憧れのイケオジ先輩に押し倒されてみたく(以下略)
これはなかなかめずらしくて、幸福なことだ。
私は一つの作品(マンガでも小説でも)を好きになると、その作家さんの全作をコンプリートしようとするくせがある。でも、出会った作品に夢中になったとしても、他のにもそうなれるとはかぎらない。
M先生(仮名)の作品はどれも、ずっと読んでいたいし、くりかえし読みたくなる。
安心して読んでいられる。
安心して――
それだ。裏切られないのだ。
でも、裏切られるって、どういうことだろう。
少々気の毒だが悪いほうの例を挙げると、別の作家さんの作品で、嫌な思いを最近した。
ヒロインと素敵なイケメンのお隣さんのほのぼのライフだと思って楽しく読んでいたら、いきなり急展開。なんと彼は、彼女のストーカーだった!
これは、アウトだろう。
ヒロインといっしょにほのぼの癒されていた自分がバカみたいだ。あの時間を返して! と叫びたい。大好きな作品だったのに、いまはもう怒りと嫌悪と、屈辱、そう屈辱しかない。
M先生の作品でも、主人公の信じていた人がじつは黒幕だった、的な展開はあるのだが、それはもともと新宿歌舞伎町が舞台。血で血を洗うディープなストーリーだ。
どんでん返しにつぐどんでん返しがあるだろうと、読者ははじめから期待している。
読者の「予想」を裏切ることと、読者の「期待」――「信頼」を裏切ることは、違う。
それなら自分も、書くとき、どうしたらいいだろう、と考えた。
読んでくれている人の「信頼」を裏切らないには、どうしたらいい。
書き手としてはもちろん、読みたいと思ってほしいと思う。ページをめくってほしいと思う。先へ――
ここで気づいた。私は、M先生の作品を読むとき、ページを先へだけめくっていない。
後へもめくっている
。感激したページを捜し出して、もう一度泣いたり笑ったりする。
もう一度わくわくしたり、しみじみしたり、ほっこりしたり、うっとりしたり、ムラムラしたりする。笑
何度でも、そうできる。どんでん返しの後ではもう読み返せないなんてことはない。
作品世界がぶれていないからだ。
それだ。
そこを見習おう。
私は下手だが、下手なりに、誠実であろうとすることはできる。
ページを先へめくってほしい。でも、それだけじゃだめだ。
後へもめくれること、安心して楽しんでもらうことのほうが、もっと大切だ。
こういう書きかたをしていると、どうしても歩みが遅くなる。疾走できない。地に杖を突いて一歩一歩たしかめながら進むような感じだ。
それでも、自分で何度もふりかえっては、「よし」とうなずいて、また歩きだしている。
※「ページ・ターナー」とは、「ページをめくらずにいられないほど面白い作品」のことです。