第18話 予 感
文字数 1,195文字
～8月(2年生)、大学～
バイト順調か？
・・・
元気ねェな、
ちょっと会えないくらいで。
何だよ、
彼女できたからって偉そうに。
ごめんなさい、
実はフジッチに撮影手伝ってほしいって言われたっきり
1週間以上連絡ないんです。
(！！)
こういうときってピリピリしてるだろうから、
こっちから連絡し辛くて・・・
行き詰まってるとは言ってたけど・・・
フジイさんは屋外の風景写真がメインだから
天候とか時間帯とかに気を使っちゃうんですよ。
一緒に行く訳にはいかねェんだろ。
撮影は1人で集中したいですからね。
～同日の夜、アイバのアパート～
≪☎：キタジマさん、連絡待ってるみたいだけど。≫
≪☎：うん・・・何かイメージ湧 かなくて・・・≫
≪☎：具合悪いとか？≫
≪☎：ううん、大丈夫。≫
≪☎：体調崩したら、撮影なんてできないだろ。≫
≪☎：だから、大丈夫だって！≫
(！！)
≪☎：キタジには連絡しとくから、それじゃ。≫
・・・
～翌日、学食～
アイバさん、
写真展行ってみませんか？
バイトの気晴らしに。
(！！)
前から行ってみたかったんですよ。
フジイさんもそこに出展する訳だし。
・・・
～同日、銀風舎の写真展会場～
おォ～、緊張するな。
散々、写真展巡りしてたんだろ。
「写真展巡り」っていうか、
正確には「フジイさんの作品探し」ですよ。
あ、でも
鳴桜？・・・不吉な！
(？)
～同日、会場内～
あ、この人
去年グランプリ受賞ですって！
・・・
この人、一咲館 から移籍したんだ！
・・・
お、フォーティー使ってる！！
これドイツのヴォイセルっていうメーカーのカメラなんだけど、
今はもう分社化しちゃってて、
製造してないレアな名機なんですよ！！
・・・
(！？)
サヤちゃん？
打合せのために偶然来場していたフジイの姿を見つける。
1か月ぶりに見たフジイは
思ったよりも元気そうに見えた。
(！！)
長身の若い男性がフジイに近づき、
親し気に会話を始める。
・・・
男性がフジイの髪に触れ、腰に手を回し、肩を抱き寄せる。
じゃれ合うように接する2人のその距離感は、
フジイをいつもより
(あんな顔するんだ。)
自分のいない場所で輝きを放つフジイを目の当たりにし、
アイバはこれまでの自分との関係性に疑問を抱き始める。
・・・
あ、フジイさんだ！
アイバさん、フジイさんがいますよ！！
帰ろう。
え、ちょっ、あ、
フジイさァ～ん！お久しぶりです！！
(！！)
ミヤシタくん？
写真展、来てたんですよ、
アイバさんと。
(！！)
え！？
あれ、本当に帰っちゃった？
(！！)
フジイさんが他の人と話してたから
遠慮したのかな。
・・・
～同日、帰り道～
(これまでだって、
数え切れないくらいたくさんの当たり前があったはず・・・)
(泣いたり、笑ったり・・・)
(誰かを好きになったり・・・)
(オレの知らない・・・)
