第15話  白竹姉弟の謎 1

エピソード文字数 3,224文字


 ※



 放課後に魔樹と言い合ってから次の日。金曜日。

 今日学校に行けば高校生活初の休日だ。


 朝。いつもと同じように凛と一緒に学校へ向かう。

 お互い頑張ろうねと励ましあうのは朝の儀式。



行ってくるね!
頑張って来いよっ!

 いつものテンションで学校へと歩き出す事十分ほど。



 校門の前に立っているのは、目立つ銀髪を頭に乗っけてる魔樹だった。



 ん? あいつ何してんだ?


 誰かと待ち合わせしてんのかと思いながら、ふと魔樹と目が合うなり、スタタタとこちらに向かって来るじゃないか。

あっ、黒澤君!
え?

ん? 何? あれ? なんかおかしいぞ。

こいつって俺を苗字で呼んでたっけ?

あの……昨日はごめんなさいでした!

 ……おいおい。魔樹。変わりすぎじゃね?


 昨日のヤツとは別人のような態度で、ひたすらペコペコと平謝りされてしまう。

 これには他の生徒にも注目するのは当然だった。




いや。もういいよ。別に気にしてないし。

お前に言った通り、ねーちゃんには無害なキャラでいるから

ごめんね……


 なんだこの変貌振りは。逆に気持ち悪すぎる。

 しかも、必死に謝り倒す魔樹は、至極真面目な顔して訴えてくる。

(おいおい。なんだよこいつ)

なんつー顔だ。今にも泣きそうじゃないか。


まるで女の子が告白するみたいな、そんあオドオドしたような魔樹。眉をひそめ俺の顔を上目使いで見てやがる。こんな場面で使う顔じゃねーから。

わ、分かったから。だから謝んなくていいって。ほっといてくれよもう
み、美優に言われたから、ちゃんと謝ってきなさいって

 そういう事か。その様子じゃこってり絞られたのだろうか。


 でもな……実は昨日、白竹さんからは謝罪のラインをモリモリ受け取ってるし、もう解決済みだから気にすんなよ。




 校門前にずっといても仕方がないので、一緒に校舎へと入っていくと、丁度白竹さんと聖奈を見かけたので挨拶していた。





 その間に魔樹はいつの間にかいなくなっていた。

 多分自分のクラスに行ったのだろう。


黒澤君。昨日はごめんなさい
あっ。気にしないで下さいって。さっき魔樹からも聞いたし
ん? 何かあったの?
別に。大したことないよ
何よ。教えなさいよ

 やべぇ。聖奈がじとっとした目で俺を狙っているのがわかると、俺は必死に眉を上げてアイコンタクトを取っていた。


 後で話してやるから。待ってくれって。




 そんな間にも白竹さんは先に行ってしまう。


 その後姿を見ていると、妙にこの違和感を感じた。

 というのも……いつもよりも、歩き方というか、態度が違う気がする。



 彼女はもっとオドオドしてて、周囲を気にしながら歩いているイメージだったが、今の彼女は非常に安定してて堂々と歩いている。そんな気がした。

教えなさい

 あぁもう分かったよ。


 本人が居ないのなら別に喋ってもいいだろうと思った俺は、階段で立ち止まって昨日のやりとりを話していた。

……ふ~ん。そんな事があったの?
 あまり興味がなさそうだったが、聖奈は俺に質問してくる。
あんた。それを本人に言ったの?
うん。だって本当の事だし
そうかも知れないけど、ちょっと変に思われるんじゃない?
え? なんで?

 聖奈が変だと思ったのは、白竹さんとは友達という関係を求めてて、恋愛感情には発展しないと言い切った部分である。



 よくよく考えれば、確かに変だよな。

 言われてみて始めて気がついた。


まぁ変なんだろうけど……もういいだろ?


マジでそんな気はないし。放っておいてくれ

 やっぱり。聖奈でも理解できないか。


 入れ替わり体質を十五年続けてこないと、何故そんな考えを持つに到ったのか、絶対に分からないだろう。




 ※



 朝。初っ端からおかしかった魔樹だったが、今日に限って白竹さんも違和感があった。

 それは俺だけではなく染谷くんや、西部くんまで同意していた。



 いつも愛想が良い彼女が、誰とも喋りたがらないと言うか明らかに元気が無かったのだ。

 

 いや、元気が無いというか、クールというか。何処か冷めているというか……



白竹さん。どうしたんっすか?


何だか元気が無いように見えるんすけど。

…………

 もしかして昨日の件がまだ気になっているのではないかと思ったが、休憩時間もずっと自分の机に座っているので話す機会がなかった。




 その代わりといっちゃなんだが、休憩時間に俺のクラスに入ってくるヤツがいた。

あにょ……

 そう。昨日のエキサイト野郎とは思えない魔樹である。

 しかも一時限目から毎度毎度来るんだけど。


 しょうがないので付き合ってやるが、廊下の外で話をするにしても、あんまり喋らないし、口ごもるばかりで、何が言いたいのかさっぱり分からなかった。

だからその……僕もく、くりょ澤くんと……仲良くなりたいと思っています

 あ、そういう事か。やたらモジモジする魔樹は最早男ではなかった。

 しかも顔が赤いし……男の娘として十分やっていける。


 


 というか、なんだか白竹さんと喋ってるみたいだ。



 そんな時、染谷くんも廊下に出てくると会話に参加してきた。

白竹さんから聞いたよ。双子の弟さんだって?


僕も一緒につるんでいい?

う、うん。よろしくねっ!

 一応染谷くんには伝えてある。昨日何があったのかを。


 ナンパを撃退しようとして、逆に嫌疑をかけられてケンカを売られた事。

 そしてそれの謝罪なのだと説明すると、成程と納得していた。

僕もさ、黒澤君とは違うけど、お姉ちゃんに手を出すつもりは無い。ハッキリしておくよ
え? どうして?
と、の俺の質問に染谷くんはこんな事を言うのだ。
実は……好きな人がいるんだ。僕、その人に夢中なんで
あふっ。そ、そーなんですか?

 お、おい魔樹? 何だそのリアクションは。

 口を手で覆って、驚く仕草とか、完全に女だぞ。

染谷くん。その好きな人ってこの高校の女の子?
いや、違うんだ。ちょっとした出会いがあってさ……

そこまで言っておいて、急に恥ずかしがる染谷くん。

この時ばかりは、魔樹と同じように彼の返答を待っていた。

一目惚れってあるんだなって思った。見た瞬間惚れてたし
うぉっ! マジかよ染谷くん
わぁお。そ、染谷くんが……そうだったんだぁ
 染谷くんの話題よりも魔樹の台詞に固まってしまう。


 ってか、そのリアクションは白竹さんと一緒じゃないか。

 わぁお、っておい! 変わりすぎだろ。

あ、ごめんなさい。何でもないよ。何でもないですよ~~



 そうは言うものの、魔樹はかなり慌ててその場を見繕っていたが、何に対して謝っているのかよく分からない。


 染谷くんと同時に固まっていると、いい訳をし始めた魔樹だが……

あ、あれですよ。美優のマネしちゃいました

 似すぎでしょ? 声が女の子だったら、本人かどうかわからねーレベルだから。



 ていうか。何だよこいつ。マジで……


 そんなタイミングで休憩時間が終わるとお開きになった。



 教室に入ると、白竹さんは白竹さんでとてもクールだし、もしかして人格が入れ替わってるんじゃねぇの か? そう思うほど二人のキャラが極端なのだ。




 しかし……染谷くんには好きな人がいるのか。

 どちらかと言うと、そっちの方が気になってしまうのであった。




 ※


 さて今度は昼食タイムである。

 染谷くんと一緒に食堂へ向かおうとすると、またもや魔樹が俺達の前に立ちはだかった。

あの、黒澤君。ちょっといい?

 おいおい。魔樹。


 どれだけ俺に絡んでくるんだよ。

あっ待って。俺達は食堂行くんだけど。良かったら一緒に行く?

 俺は何気にそういったつもりだったが、魔樹は少し困った顔をするのだ。



 それはつまり……俺と二人で喋りたいって言うのか?


 すると染谷くんが気を使って「いいよ。今日は俺一人で行って来るから」とささっと歩いて行ってしまう。



 とても空気の読める染谷くん。マジですまん。

 どちらかと言うとさ、俺は君と話がしたいんだけど。




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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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