元勇者魔王と側近ちゃんの会議

文字数 1,131文字

★★★

「リュータ……ついに勇者のパーティが四人揃って、ダンジョン攻略に入るみたい……」
「なんだってぇ!?
 勇者たちの情報を確認するためにいったん魔王城へ戻っていたルーファは、ミカゲからの報告を受けて驚きの声をあげる。
「しかも……勇者のパーティが……見てみて?」
 ミカゲは水晶をズイッと差し出す。
「ちょおぉおおっ!? アーグルにルナリイじゃねーかっ!?
「ん……わたしたちが日々戦闘鍛錬に明け暮れているうちに合流したみたい……しかも、レベリングもして装備も整えて、かなり準備万端な感じ……」
 一方で、連日の戦闘鍛錬で四天王たちはズタボロだ。今は別室で休んでいるというか、気絶して倒れこんでいる。
「あー、闇の力で一応全回復できるんだっけか? でも、表面上体力回復しても、疲れってのは体から抜けきらないもんだからなぁ……」
「ん……アイテムで回復した場合と宿屋で回復した場合、やっぱり宿屋のほうが体も魔法も快調な気がする……。……でも……リュータ……本当に戦うの? 四人と……」
「うーん……かつてのパーティやその家族と戦うのもどうかと思うんだよなぁ……元魔王だけなら問題なかったんだが……でも、せっかく鍛えた四天王だしなぁ……」
 このまま魔王として、勇者パーティに立ちはだかるか。それとも、元仲間たちと戦わない道を選ぶか。
「……戦闘狂の俺としては、アーグルやルナリイはともかく、元魔王のやつとは全力で戦ってみたいんだよなぁ。あのときの決着をつけたいし」
「ん……わたしも、あのときの勝負の続きを、してみたい……。魔王に挑んだときのあの高揚感と興奮、今でも覚えている……」
「とりあえず、四人が魔王城に来るまで保留かなぁ……まぁ、これだけ鍛錬したら相手にならねぇ気もするが……というか、四天王も鍛えすぎちまったから、史上最強の四天王になってるかもな……」
「……勇者パーティが西のダンジョンの入口近くまで来てるみたい…。…どうする? ……このダンジョンは四天王随一の防御力を誇るゴルゴンの拠点だけど……闇の力で全回復してから転移陣で送る……?」
「んー……」
 リュータは腕組みし、目をつぶって考える。
「そうだ、いまの勇者パーティのレベルがどれくらいかわかるか?」
「ん……水晶の力で調べてみる……」
 ミカゲが手をかざすと、水晶が青く輝き始める。
 そして、輝きがおさまるのに反比例するようにミカゲの目が見開かれていく。
「……そんなっ……」
 ミカゲは絶句して、まじまじと水晶を見つめる。
「どうした、ミカゲ?」
 リュータも水晶を覗きこむ。
「なにぃいいいいいっ!?
 またしても、魔王の居室に元勇者魔王の驚きの声が響いていった。
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登場人物紹介

ルーファ。

元魔王。人間に転生して村で暮らしていたが、勇者に選ばれてしまう。


リイナ。

ルーファの幼なじみ。宿屋の娘。

冒険者だった父母から武術を学び、ルーファと共に冒険の旅に出る。


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