第36話 side.亜希
文字数 664文字
私は湊の眠る病室で呟いた。
こんなことになるなら、
もっとたくさん話しておけばよかったな
とか、…「好きだ」って言えばよかったなとか、色々考えることはあるけど。
だけどもう……後悔したくない。
弘とか陽菜ちゃんとか萌ちゃんの言葉や、……もちろんゆめかわ女子の事件のこともきっかけだった。
ずっと抱いてた、もやもやした、正体不明の感情。
それはたぶん――
それが、恋愛っていう、感情。
本当はずっとずっと、湊のことが、好きだった。
いつからだろう。
いつから私は、湊を好きになったんだろう。
湊と遊園地に行ったときから?
湊と同じ高校に行けたときから?
からかわれていた私を、助けてくれたときから?
お父さんが……死んだときから?
ううん、全部ちがう。正解は――
ゆめかわ女子が言っていた。湊にひとめぼれしたって。
私だって、そうなんだ。
誰かを好きになることに、理由も、決定的な出来事も必要ない。
必要なのは、自分が「この人が好きだ」って心から思えること、そして、
……相手に思ってもらえること。
寝てるのに。湊は聞いてないのに。
だけど、閉じられたまぶたを見つめながら、ふと思った。
私はどうしようもなく、湊が好きだ。