(三)

文字数 603文字

「ちょっと、どういうことなのよ」
 エミちゃんはそう言った。俺が何か言う前に、彼女がそう反応した。イチロウの言葉に彼女も驚いているみたいだった。
 そしてエミちゃんが顔を向けている相手は、イチロウの方ではなかった。どうやら彼女の言葉を向ける先は、浜野エイジだったようだ。
「どういうことなの、エイジ君」
 エミちゃんはエイジに詰め寄った。
 すると、彼は「いや、その……」と口を濁した後、続けた。
「この前、告白したんだ。イチロウに……」
 それを聞くと、エミちゃんは急に走り去ろうとした。
 俺はびっくりしてとっさにエミちゃんの手を掴んだ。
「やだ、ちょっと離してよ」
「ちょっと待ってよ。どうしてどこかに行こうとするのさ。友達のことだろ」
 俺は聞いた。それにまだ返事をもらっていない。この状況ではいい返事をもらえそうにないが。
 エミちゃんは、俺たちの方へ向き直った。そして質問を続けた。
「いつからなの?」
「君から告白された後」
 エイジは小さい声でそう答えた。ちょっと待てよ。千倉さんの、エミちゃんの好きな人って、この浜野エイジということだったのか!?
 みんな黙ってうつむいていた。だから聞きづらかったが、思い切って聞いてみることにした。
「千倉さんの好きな人って、まさか……。俺からの告白を保留にしたのも……」
 最後まで言い切る前に彼女は答えた。
「そうよ、私はエイジ君のことが好きなの。ずっと前から好きだったのよ!」

(続く)
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