第5話 ジョンの母親
文字数 1,148文字
地下室で監禁されている間、ジェシカを階上へ連れ出したり身体を拭いたりしていたのは、性的虐待をしていた男、名前はジョン・オブライアンという、の母親であるアナ・オブライアンだった。
アナの夫、すなわちジョンの父親は、息子が2歳のときに妻子を捨てて出て行ってしまった。すがる者を失くしたアナは、息子のジョンに自分のすべてをかけるようになり、異常ともいえる執着心を持って息子を溺愛した。それは彼の交友関係にもおよび、アナが「許可した」友達とだけしかジョンは遊ぶことを許されなかった。幼いときはそれでもまあよかったが、成長するにつれ、当然のことながら反抗心がめばえジョンとアナはたびたび衝突した。しかしそんな時のアナは、
「ジョン、なぜわかってくれないの? ママはあなたがつらい思いをしないよう、害のある人間を排除してあげているのよ。だってジョンの幸せは私の幸せでもあるんだもの。ママはあなただけが頼りなの、愛しているわジョン」
言いながらさめざめと泣き出すのが常だった。元来優しい心を持っているジョンは、そんな母親の姿を哀れに思い、
「……わかったよ、ママ。ママの言う通りにするよ」
母親のおかしな言い分にもあえて屈するのであった。だがいよいよ思春期ともなればジョンが恋人を欲するのは自然の摂理でありそれは人としての本能であり、いかに母親がかわいそうといえども大人しく従うことは不可能である。ジョンはハイスクールでできた初めての恋人・リリアンに夢中になった。母親に気づかれないよう隠れてデートを重ねる2人だったが、ある日ショッピングモールで仲良く手をつないで歩いているところをアナとバッタリ鉢合わせしてしまい、2人を見るなり激昂したアナは公衆の面前だというのにお構いなく、
「ジョン!! どういう事なの、その女はなんなのよ! ママは許した覚えはありませんよ、どうしてわからないのどうして! ジョン、ジョン、あなたもママの元から去って行くというのね、いいわ、ママなんて死んでしまった方がいいんだわ。いっそ殺して! さあ! はやく殺しなさいよ!!」
衆目を集めながら怒鳴り散らし、ガードマンは飛んでくるわ挙げ句の果てに警察まで出動する大騒動を起こした。当然のことながら、まだ高校生であるリリアンには荷が重すぎる話で、ジョンはあっさり振られてしまった。目撃者も多数だったので学校でも面白おかしく噂され、ジョンは学校に行くことを嫌がり自室に引きこもるようになっていった。
しかし母親であるアナは、ジョンを学校に行かせようとするどころか、ずっと家に居てくれればいいとさえ思い、学校で勧められたカウンセリングにもまったく行かずにいた。こうしてジョンとアナは、世間から隔絶された暮らしを2人だけで送るようになったのだった。
アナの夫、すなわちジョンの父親は、息子が2歳のときに妻子を捨てて出て行ってしまった。すがる者を失くしたアナは、息子のジョンに自分のすべてをかけるようになり、異常ともいえる執着心を持って息子を溺愛した。それは彼の交友関係にもおよび、アナが「許可した」友達とだけしかジョンは遊ぶことを許されなかった。幼いときはそれでもまあよかったが、成長するにつれ、当然のことながら反抗心がめばえジョンとアナはたびたび衝突した。しかしそんな時のアナは、
「ジョン、なぜわかってくれないの? ママはあなたがつらい思いをしないよう、害のある人間を排除してあげているのよ。だってジョンの幸せは私の幸せでもあるんだもの。ママはあなただけが頼りなの、愛しているわジョン」
言いながらさめざめと泣き出すのが常だった。元来優しい心を持っているジョンは、そんな母親の姿を哀れに思い、
「……わかったよ、ママ。ママの言う通りにするよ」
母親のおかしな言い分にもあえて屈するのであった。だがいよいよ思春期ともなればジョンが恋人を欲するのは自然の摂理でありそれは人としての本能であり、いかに母親がかわいそうといえども大人しく従うことは不可能である。ジョンはハイスクールでできた初めての恋人・リリアンに夢中になった。母親に気づかれないよう隠れてデートを重ねる2人だったが、ある日ショッピングモールで仲良く手をつないで歩いているところをアナとバッタリ鉢合わせしてしまい、2人を見るなり激昂したアナは公衆の面前だというのにお構いなく、
「ジョン!! どういう事なの、その女はなんなのよ! ママは許した覚えはありませんよ、どうしてわからないのどうして! ジョン、ジョン、あなたもママの元から去って行くというのね、いいわ、ママなんて死んでしまった方がいいんだわ。いっそ殺して! さあ! はやく殺しなさいよ!!」
衆目を集めながら怒鳴り散らし、ガードマンは飛んでくるわ挙げ句の果てに警察まで出動する大騒動を起こした。当然のことながら、まだ高校生であるリリアンには荷が重すぎる話で、ジョンはあっさり振られてしまった。目撃者も多数だったので学校でも面白おかしく噂され、ジョンは学校に行くことを嫌がり自室に引きこもるようになっていった。
しかし母親であるアナは、ジョンを学校に行かせようとするどころか、ずっと家に居てくれればいいとさえ思い、学校で勧められたカウンセリングにもまったく行かずにいた。こうしてジョンとアナは、世間から隔絶された暮らしを2人だけで送るようになったのだった。