最終 第11話 (2)

文字数 6,323文字





 弧を描いて跳ね飛ばされた短剣の刃は陽光を写してきらめき、地に落ちたときに土を少量抉った。刃と均衡をとる柄もそれなりの重量をもっていて、そちらもすぐに地に着き、短剣は激しかった打ち合いから沈黙する。
 短剣の持ち主は、その跳ね飛ばされた短剣の行方を無意識に目で追い、それが自分の失策だったと気づいたときには、胸元に相手の振るっていた模擬刀がゆっくりと押し込まれていた。その力が強くない分、相手の技量に敵わないことを、かえってはっきりと突きつけられる。
 エルは張り詰めていた集中力が切れて霧散したのを、荒いままの呼吸で胸をひどく痛めながら感じた。デットが持つ模擬刀はエルの胸を横にゆっくり薙ぎながら引いていった。
 デットは飄々とした笑顔でエルを見下ろし、片手で持っている模擬刀の刃を肩にかついだ。彼の赤銅色の髪は無造作にしていた分、うなじでひとつにできるくらいには伸びてしまっていた。そろそろ切らなきゃなあと言いながらも、くしゃりと後ろで縛るくらいで、切らずにいまだそのままだ。
 食えない笑みを浮かべるデットの薄い琥珀の瞳は、表情に反して鋭く、エルを真っ直ぐに見つめている。
「早く拾わないと、こちらから攻撃するぞ?」
 からかうような響きの声でデットが言う。
 両膝につきたいと伸びかけていた両手はすんでのところでその場に留まり、酷使していた全身の痛みで崩れ落ちそうな体を踏み堪える。落ちている短剣の元へと歩くのにも未熟な体は痛みを訴えた。屈んで短剣を拾い、その重さをまた自分の手で感じながら、エルはまたゆっくりとデットへと体勢を整え、大きく息を吐いた。
 デットから譲られた短剣は硬度が高く、結構な重みがある。エルは模擬刀ではなく、この真剣を使わされていた。
 “真剣”にやんなきゃ、身につかないだろ?
 笑顔で言ったデットの意図は、そのときはわからなかった。短期間で剣技や体術を会得しなければならない身となったエルにとって、模擬刀での生ぬるい鍛錬では時間がいくらあっても足りないと暗に言ったのだと実感させられたのは、初めて訓練を受けた瞬間だった。
 真剣を手にデットと相対したそのとき、これがすでに命のやりとりなのだと突きつけられた。
 打ち合いは、エルからの踏み込みのみ。
 デットから攻撃はしない。
 言われたことは、それだけだ。
 だがそこは、小さいながらも戦場だった。
 エルが遠慮がちに踏み込めば、短剣はデットの模擬刀で容赦なく即座に打ち落とされた。それでも一切歯こぼれのない鋭い刃。じんじんと、叩き落とされたときの手の痛みは強く、ほら拾えとデットに言われても、すぐには動けなかったくらいだ。
 何度も何度も踏み込んでは、何度も何度も剣を打ち落とされる。
 そのうち、だんだんとわかってくる。体がまだ作られきっていない、いまのエルが求められているのは、力ではなく、速さと、間合い。そして、判断力。
 この鍛錬が始まってから、体の使い方や姿勢は、自然と身に付いてきた。
 デットは多くは語らない。
 エルが失敗するたびに、ひと言ふた言、エルが自ら気付ける範囲のことを指摘してくれるだけだ。
 エルはデットから戦い方を教えてもらっているというより、やってはいけないことを行動で受け続けていた。それをしてしまえば、即座に命を落とす、そういった失敗をひとつひとつ反撃でもって潰されていく。同じような失敗には、言葉の指摘はもはやかけられることはない。ただただ無慈悲な反撃を強めに受け、そんなときは二度と立ち上がれるような気がしないほど打ちのめされた。
 エルは短剣を手に、再度デットに相対した。
 兄のように短く刈られた薄茶の髪は、陽光にきらめいて金色に反射した。薄く透き通る翠の瞳で戦う相手を見据える。成熟する前の野生動物のような若々しくしなやかな体を存分に生かすべく、呼気を鋭く吐き出し、片足に一気に力を込めもう片方の足で速く駆け出す。
 剣を持つ相手に打ち勝つ方法を、自分の持つ能力すべてをもって見出すために。

 フォルッツェリオ国王城の一角にある、円形の闘技場。
 かつては一流の戦士たちが闘いを繰り広げた地は、いまは贅沢にも戦士見習いとなったばかりのエルの鍛錬場となっていた。
 中央の闘技土場の周囲は階段場の観覧席となっていて、そこには一人の見物人がいた。
 見物、といっても、目の力で見ているわけではないのは、盲目の術者イグニシアス。
 肩まで伸びた真っ直ぐな黒髪と整った相貌が可憐で美しい女性のように見えるが、彼の特徴の中でも際立っている金色の瞳がなにかをひたと見つめるとき、それを真髄から見通すように光る。いまも、エルがデットと向き合う姿を見えぬ目ではなく、心に焼き付けるように見つめていた。
 イグニシアスには、デットの動くさまが力の本流となって見えていた。自分の持つ精霊の力と己の持つ魔法力が合わさり、もう自然に一体となった力で、見えぬ目の代わりに感じられるのだ。視力として色や姿形が見えなくとも、魔法力を持つ者が動いているとわかる。イグニシアスには、デットが大きな力を持つ者として見えている。
 デットとは真逆に、エルは魔法の力が一切見えない。精霊を持たない他の人間と同じだ。初めてエルと会ったとき、これから精霊が得られて、よい方向に成長すればいいと思っていた。
 だがそれが叶わぬこととわかると、違うものが見えてくる。
 自然界のあらゆる物質には、魔法力の残滓、自然の持つ力の流れ、そういったものが必ず存在し、イグニシアスにはそれらも自分の持つ能力で見分けて過ごしてきた。だからこそ健常者のように一人で行動することができている。
 エルが動くとき、周囲の力が途切れるように感じられなくなる。そのせいでかえってそこにエルがいるのだとわかる。
 人は、ある程度は周囲の力を自然と被ったり受けざるを得ない状況になったりする。自然界でも、風を仰ぎ、火で炙られ、水を被り、癒しを取り込み、地から響きを受ける。これらを精霊が与える力と置き換えれば、人間が放つ魔法となる。
 自然界からでも人間からでも、なにかしらの力を受けることで、必ず反応というものが起こる。風を受ければ髪が靡き、火で炙られれば火傷を負い、水を被れば濡れ、癒しを受ければ元の状態に戻ろうとし、地が響けば立ち続けることは難しい。
 エルは、魔法の力であれば、一切を弾いて、受け取ることができない。
 精霊の召喚術は跳ね返った。フォルッツェリオに着くまでの道中ちょっとした馬車事故があり、軽く怪我を負ったため癒しの魔法をかけたが、まったく効かなかった。
 他にも試しにこっそりとエルに魔法をかけてみて、効かないのをむきになって色々試していたら、デットから頭に拳骨を食らって涙目になった。エル本人には絶対に内緒だった。
 エルについている、黒き精霊。
 間違いなく、あれの力だと、イグニシアスは悟らざるをえなかった。
 光と闇。
 闇に影響を与えるのは、光のみ。
 黒き精霊をイグニシアスが見たのは、あのときだけだ。エル本人はときおり、内面であれと会話をしたらしきことがうかがえたが、エル自身も自分の持つ黒き精霊の力がどういうふうに自分に関わるのかわかってはいない。
 エルは、本当にまだ気づいていないようだった。
 あの光に照らされていることを。
 イグニシアスは自分の立ち位置を考えている。
 二人と出会ってから、ずっと。
 ようやく前へと進み始めた一人の少年と、存在が謎そのものの若き男。
 彼らが進んでいく道を、彼らがいることで影響を受けていく人々を、イグニシアスはきっとこれからも見続けていくのだろう。
 できれば、彼らと同じ場所から見届けられればいいと願っている。
 光に気づいている者は、まだ多くはない。闇についても未知数。
 この二つの存在が世界へともたらす影響は計り知れない。
 不安に思うわけではない。むしろ、胸が躍る。
 ああそうとも、楽しみで仕方がない。
 二人が、どう生きていくのか。



 イグニシアスは、デットとエルのほうから視線を上げ、近寄ってくる人のほうへ顔を向けた。
 数人の侍女を従え、食事の用意を運ばせやってきたのは、小柄な少女だった。
 亡国の王女はゆっくりとした足取りでイグニシアスのいるほうへと歩いている。足取りはややぎこちないが慣れた動きだ。
「ご機嫌麗しく、はないみたいだね」
 イグニシアスがかけるおどけた声に、フレンジアが少々険を含んだ瞳で返してくる。
「姫の機嫌を損ねたのは、誰でしょう?」
 イグニシアスがフレンジアを紹介されて会ってから、彼女が普段は穏やかな少女であると知っていた。それが珍しく乱れた気を発しているのを感じたのだ。
「“姫”ではないと、何度言ったらわかるのだ?」
 フレンジアは自分の不機嫌を隠そうとはせず、尖った声を出した。それでも彼女の印象は陰険とはならない。逆に可愛らしく拗ねているように見える。
 フレンジアは、確かにフォルッツェリオの姫君ではない。だが、待遇は大国の姫君と同等。いや、それ以上に大切に大切にされている。いつも彼女には侍女が数人付き従い、護衛の兵も陰ながら彼女を護っている。
「姫は、姫だよ。他の何者でもない。それに、名を呼ぶなど、俺にはできないね」
「なぜだ?」
 フレンジアはイグニシアスが座る観覧席の隣に座る。
「こうして敬語ではなく言葉を交わすことはできるが、名はどうしても“様”づけでしか呼べないと思うからさ。姫も、“フレンジア様”って俺に呼ばれたくはないだろう?」
「だから、どうして“様”づけになるのだ。呼び捨てでよいと言っているだろう」
 フレンジアは自分が姫君であるとは思っていない。いつも自分を姫扱いするなと人に言っているが、素直に従う者は皆無だった。
「無理無理」
 イグニシアスは笑って手を振る。
「誰もあなたに言ったことはないかい? 姫はなにをしても“姫”なんだと。あんたたちもそう思うだろ?」
 食事の用意を整えていた侍女たちに対してイグニシアスは言葉を向けた。侍女たちが大きくうなずいたのを見て、フレンジアは不機嫌を表していた態度をあらため、不思議そうな顔で首をかしげた。
 確かにフレンジアに“姫”と呼ぶ理由を述べた者はいなかった。イグニシアスほど気さくに接してくれる者が少ないこともある。
「確かにこの国の王女ではないけど、あなた自身が“姫様”なんだよ。もしも俺の目の前にいるのがあなたではなく、どこかの国の王女様だったとしたら、俺はその人を姫とは呼んじゃいないだろう。あなたがあなただから、俺はあなたを姫と呼ぶのさ」
 フレンジアは、イグニシアスの言葉は難解で理解できないといった表情となる。
「みんなが護りたいと思ってる存在、ってことさ」
 またも侍女たちが自分たちの仕事をしながら大きくうなずいていた。そんな大層な人間ではないのにとフレンジア自身は思っているようだが、だからこそ周囲の人間は彼女を護りたいと思っているのだとイグニシアスは知っていた。
「エル! デット! 食いもんが来たぞ!」
 フレンジアに対して幾ばくかの気を遣っていたイグニシアスも、闘技場で汗を流す二人には遠慮がない。
 イグニシアスが声をかけてからあまり間を置くことなく、デットが観覧席に上がってきた。
 文字通り、直接上に上がってきた。闘技土場から正規の順路であれば観覧席まで来るまでに本来は時間がかかる。デットは土場から周囲の高い壁に手をかけ、ぐいと自分の膂力で壁を乗り越えて、最短距離でやってきたのだ。普通の人間なら簡単にできることではない。
 実際、エルが来るまでは結構時間がかかった。エルがデットの真似をするには、なにもかもが同じような領域まで成長しなければならない。いまのエルは到底デットに追いつくことはできない。エルはそのことを悔しく思っているだろう。それでいい。悔しさが、エルの成長を飛躍的に伸ばすことになる。それがわかっているからのデットの行動でもある。
 闘技場の観覧席で広げられた料理の品々は、王城の中でのものにしては一般的なものだ。野外で食べるためもあるが、この場にいる者は豪勢な宮廷料理に興味はない。重い食事ではなく、消化によく、美味しいものであればなんだっていい。デットがそのように初めに注文をつけ、栄養がとれ、地肉をつくる消化のよいものを用意してフレンジアが届ける、それがほとんど毎日の日課となった。
 この面々で昼食をとるのがあたりまえとなってそんなに日は経たないが、皆この時間を楽しみにしていた。異なった場所で生きてきたそれぞれが、人と会話をしながら食事をすることがほとんどなかったからだ。
 エルは孤児だった。使用人の子として育てられ、使用人として生きてきた。兄となってくれた人に拾われ、食事で楽しんだのは兄と二人での会話だ。
 デットの素性はいまだ謎だった。若い頃から戦場にいたのだろうと推察できるが、どちらかといえば一人での食事を好んできたようだ。
 大勢の人間に育てられてきたイグニシアスは、寂しい思いをしなかったが、仲間と呼べる人はいなかった。イグニシアスにとってはデットとエルが初めての仲間だ。
 フレンジアは、この面々の中では、一番この場を楽しみにしていた。彼女の過去は、豊かな感情を表すいまの様子からうかがうことができないほど、苦痛を味わってきた。その過去を詳しく聞くことは、普通の者ならば彼女を慮ってなかなかできないものだ。
 だが、イグニシアスという男は、いい意味で遠慮がない。
「それで、姫の不機嫌の原因はなんなの」
 食べながらの、とくに詮索するものではないイグニシアスの問いに、フレンジアも気にする様子もなく答える。
「言いたくない」
「俺が推察するに、姫のご機嫌の一端はこの国の王が担っていると思うんだけど」
「だから! 言いたくない!」
 フレンジアはイグニシアスのからかうような言葉を強い口調で遮った。明らかに彼の人のせいだと言っているようなものだ。フレンジアの憤然といった様子に、イグニシアスもさすがにそれ以上の追求はしない。あっそうと、素知らぬ顔で話題を逸らす。
「エルも大分動きが良くなったんじゃないか?」
 その問いにはデットが答えた。
「そりゃ毎日やってれば、それなりにはなるもんだ。それが実戦に生かせるようになるかは、本人の努力次第ってことだ」
「わかってる」
 エルは他に答えようがない。いまは黙々と、血肉となる食事をとり、睡眠を得て、体をつくり、努力を続けていくだけだ。
「ずっと、誰かに訊いてみたかったんだけどさ」
 他愛ない会話の中で、イグニシアスが唐突に言い始めた。
「でもミーサッハは育児で忙しそうで、当の本人の国王さんはもっと忙しそうだし、ビルトランはもーっと構ってくんないし。他の人はまだそんなに親しくないから、姫に訊こうかなって」
「なんのことだ?」
 フレンジアが小首をかしげる。
「本当は、気軽に訊いちゃいけないんだろうけど。姫の過去でもあるから。でも、知っとかなきゃとも思うんだ。エルにとっても」
「うん?」
 フレンジアはそんなに気にしていないように訊き返す。
「エルの兄さんが、この国にどう関わっていたのか」
 確かに、この話題が出たことはなかった。
「そうか。まだ言ってなかったな」
 フレンジアは小さく笑った。
「この国は、シリューズがいなければ、できてはいなかった」
 亡き人に思いを馳せた。
 エルとフレンジアにとっては、いまだ切なく苦しい、それでも、幸せだった理由でもある人。
 少女は語り始める。
 これからを生きる、彼の大切な弟のために。










 剣と鞘のつくりかた 《宿世の章》 完
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登場人物紹介

エル


(ネタバレ注意、第2話あたり。)


砂漠地の憩いの町ナカタカに暮らす少年。主人公の一人。

身重の姉(兄の嫁さん)と暮らしていたが、兄の敵討ちと兄の子の成長を見守ることの選択に思い悩む。

幼き頃より働いていたため礼儀作法が身についていて、誰に対しても丁寧に接するが、無礼な者に対しては冷ややかに対応できる。外見は縦に伸びていて大人びて見えるが、まだ十一歳。陰を負った美少年。構いたい周囲の大人たちだが、少年の心情を気遣い、そっと見守っている。自分が人目を引いているとは思ってもいない天然素直で馬鹿正直な子。

明るい金に近い薄茶の髪、薄く透き通った翠の瞳。

(アイコン画像はイメージ通りではないけど、これが近いかな。もうちょい美少年にしたい。)

デット


(ネタバレ注意)


エルを助けた青年。自称魔法士としているが、剣の腕も持っている。主人公の一人。

砂漠地の憩いの町ナカタカで観光がてら休暇をとっていたときにエルと出逢う。いろいろな表情を見せるし誰とでも親しくなれるが、人の心情を読むことにも長けているため無難な人付き合いにあえてしている。


(デットからの目線で書いていることが多いので、外見はまだ話の中で表記していないが)

無造作に伸びた赤銅色の髪に、薄い琥珀の瞳。体格のよい他の戦士たちよりもさらに長身で、ほどほどの筋力を持ち、しなやかな動きをする。そんな外見でも人に溶け込んで目立たぬようにすることもできる。外見は二十代後半ほど。(どのあたりの話で彼の外見について組み込もうか…)


(アイコン画像は、本当にイメージに合うものがなくて、強いてあげるならって程度です。髪色と瞳色は脳内補正してください。服装は地味です。本人は目立ちたくないので)

ミーサッハ


(ネタバレ注意。第2話から)


エルの兄シリューズの妻。傭兵にして風精を持つ弓使いのカドル。シリューズの子を身篭っており、いまは身を潜めて出産を待っている。年齢不詳な雰囲気の美女。実年齢は三十を超えている。

濃茶の長髪、深い蒼の瞳。女の身で傭兵であるのは並大抵のことではなく、厳しい修行と壮絶な過去を経てのものであり、まだ経験不足のエルでさえそれを察することができている。


(このアイコン画像はだいぶイメージに近い。色味はいつも通り脳内補正を)

“穴熊”の主人


(ネタバレ注意)


砂漠地の憩いの町ナカタカにある食事処の主人。もういい年齢であるが、かつて戦士であった体躯はいまだ維持し続けている。全盛期よりは筋量は落ちたが、そこらの並の戦士は片手でちょいくらいはできる。

いまは白髪だが、若い頃は黒髪に茶の瞳。昔から寡黙で当時は高嶺の花的に女たちから密かに思われていたが自身はモテていたとは気付いていないくらいに朴念仁、それが歳を経ても変わらないのでいまも若い女性からも熱視線を浴びているが、自身にはいまも無頓着なイケオジ。奥さんには先立たれている。

奥さんと一緒にこのナカタカで食事処を開店、初めは戦士の斡旋所なんかしていなかったが、彼を慕う戦士が増え、彼らに短期の寝床や居場所を提供していたら自然と人脈が増え続け、現在にいたる。町の元締め(たち)の知り合い、というよりは彼も町の秩序の一端にある。


(アイコン画像は、まあまあイメージに近いんでは。この話では名前は出ませんが、この人が主人公のスピンオフあり。奥さんとの馴れ初め話。この作者で珍しい恋愛モノ。どこかで書こうと思ってます。いまの主人公たちより設定が多い…)

イグニシアス


(ネタバレ注意。第4話から)


ナカタカ“穴熊”店主の実の孫。肩まで伸びた真っ直ぐな黒髪、薄く透き通った金の瞳。

20歳前の女性に見える、中身も名も雄々しいべらんめえ口調の美男子。22歳。

ナカタカで一番といわれるほどの実力の術者。術者=五精霊すべての守護を受けているということ。

生まれながら全盲。代わりに精霊の力を借りているので健常者と変わらないくらいに行動できている。

これから先ずっとエルやデットのそばにいてくれる頼もしい味方。準主役。


(ちょっといいアイコンがないので、女の子アイコンから無理やり持ってきてみた。まあ、いいでしょう。シリーズ内登場人物上の最高の美少女、の顔を持っている人。そしてあの中身。だからこそ魅力的な人物。当初より出番が増えた一人。)

シリューズ


(ネタバレ注意)


傭兵として活躍していた戦士。故人。孤児だったエルを引き取り育ててくれた人。

物語中、一番中身が男前で、一番いろんな人に慕われ、一番その死を惜しまれ、この話では登場しないのに一番存在感がある。それほどの人物だった。エルの大切な誇れる兄。

愛しき妻より歳下。ミーサッハは姉さん女房。正式に夫婦となるまで、シリューズは一途にミーサッハを想い続けた。


(容姿はこの話では出てこないのでシルエットのみ。たぶんアイコンに合うものはない、どうしよう。この人を主人公として一本の話が書けるくらい波乱万丈な人生を送った。)





ネタバレ追記


終盤10話にようやく容姿判明。

銀の短髪、青の瞳。レイグラントよりは少し低いが長身の部類。しなやかな筋力を持つ俊敏な傭兵だった。本当に体格だけならデットと似ている。男前っていうよりイケメーンなイイ男。もちろんモテモテだったけど少年時代から一途な人だったんで、たくさんの人を誠実な態度で袖にしてきた。

“地雷”のビルトラン


(ネタバレ注意)


現フォルッツェリオ国家兵団長。レイグラントの側近の一人。貴族私兵・国王近衛部隊含む、フォルッツェリオ国軍務トップ。大半を戦場で過ごしてきた百戦錬磨の元傭兵。傭兵の鑑とうたわれる傭兵組合重鎮。各国が最も欲した戦士の一人。

刈り込まれた黒髪、沈みゆく陽に灼かれた大地の色の瞳。四十代、独身。頰に古傷あり。若い頃には相棒がいたが、戦場で失う。以降真に息の合う者とは出会えず、一人で多数の傷を負いながら戦い抜いてきた。

実直、堅実、誠意の人。部下や仲間に大変慕われている。女性には強くは出られないが、仲間は別で戦士の一人として厳しくできる。

ナカタカ“穴熊”主人とは昔馴染み。師と慕っている。

シリューズを失ったミーサッハを自ら探し迎えにくる。エルの存在は知らなかった。



(アイコンは、イメージに近いものがなく、強いて使うならってとこ。もっとガチムチな速さも持つ大柄な戦士。色味は脳内補完を。弱点はニースの顔。好みドンピシャ。お堅い戦士も、イグニシアスの悪戯の前では哀れただの男。)

レイグラント


(ネタバレ注意)


エルが兄の敵だと思っている人物。新興国フォルッツェリオ国の英雄王。数年前までは“傭兵”にしてカドル “迅風”のレイグラントとして名を馳せていた。歴代“傭兵”の中でも最高クラスの戦士の一人。

肩に届くほどの自然な量感の濃金髪。澄み切った空のような青の瞳。長身で鍛え上げられた体躯の屈強な戦士で、誰が見ても整った容貌の精悍な男前。まだ二十代。

己の信念に反する者には冷酷だが、根本は天然なところもある。公言はしていないが、現代の“風精王” (風の神)の守護を受けているといわれている。


(アイコンは全く合うものがないのでシルエットのみ。シルエットさえも合うものがない… 世界中のイケメン俳優さんのいいとこ取りな超絶イケメンと思ってくだされば!)

フレンジア


(ネタバレ注意。第10話から)


フォルッツェリオ国王レイグラントが拠点にしている政務府最上階に住う少女。彼女がそこに住んでいると知っているのは政務府に出入りする者の中でも国家の重要人物のみ。普段その姿を表に現すことは少ないが、職務とあらばところ構わず外へと飛び出していく。

こののちの次章の主役の一人。旧アスリロザ最後の王女。

(彼女の設定はてんこ盛りに長い。これでも割愛したほう。)

侍女として王城内に勤めていた母が国王に手をつけられて生まれた庶子。母は彼女を出産前に国王の愛妾の一人として末席に迎えられたが、彼女を産んでしばらくして死去した。当時のアスリロザ王城内は絶対王政による王家史上主義の妄執に蝕まれ陰謀渦巻く巣窟となっており、王妃もしくは筆頭愛妾の思惑で隠されたと噂されている。彼女自身も生まれてからずっとそういった害意の中で過ごしており、身分は王女の一人とされているが、母の身分の低さが理由で王族のみならず貴族たちからも王女とは認められておらず、アスリロザ国内には彼女の居場所はなかった。幼少のころに異母兄の一人に片足の踵を剣で斬られており、いまもその影響で正常に走ることはできない。当時に丁寧な治療を施されていれば完治もしたはずだが、魔法士を呼ばれることなく外科的処置もないままほとんど放置状態で外傷の治療だけ侍女の手でされたのみだった。のちにシリューズとレイグラント二人にその境遇から救い出される。

赤みがかった金色の髪に碧色の瞳。容姿はとくに優れて美少女というほどではなく一見普通の女の子だが、不幸な生い立ちにもかかわらず前向きな性格で、シリューズレイグラントに救われてから感情豊かになったことで、人間味あふれる魅力が表情に現れて可愛らしい印象になる。エルと対面しときは十代半ば。


(アイコンは雰囲気が一番近いものから。政務府から外に出るときはすっぴんポニーテールの少年の格好になる。表向きアスリロザ国王直系子は血統を断つため処刑されているので、いまのフレンジアは亡国王女ではなく、レイグラントの一客人として政務府内で暮らしているが、待遇は完全にお姫様。)

ユッカンティシアナン


(ネタバレ注意。第11話から)


フォルッツェリオ国家兵団参謀長という地位にいる、レイグラントの側近の一人。冷静沈着・慇懃無礼とは彼の代名詞。

世界で五本の指に入るだろう実力の術者としての顔のほうが名高い。知識が豊富で、その頭脳によりフォルッツェリオ国では軍務において参謀役や、外務においての諜報役を担っている。時代背景や人格が違っていれば一国の宰相もできただろう本人は、淡々と、飄々と、胡散臭く世を渡っていたいので、めんどくさい役職には就きたくなかったが、他に適度な人材もいないの仕方なくいまの役職を拝命した。

柔らかい髪質の茶髪、同じような色合いの茶眼。中肉中背で一見優男風だが、本人は気質を抑えてはいないので、普通の容姿なのに個性の強い内面が表に出ているので、異様さがかえって目立つ。長ったらしい名前ですぐに覚えてもらえないため、いろんな名で呼ばれているので、多様な顔を持っているような印象がある。それを生かして対話し人間観察することで情報収集を行なう。

遅まきながら本編終盤に登場。本人は地味に行動しているようでも、どんな場面でもいいところを掻っ攫っていくタイプ。次章フォルッツェリオ建国編では活躍というか暗躍する人。

この章では登場させる気はなかったが、話の展開上と、引き締めの部分で、出したほうがいいと判断、書き直し時に登場させました。


(アイコンはモブタイプでも合いそうなものがないので無理矢理。まあいいか。)

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