スプラッターロマンホラー サメクマ

サメ ~旧きより在る水の子ら~

エピソードの総文字数=13,875文字

話者
BTS-01
種族:サメ(ホホジロザメ) 性別:雌 所属:
関東中部ドグマ防衛組合(一般職員)
体長:4.7m→165cm 体重:1tは超えてる→ヒト擬態時の姜よりやや軽い
特記能力:
ボストンティーシャークである固形物透過、空中遊泳、ヒト擬態、擬態時筋力維持、疑似ゾンビ召喚、潮だまり展開、標準より高い電気受容感覚、嗅覚、歯の硬度

ボストンティーシャーク1号。アメリカ独立戦争の13匹の生き証人の1匹。
シマクマの愛人であり、
ドグマ防衛組合創立期からの衛生部職員(だが上層部の圧力により出世はできなかった)であり、防衛組合に属するサメの中で最強の存在(なぜなら彼女がボストンティーシャークだからだ)
人間おっぱいフェチであり自身は貧乳(子宮ミルクで胎児を育てるホホジロザメは、割と擬態すると巨乳になることが多いのだが)。部下である伊庭の胸を定期的に揉ませてもらっている。
伊庭美知恵
種族:サメ(
シロワニと人間の混血) 性別:女 所属:関東中部ドグマ防衛組合(一般職員)
身長:
162cm本来の姿と同じ 体重:本来の姜と同じくらい→本来の姿と同じ
特記能力:
固形物透過(訓練中)、ヒト擬態、擬態時筋力維持、ボストンティーシャークの血統サメトルネード排出、標準より高い瞬発力、楯鱗硬度

BTS-06が人間の女性と関係して生まれた子供。胎児の頃から人間に擬態し続けており、
神奈川県O市散発占拠事件の発端となる事件に巻き込まれるまでは自分がサメであることすら気付かなかった。ドグマ職員から自身が人外の存在であること、母親の不貞によって生まれたことを同時に教えられた彼女は、カッとなってパーマをかけた。そして日サロに行った。
彼女の放つサメトルネードは歯や鱗を混ぜずとも十二分の破壊力を持つ。接近戦になっても切断砥石のようなサメ肌を炸裂させる。
ただのサメ、特殊なサメ
BGM:MusMus『ヴァニラ』
http://musmus.main.jp/music_img1.html
さて、閲覧者の皆様にこれからサメについて解説していくわけだけど、みっちゃんは「サメ」って聞いてどれくらいのことを知ってる?
軟骨魚綱板鰓亜綱、ネズミザメ上目とツノザメ上目の総称。肉食性で、人を襲う可能性のある種類は1割ほど。プランクトン食ってる奴もいる。マズルにはロレンチーニ器官っつー磁場を知覚する器官がある。歯はなんぼでも生え変わる。
『ジョーズ』がバカ売れしたせいで凶暴な生き物ってイメージが付いちゃったけど、実は割とおとなしくて、種類によっては人に馴れたりする。時と場合によっちゃイルカの方が危険なぐらいだ。
BGM停止
で、人間に化けて人妻に間男したり、そうやって生まれた子供たちで蠱毒やったりとかしない。
………。
しない。
……まあ、6号が胎内で共食いするシロワニであることを差し引きに差し引いても、あいつがクソ野郎なのはわかるよ。普通のシロワニ、人懐っこくてかわいいし。でも今回の話には関係ないから、やめようね。


BGM:MusMus『ヴァニラ』
http://musmus.main.jp/music_img1.html

サメの概要についてはみっちゃんの説明で合ってるんだな。私たちが戦ったり話をしたりするサメは、生物学的に普通のサメと大して変わらないの。私も生物学的にはホホジロザメの奇形になるわ。みっちゃんはサメと人間の奇妙な融合体だけど。
サメのほとんどはそんな人間の分類なんて気にもしないで、のほほんと海を泳ぎ回ってる。問題なのは陸に進出する力を手に入れたサメよ。岩や土の中をすいすい泳いだり、空を飛んだり、脚を手に入れて走り回ったりするサメの中で、大型のもの。
そういうサメが目についた獲物のひとつとして人間を襲っちゃうんだな。ペットや家畜を狙う場合もある。だから駆除する。
そしてそんなサメはサメ全体から見ても一握り、サメ=人類の敵では決してない、と。
その一握りの奴らの能力が厄介なんだよな。サメパワーっていうやつ。
そう、サメパワー。単に地面を泳ぐサメなら小型の奴もいたりするんだけど、そんなのはほとんど問題にならない。
でも確認されてる中で危険なサメパワーを持つ奴ってのは、たいてい大型なのよ。
そんでたいていクマより弱い。
全身の骨が軟骨だし、クマ健康法実践者や人喰いグマみたいに再生力も高くないから、結果的に打たれ弱くはなるわね。
でもサメの鼻と耳とロレンチーニ器官は決して侮っちゃいけない。みっちゃんも自分の磁力線感知に大きく助けられたでしょ?
そうだ1号さん、サメってクマの言うところの人間への「煙さ」って感じるの?
正直なところ、あまり感じないわね。煙いから見下すとか遠ざけるって文化もない。
でもこれは覚えといて。牛や鶏の方が確実に狩りやすいにも関わらず、人間の味を好む知性ザメはいる。人間の悲鳴や恐怖への歪んだ嗜好も含めてね。
サメパワー
サメパワーがどういう原理で行使されるのか、なぜ一部のサメだけがそんなものを使えるのかってのはさっぱりわかってないの。私のゾンビ召喚術も、ドグマお抱えの研究所で詳しく調べてもらったけどさっぱり原理は分からなかったわ。
クマやゾンビの超常的能力は、時に質量保存則を超えるとはいえ肉体の細胞、その化学的作用に依存してる。でもサメの振るう力はそうじゃない。魔法や超能力という言葉がピッタリなのね。
魔法?そんなツブシのきく技見たことないし。今まで見たサメパワーって「移動する」「喰う」「殺す」以外に使えそうなものがまるでないよ。
まあ、ね。能力者バトル漫画みたく使用の際細かなルールのあるサメパワーとかも今まで見たことないわね。その単純さはサメらしくもあるけどね。
とりあえず、「比較的よく見られる」あるいは「特に注目すべき」サメパワーについて説明しましょうね。
・固形物透過
石でも砂でもすり抜けて、乾燥に強い!窒息しない!当然のことながら淡水でも生きられる!陸上に進出するサメの大半はこれね。だから砂浜にもスキー場にも出る。
サメによっては、すり抜けられる物質に差異があるみたいだけど、その法則性は個体によってバラバラみたい。個体、よ。同じホホジロザメでもすり抜けられない物質が違うのよ。私は純粋金属をすり抜けるのに難儀するわ。
・空中遊泳
空を飛べる!空気中で呼吸できる!当然乾燥にも強い!超単純。だから強い。
サメによっては宇宙を泳いでる奴もいるみたい。宇宙線や真空に強いのもすごいけど、あいつら何食って生きてるのかしら。
・知性
私たちのように人間並みの知性を持つサメも、私たちが思っている以上にたくさんいるのよ。もっとも、知性があるかという判断は、咽頭機関の変形であれ未知のサメパワーであれ、「言葉を使えるかどうか」にかかってるけどね。
人間と同じように善良なサメも邪悪なサメもいる。そういう奴らを「サメの風上にも置けない」って考えるサメもいるけど、そもそもサメは海の生きもの。風なんかとはそもそも無縁の善も悪もない自由な生き物だったことを、多くの知性ザメが忘れているわ。
後述するサメ使いのサメは確実に知性ザメよ。
・ヒト擬態
今まで発見されたサメの中でこれができるのは、発話できる知性ザメだけよ。
無差別に獲物を喰らうサメの中にもこれができる奴がいるかもしれないけど、そんなライフスタイルを続ける限り人間に化ける必然性はないわ。
これをやると、人間の食べ物をかなり受け付けることができるわ。タンパク質やタウリンは人間より多く必要になるけどね。みっちゃんだって、お医者さんから肉を多めに食べなさいと言われたことはあるでしょうけど、それ以外でアレルギーとか、消化分解できない食材とかないでしょ?
・幽霊、または疑似ゾンビ
みっちゃん、あなた霊感ある?私は本当の意味での人間の幽霊を見たことがない。でも誰からも観測できて、確実に誰かを殺す力を持っている幽霊というのは存在するわ。サメよ。サメの意志よ。
「サメパワーの純粋な塊」と称されるそれは、殺されたサメの最後の意志と感情を持ってたり、はたまた殺した犠牲者の姿形だけを真似ていたりするわ。
これには2タイプあって、タンパク質やその他もろもろの物質で構成されたエクトプラズム型と、見えて聞こえるけど物質としては存在しないアストラル型があるわ。私の能力を含むゾンビ召喚は比較的前者が多くて、アストラル型は死んだサメそのものの形をとることが多いの。後者は厄介よ、こちらからは触れないのに向こうはこっちを傷つけられるんだもの。
その口ぶりだと、アストラル型でも倒す方法があるっぽいね。
そうね、厳密には正確な表現じゃなかったわ。
アストラル型に触れるかどうかは「触ろうとする存在の意志」に大きく左右される。幽霊のサメに対して意識を向け、「絶対に触る」「確実に殺す」と強く念じるほどに干渉できる。
あと宗教的・オカルト的儀式も結構効果があったりするの。「効果がある」って思い込みが、ダイレクトに霊に影響を及ぼしてるのかもしれないけど、詳しいことは分かってないわ。
・水中テレポート
位置を把握した液体の中に瞬間移動するサメパワーよ。
ただし、次の条件が必要よ。
「液体の主成分が水である。少なくとも濃度50%未満でなければならない」
「液体の一部が空気に接触している」
「液体内に自分が入るだけのスペースが十分確保されている」
「同一の水塊内では移動できない」
つまりガソリンには入れないし、水道管内や血管内に侵入して内部から破裂させることもできない。海の中であっちこっち飛び回ったりとかもできない。
ただし体が小さい、または小さくなるサメパワーを持っていればだいぶ無双できるわ。
・影に関するサメパワー
島根には「影鰐」ってサメが伝承として伝わってて、実際にいるわ。こいつは人間の影を食べる。影を食べられた人間は喰われた部分のカロリーが奪われ、弛緩する。
影に関連したサメパワーを持つサメって、案外多いのよ。平面の影のような体を持つサメもいる。影から影にテレポートできるサメもいる。周囲を暗くしたりするサメも、まあ少ないけどいる。
物質の影のある場所、あるいは暗闇に閉ざされた空間の固体の中でしか泳ぐことができないってデメリットを持つサメもいるわ。
そんなサメは直射光が弱点の場合もままあったりするわ。乾眠状態になったり、死んだりするみたいよ。
・“潮だまり”
サメパワーの中でも特に危険な能力よ。ちょっと長くなると思うから後述するわ。
・サメトルネード
地面から空に向かって渦巻く塩水を無から出現させる力よ。出てきた塩水はある程度呼び出したサメの意志によってしばらく動かせる。一定時間経ったら消える。渦が消えるとき塩水まで消えるかどうかは、本人の意志で大雑把ながら決められるわ。
経験を積めば攻撃や移動、防御など便利に転用できるわ。殺傷能力を高めるために歯や鱗を抜いて混ぜたりね。
クマと大勢の知性ザメはこの力を潮だまりの一種と考えているわ。
最初こいつを出したときは自分でもびっくりしたよ。水圧だけで十数匹のサメをバラバラにしちゃったもんな。
それはみっちゃんが極まっているのよ。
・サメ使い同調
人間をサメパワーの「アンプ」として利用して共生する知性ザメが一定数存在するわ。でも人間なら誰でもがサメ使いになれるってわけじゃあ決してないのよ。サメ使いのサメにはどんな人間が自分の使い手としてふさわしいか、磁力線で分かるみたい。
サメ使いのサメは、5種類。すなわち、ノコギリザメ、シュモクザメ、ツノザメ、イタチザメ、コビトザメ。コビトザメだけは知性も言語理解も確認できなかった。
少数だけどクマのサメ使いもいるわ……というより、今まで会ったサメ使いの中で一番強かったのが麻弥子。クマなのにどうしてあそこまで極まってたのかしら。
ほんとにね。1号さんは直接見てないけど想像はつくよね?あたしらが麻弥子に勝てたのはほんと奇跡だったんだよ。その直後に襲い掛かってきた6号から逃げられたのも含めてね。
“潮だまり”
そういや1号さんの潮だまりって見たことない。使えるんだって?
周囲の風景が青く染まる。
空間に海水が満ちる。マリンスノーが煌めく。
周囲の家具や壁が御伽話の城のような装飾に変わってゆく。


BGM:甘茶の音楽工房エメラルド』

http://amachamusic.chagasi.com/music_emerald.html
紅茶はいかが。アールグレイにヤグルマギクと薔薇をブレンドしたの。
潮だまりって紅茶も作れるの?
まさか!紅茶は「元の場所」から持ってきたのよ。私がこの世界で自由にできるのは、風景と広さだけ。
とまあ、こんな風に「本来の世界」を模して自分流にアレンジした海水の世界が“潮だまり”なわけだな。狙った獲物を閉じ込めて、自分の有利なフィールドで戦える。“潮だまり”の中のオブジェクトを大雑把だけど操れる。
意図的に生き物を排除して人払いすることもできるけど、基本的にサメ有利の危険な能力よ。
潮だまりの中に入った肺呼吸の生き物は、サメにもよるけど必ずしも呼吸できないわけじゃない。普通に会話できるし、そこまで水圧を受けるわけじゃない。これは犠牲者にとって大きな救いね。
でも基本的には「本来の世界」に通じる出入口を探し当てなければ、決して出ることも入ることもできない。さもなくば、潮だまりを発生させたサメをサメパワーの維持ができないほど疲れさせるか、さもなくば殺すしかない。
クラゲやら小魚やら小サメやら泳いでるけど、これは1号さんの潮だまりの幻影?
クラゲや魚は幻だけど、サメだけは自在に出入りできるのよー。磁場の違いで「本来の世界」のどこに潮だまりが「覆いかぶさっている」かわかるの。
この子たちはきっと塩水が恋しくて土の中から泳ぎ出てきたのね。
ま、とりあえずここらで潮だまりを解除するわね。
海水が引いてゆく。クラゲも魚も消えてゆく。風景が元に戻ってゆく。
小さなサメが、地中へと沈んでゆく。
サメ使い
BGM:MusMus『ヴァニラ』
http://musmus.main.jp/music_img1.html
サメ使いってね、サメに触れあううちサメの肉体的なタフさ、水中への適応と言ったサメの特徴が伝染していくものらしいのよ。
そんで、サメパワーを保有したサメも、サメ使いも1世紀以上長生きする傾向がある。
歴戦のサメ使いの中には、サメ以上に人間離れしてしまった、姿形以外もはや人間と呼べないような怪物も存在するらしいわ。志村ちゃんもそうなっちゃうのかしら。
喜ばしいことじゃあないか。人間のハンターよ、どんどん狂ってウチらの領域に来るがいい。みんないるからさみしくないよ。
……サメ使いのサメの紹介をするわね。
・ノコギリザメ(Sawshark)
サメ使いのサメの中でも花形よ。彼らのノコギリはサメ使いが持つと前後に振動するの。その鋭いレシプロ斬撃は黒檀でさえ一瞬で真っ二つにしちゃうほど強いわ。
持ち方はチェーンソーに似てて、右手で尾ビレの付け根を、左手で背ビレをしっかりと持つ。
中には包丁やジャックナイフくらい小型のノコギリザメもいるわ。彼らはサメ使いの反射神経や瞬発力を高めて連続レシプロ斬撃を繰り出させ、さらに潮だまりの展開能力もおおむね高い。
・シュモクザメ(Hammerhead shark)
サメ使いの振り下ろす彼らの頭の一撃は、ノコギリザメほどには素早くはないけれど、それを知る者たちの肝を寒からしめる。サメ肌があるから、かすっただけでも出血は免れえない。
彼らのロレンチーニ器官は他のサメよりずっと発達しているから、斥候役にもピッタリなのね。
彼らのサメパワーが伝染したサメ使いは、まるで鼻の利くクマのように、磁力線の流れで他者の心を読めると聞くわ。
た・だ・し!サメ使いのサメじゃないシュモクザメは、当然頭で獲物を攻撃なんてできないからね!そんなことをすると目とロレンチーニ器官がオシャカになっちゃうわ。
そもそもサメ使いのシュモクザメも、頭で攻撃する時目ぇ潰れないか心配になる。めっちゃ痛そう。あいつらなんで平気なんだ。
・ツノザメ(Dogfish)
サメの中でも比較的小型ではあるけれど、ドッグフィッシュの名にふさわしく、彼らはサメ使いに忠実で、賢く、鼻が利き、獲物に喰らいついたら放さない。
2基の背びれの前にそれぞれある毒棘で、攻撃者を翻弄するわ。毒性は弱いけどね。
サメやクマに致命的なダメージを与えられるような攻撃手段はないから、サメ使いの支援や敵のかく乱に向いた種族ね。
・イタチザメ(Tiger shark)
背中に乗られることで力を発揮するサメ。ノコギリザメ使いがサメ使いの花形なら、イタチザメ使いは王者よ。ペガサス乗りのように宙を舞いながら大型拳銃や槍で遊撃し、近づいた者はどんなに硬くってもサメの頑丈な顎でバリバリ喰われちゃうの!そう、サメ使いのイタチザメは全員空中遊泳能力を持つのよ。
タイガーシャークというけれど、当然のごとくトラより強いわ。
ただ、知性ザメじゃないイタチザメも多数いて、そいつら当然乗ることなんてできないし、本当に何でも食べるから要注意。人の乗ってる車を見つけると、車ごと食べちゃう。
・コビトザメ(Pygmy shark)
サメ使いのコビトザメは普通のヨロイザメ科コビトザメと厳密に分けて考えるべきね。
彼らの体長は人間の卵子よりも小さくて、群れで人間の血管内を泳ぎ回る。酸素や栄養は人間の血液から摂取する。そういう性質だから、コビトザメのサメ使いになるには医療的な注入が必要よ。妊娠中に胎児に移動することは、基本的にないわ……あいつらなんで今まで繁殖してたのかしら。
知性は低いはずなんだけど、宿主が念じた命令を聞くわ……宿主は自分の血液を操れるようになる。
血液を操る、と言ってもピンとこないでしょうから一例をあげるわね。
なおコビトザメ共生者は骨髄内の造血細胞が発達するから、栄養と水分さえ取り続けていれば能力を使いすぎて失血死なんてことにはならないわ。
・宿主は自分の血液を高速で発射できる。血中のサメの摩擦により、ウォーターカッターのような殺傷力を持つ。
・宿主の血液を何かに付着させた後、血中のコビトザメに命令して、対象を噛ませる。対象の表面は研削砥石で削られたかのようにグチャグチャになる。
・血液の水分を飛ばして糊化させる。敵の捕縛や傷口の接着などに使う。中のサメは死ぬ。
・サメに血中の毒を食べさせ、汚染されたサメだけを瀉血する。
・血を霧状に噴出させ、目くらましを行う。
・コビトザメを発光させ、その結果何かに付着させた血液や自分を発光させる。
・体外に排出した血液を、自分の体内に呼び戻す。コビトザメは抗生物質を分泌しているが、それでも感染症のリスクがあるのには注意。
質問。サメ使いって、人間側にとってはサメは有益な攻撃手段になりうるけど、じゃあ何でサメは人間と組むのさ?居心地のいい海から離れてまでさ。
彼らは偏食のサメなのよ。サメやクマや、サメによっては人間の肉。時にはゾンビの肉。それを狩るのに都合のいい道具がサメ使いの才能を持つ人間ってわけ。
奇妙なことに、サメの誘いを拒む人間はそんなにいない。意気投合しやすい人間とサメが惹かれあっているように感じるわ。日本で言うところの赤い糸ってやつかもね。
サメの文化
そんなものはないわ。
待って……待って。身もフタもなくない?
なんかこう、あるんじゃあないの?知性ザメ特有の思想とか哲学とか、人類文明への干渉とか。
海は広い。広くて何もない。いつ獲物が来るかわからない、いつ同族に会えるかもわからない。必然的に考え方はシンプルになるわ。飢えれば魚を齧り、疼けば雌を犯す。社会規範なんて形成のしようがないわね。道具も使えない。
サメは繁殖期に群れたり、ヒレによるジェスチャーで考えを伝えることがあるけど、人間の集団のように高度な掟を定めたりはしない生き物なのよ。海中のシュモクザメは常に群れで行動するけど、人間の遊牧民のような文化なんて聞いたことがないわ。
この根本的習性はヒト擬態のできるサメにもばっちり染みついてるのね。だから、人間の文化に“寄生”……もとい、“相乗り”させてもらってんだなあ。
サメに創造性がないわけでは決してないし、私自身仕事で表計算プログラム作ったり、趣味で絵とか描いたりしてるけど、その土台はあくまで人間が作ったもの。人間のやり方に倣ったものよ。知性ザメの信じる宗教や哲学も、サメにまつわる神話もすべて人間が考えたものだからね。
自分で一から何かを作るより、器用で頭の回転の速い人間の道具を拝借する方がずっと楽です。人間から出る甘い汁おいしくて幸せです!
あ、そっか、そうだよね。ごめんね。
みっちゃんは別よ?だって、半分人間だもの。人間みたいに色々できるはずよ。
(何か……言葉にできないけど、1号さんの考え方は何か間違ってる気がする。1号さん、クマだけじゃなくてサメにも失望してるのかな?)
秘匿されたサメ組織
だからそんなものないんだってば。
サメは組織を作らない?
ええ。サメはクマや人間の秘密組織にそのまま雇われるの。
楢蜜騎士団然り、マダー・ティーパーティー然り、パンサラッサ図書館然り。
我らが糞山の組織、関東中部ドグマ防衛組合なんかは知性ザメじゃない凶暴な人喰いザメを数百匹は飼ってるわ。敵対組織との抗争が本当にヤバくなれば、人間への被害お構いなしにそいつらを解き放つでしょう。
あー……聞きたくなかった。上のクマ共マジに糞だな。
……待てよ?パンサラッサ図書館はBTS-02が創設したはずだ。サメだよ!サメの組織だ!
いいえ、2号は世界各地の犯罪シンジケートと違法研究所を結びつけるお膳立てをしただけ。奴によって統率されてるわけじゃないわ。奴自身、「リーダーはいない」って言ってたそうだし。
確認されてるサメの構成員はだいたいが下っ端で、指揮系統にいた奴も大規模な作成を立てる立場になかったわ。
とはいえ、設立と運営に当たってサメが密接に関わってる組織はあるにはあるのよ。これから紹介していくわね。
秘匿されたサメにまつわる組織
・パンサラッサ図書館
形態:違法研究組織・犯罪組織互助団体 規模:世界 指導者:最高意思決定者は存在しない 主な構成員:人間(知性ゾンビを含む)、クマ
サメやクマやゾンビに関する研究を行う者たち、そしてその恩恵に預かろうとするギャングたちの、相互に異質で多様なネットワークね。元マダー・ティーパーティーフランス支部長のBTS-02が創設したわ。
「編纂室」という集団が網の目のようにつながった組織構造をしてて、明確なリーダーや最高意思決定機関は存在しないわ。ドグマは軽蔑的に編纂室を「セル」と呼んでいるわ。
クマポテンシャルの研究のためにクマ生息地をサメゾンビ由来の毒ガスで汚染するかと思えば、殺人鬼の襲撃で危機に瀕したTeddy'sの支部を救うこともある、法則性の見えない組織……というより、編纂室ごとに方向性があんまりにバラバラなのね。セルによってはよそのセルに内ゲバをあおらせることまでする。
2号の野郎は2001年にこの組織を設立した目的を、「失われたサメとクマの歴史を掘り返し、集積する」「サメとクマと人間の新たなる進化を促し、その行く末を見守る」ことであると明言しているのね。だから奴は大規模編纂室のアドバイザーという名目で、自分の知りたいことをたくさんのセルの連中がやってくれるようコントロールして、自分の知りたい情報だけをつまみ食いしてるの。
マダー時代から冷徹な手腕で恐れられていたBTS-02が設立した組織であること、編纂室によってはマダーやタゴノウラ・カルトでさえ鼻白む大量殺戮を何の感慨もなしに行うこと、あと私はそうは思わないんだけど――多くとも一族単位でしか群れることのないはずのサメが明確な社会構造を構築しつつあると多くのクマが感じていることから、パンサラッサは大半のクマ団体から不気味な敵性組織として恐れられているわ。
BTS-02は元マダー……人喰いだったんだね。興味が味から知識へと移ったのかな。
不気味なことに、2号はマダーに所属してたにもかかわらず、人間の血肉を一滴も口にしていないそうよ。
あいつについては分からないことが多いの。私も直接顔を合わせたのは1度きりで、何のサメだったかも思い出せない。今奴が組織内でアイコンとして使ってる画像はダミーよ。
・タゴノウラ・カルト
形態:宗教テロ集団 規模:日本各地 指導者:タゴノウラモリヤザメ(死亡) 主な構成員:人間(多くのサメ使いを含む)
日本各地に存在する、タゴノウラモリヤザメを神と仰ぐ信奉者集団の総称よ。タゴノウラモリヤザメによって作られた組織も、勝手に発生した組織もあるわ。タゴノウラモリヤザメについては後述するわね。
いくつもの宗派があるけど、共通しているのは知性ある存在に恐怖と絶望を振り撒くことに心血を注ぎ、世界の海を死と腐敗と涙に満ちさせ、あらゆる陸地をその海中に没させることを究極命題としていることね。
代表的なカルトは、タゴノウラモリヤザメのフカヒレに生贄を捧げることでタゴノウラモリヤザメの復活を目論む「くろわにあそばせ」、死と暗黒を司るイザナミやスサノオ、サメの女神たるトヨタマヒメの権威を貶めることを第一に寺社仏閣を襲撃する「禍津頻波(まがつしきなみ)」、歪んだ“潮だまり”を拡大することこそ陸を絶望の海に変える手段だと信ずる「沈月団」などね。沈月団は完全に潰したから安心していいわ。どいつもこいつもイカレきったテロリストよ!
日本の沈没をタゴノウラモリヤザメ本人よりも大真面目に画策すること自体は一笑に付すべきことだけれど、奴らはタゴノウラモリヤザメの遺産、死骸の一部や作った物品をいくばくか持っているのね……その1つ1つが奴らの望みを叶えかねないサメパワーを秘めているの。だから、こいつらは日本の生けとし生ける者全ての敵よ。
なお、当のタゴノウラモリヤザメはこいつらの思想や信仰自体を意に介さなかったらしいわ。ただ何でも言うことを聞いてくれる駒のように扱ってたようよ。
・アダロ文明
形態:文明(滅亡) 規模:環太平洋~カリブ海 指導者:ンゴリエル(役職名?) 主な構成員:人間(サメ使い)、サメ(サメ使いのサメ)
メラネシアにはアダロという人間とサメのあいの子のような悪霊が伝わってるわ。死者の悪い面が形になったもので、虹や竜巻を渡り、毒のトビウオで人間を殺す。
彼らのモデルはいるわ。アダロと自称するサメ使いたちが築きあげた文明が存在するのよ。残された遺物の多くにサメパワーが宿っているから、世間的には伏せられてるけどね。
彼らは私たちにとって未知の手段でサメパワーを物品に封じ込める技術を確立し、インダス文明隆盛の時代と同時期に太平洋を支配し、当時運河なんてなかったパナマを渡ってカリブ海まで侵攻した。ソロモン諸島で忌まれているのは、彼らがアダロと対立していた名残ね。
これは断言しなくちゃならないわ。ムー大陸のモデルはアダロ文明よ。ジェームズ・チャーチワードの主張は確かに間違ったものだけれど、その前にムーに言及した人たちの中に、アダロの遺産に接触した人がいるのは事実よ。
アダロが滅んだ原因は分かってないわ。でもアダロ文明後期に造られた石板にはこう書かれてる。「我々はやはりサメではなく人間だったのだ。人間はもはや海から切り離され、大地に立つ存在だ。滅びの災厄は、海にばかり目を向け大地に敬意を払うことを忘れた我々への罰なのだ」
ともあれ彼らがいなくなっても、海中に遺跡も残っている、不気味なオーパーツもある。下手に触れると危険だわ。だから楢蜜騎士団はアダロの遺産を隠匿し保護する活動を行ってるわ。
関東や中部ではアダロの痕跡はないから、私たちには関係ないように思えるけれど、世の中何が起こるかわからないし彼らの存在を覚えておいて損はないわ。
特にユニークなサメ
・コモリザメ(Nurse shark)
もっぱら英名のナースシャークと呼ばれることのほうが多いわ。この知性ザメは、端的に言うと陸上の生物を治療する力を持っているわ。
彼らはみんなしてお節介。生物の傷口の肉や悪くなった皮膚、鬱血した血液を好んで食べるのよ。
怪我を負った人の前にふらりと現れ、傷の表面をこそげ落として食べた後、殺菌止血作用のある唾液で傷を舐め回す。傷が深い場合、絆創膏状に固まる痰やホッチキスのような牙で傷口をふさぐ。
クマ組織の医療スタッフに雇われるサメも多いわね。ドグマ衛生部のコモリザメは医師の指導を受けてて、ここぞという場所に配置され、テレキネシスで医療キットを上手に扱って私たちを治療してくれるのよ。O市散発占拠事件の時も、みっちゃんすごくお世話になったでしょ?感謝しないといけないわ。
・ルスカ
カリブ海を故郷とする、体長20~30メートルの下半身がタコの大鮫よ。
強力な“潮だまり”展開能力と塩水限定のテレキネシス能力、個体によっては致傷的静電気操作能力やヒョウモンダコと同じ毒を持つの。けどそれらを使うよりも、白兵戦の方に長けている傾向があるわね。
空中を泳げはしないけれど、すごいスピードで陸を走ることができるわ。
彼らは賢く強いサメたちだけど、必ずしも善良であるとは限らない。インドネシアで麻薬カルテル作ってたルスカは強かったわ……なんとか殺せたけど。
・アフガン光合成ザメ
内陸国であるアフガニスタンの荒野に、下半身をうずめて日光を浴びているホホジロサメ。
彼らは狂ってるわ。アブラハムの宗教を手前勝手に解釈して、その妄想に囚われてる。そも、内陸に住んでることがおかしいのよ。たとえどんなに陸や空を泳げようとも、サメが最後に求めるのは海水よ。わざわざ海からずっと離れた乾燥地帯に住むなんてどこか神経がイカれてるとしか思えない。
彼らは普段ほとんど動かないけど、「世界に仇なすもの」と彼らが判断する存在が地球のどこかに出現した場合、そいつのもとにマッハ2で飛んで行って、口から熱線を吐きそいつを焼き殺す。
彼らが何を基準に「世界に仇なすもの」を判定しているのかは不明だけど、幸いなことにおおむね人類文化圏を脅かす存在を殺しているようよ。
・ボストンティーシャーク
ボストン茶会事件は学校で習ったかしら?私達は海に投げ捨てられた紅茶の染み出した海水を飲んで、紅茶の味を覚えたサメなのよ。当時は全部で13匹いてねえ、本来北大西洋に生息してないはずのサメもちらほらいたはずだわ。でも私も誰がどんなサメだったかはあんまり覚えてないのよ。
お茶の味を覚えた私たちは、もうとにかくお茶が大好きになってしまったのよ。おいしいお茶の飲める土地を探して、私達は世界中に散った。
私は紅茶、緑茶、プーアル茶、色んなお茶を飲んで回ったわ。で、日本とフランスなら色んなお茶が集まるって判断して日本に来たの。結局ダージリンやセイロンに落ち着いた。6号の趣味は後から知ったんだけど、平水珠茶をストレートで飲んでたみたい。平水珠茶は癖があるけど私も好きよ。モロッコだとミントをわっと入れて、砂糖もガンガン入れるの。2号はよく知らない。
ボストンティーシャークは全員人間に擬態することができて、非常に強力な“潮だまり”展開能力を持つの。それよりも特異なのは、私達がサメと認識された瞬間、相手は「こいつはボストン茶会事件に立ち会ったサメである」という事実を即座に知り、それを強く印象に残し、サメの真実を知る誰かに紹介する時はその事実をつい伝えてしまいたくなるということかしらね。私たちが軒並み強いのも、「彼らがボストンティーシャークだから」という理由を付けてしまう。人間やクマにとって、私たちがボストンティーシャークであることは理屈抜きに特別な印象を持たせるみたい。
結果的に私達はクマ組織から、サメの中で最強に近い存在として認識されている。
1号さんはイギリスには行かなかったんだね。紅茶の国。
は?イギリスはミルクティーの国じゃないの。
ミルクティーはミルクティーっていうジャンルなんですけど。普通のお茶じゃないから。脂肪の味でお茶の味がガラッと変わるから。レモンティーとか、ジャム入れたりするのとはわけが違うから。これボストンティーシャーク全員そう思ってるからね。ミルクティーはお茶じゃないからね。抹茶ラテもそうだよ。おいしいけどね。
・タゴノウラモリヤザメ
さあ、ついにこの恐ろしいサメについて話す時が来たわ……日本のサメの中で最大最強最悪の知性ザメよ。もしかしたら世界最強かもしれない。
田子ノ浦守屋鮫。反仏教を掲げ聖徳太子と敵対した男の名を冠するこのサメは、シロナガスクジラも目じゃないくらいでかくて、既知のサメのどれにも当てはまらない種で、知性ある存在の恐怖と絶望を何より愛すおぞましい存在よ。
あまたの怪しげな術を操り災害をもたらし、人喰いグマやゾンビを率い人間やクマを殺戮してきた。機転が回り教養深かった。そしてそれ以上に頭がおかしかった。
1972年に起こったこいつとの最終決戦で、犠牲が村1つと108匹のクマで済んだのは奇跡というほかないわ。その実体と精神はすでに滅び去っているけれど、彼の遺したミームや作成物はいまだに日本に災厄を振り撒いているわ。
一つだけ言わせてもらう。邪悪なサメが田子ノ浦なんて名前、静岡県民たまったもんじゃねえよな。
駿河湾西部を根城にしてたからね。あの名前は自分で付けたらしいわ。
今川義元もこいつを何とかしようとしてたけど、江戸時代まで眠らせておくのが精いっぱいだったそうよ。
結び
まあだいたいこれでサメのろくでもなさが伝わったと思うわ。
や、違うでしょ。嫌な奴はサメにもクマにも、人間にもいる。危険な野獣のような振る舞いをする奴もね。
どうも1号さんは人間の側に立ちすぎてる気がするよ。
ともかく世の中色んなサメがいるわけよ。
画面の前のあんたらにも、いずれあんたらが遭遇したサメについて教えてもらう場を設けるつもりだよ。
ほんとに色んなサメがいるんだ……悪魔に憑かれたような振る舞いをするサメとか、放射線吐くサメとか。
次の解説はクマよ。その役目は(カン)ちゃんに譲るわ。
またね!

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