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エピソード文字数 814文字

「平手殿には敵いませぬな。於濃の方様を悲しませることは致しませぬ。直ぐさま挙兵の準備を致します。では、これにて失礼つまります」

「明智殿、ありがとうございます!」

 あたしは立ち去る光秀に深々と頭を下げた。

 これで……
 光秀の怒りを鎮めることができた。
 
 座敷に戻り蘭丸を呼びつけ、先ほどの振る舞いを注意する。

「蘭丸、明智殿に対する無礼は何事ぞ」

「されど、わたくしは上様の身をお守りするが役目。上様に刃向かう者はたとえどなたであろうと、阻止致します」

 信長に忠義を尽くす蘭丸は、いかなる武将をも恐れない。まるで、昔のあたしのように。信長のためなら命をも投げ出すだろう。

 あたしがいなくなっても、蘭丸がいれば信長も安泰だ……。

「もうよい。暫く上様と2人にしてくれぬか。誰も部屋に入れるでない。よいな」

「はい」

 襖を閉め、あたしは信長に視線を向ける。信長は口角を引き上げ、あたしを見据えた。

「紅、そのような怖い顔をするでない。美人が台無しだぞ」

「上様、そのようなおふざけはお止め下さい。どうして明智殿に対して理不尽な態度ばかりとられるのですか」

「理不尽とな?主君に対する暴言。それに主君の正室を寝取ることは、理不尽ではないのか」

「……やはり、於濃の方様のことで、あのような仕打ちを……」

「本来ならば、不義密通の罪で切腹、お家断絶。紅が望むなら、そうしてもよいのだぞ」

「上様!」

「紅、わしが知らぬと思うておるのか」

「……えっ?」

 信長は立ち上がり、あたしに歩み寄る。
 鼓動がトクトクと早まる。

「帰蝶は蝮の姫君にあらず」

「……上様!?」

 信長は何を言ってるの?

「帰蝶が嫁いだ時より、わしが気付かぬと思うたか。帰蝶は斎藤道三の娘、濃姫ではない。あの蝮のやりそうなことよ。わしに身代わりを輿入れさせてまでも、織田家との和睦を企んだのだからな」
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登場人物紹介

斎藤紗紅(さいとうさく)16歳

レディース『黒紅連合』総長

 斎藤美濃(さいとうみの)17歳

紗紅の姉、家族想いの優等生

 織田信也(おだしんや)20歳

紗紅の交際相手

元暴走族

 織田信長(おだのぶなが)

戦国武将

明智光秀(あけちみつひで)

戦国武将

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